相談デスク

公開日:2016年8月23日

連帯保証人が「滞納する賃借人の解約」を望むケースの注意点

連帯保証人が「滞納する賃借人の解約」を望むケースの注意点
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「相談デスク」

このコーナーはベーシックサポート会員様から実際に当社へご相談いただいた内容を、解決策の一例として公開していく企画です。

連帯保証人が「滞納する賃借人の解約」を望むケースの注意点

お部屋の賃貸と切っても切れない関係にあるのが「滞納」の問題。貸主はもちろん管理会社、そして連帯保証人にとっても、できることなら避けて通りたい厄介事と言えます。
想像してみてください。自分が連帯保証人になった部屋が毎月滞納となり、そのたびに管理会社から督促の電話がかかってくるとしたら…。

相談ダイジェスト

  • 相当な期間にわたって滞納を続けている賃借人がいる。
  • これまでの滞納分は連帯保証人がしっかり払ってきたため、オーナー側に実害はない。
  • しかし、その連帯保証人もこれ以上の保証は難しく、部屋を解約にしてほしいと言っている。
  • オーナーも了承し、管理会社もそれに従うが、実害がない中で明け渡し訴訟等は可能なのか。

専門家の回答

訴訟をするなら実害が必要。訴訟の費用負担も事前に取り決めを。

連帯保証人は、請求に関して契約者本人(債務者)と事実上同じ扱いをされるにもかかわらず、当該契約の解除等の権利は持たないという非常に厳しい立場です。そのため、今回のように契約者本人の滞納賃料を連帯保証人が延々と払わされるケースがしばしば発生します。

しかし、連帯保証人の立場から契約を解除する方法がないわけではありません。特に、このケースのように貸主と賃借人を解約させる合意がとれている場合には、以下のような方法が考えられるでしょう。

 

(1) 部屋を解約するよう、連帯保証人から契約者に働きかけ、解約させる。

(2) 連帯保証人による滞納立て替え払いを3ヶ月程度ストップし、意図的にオーナー側に実害を作る。実害ができたら、オーナー側はその実害を理由に裁判を提起し、部屋を明け渡させる。 

 

当然ながら(1)の実行によって契約を解除することが望ましいですが、現実的には(2)の選択肢を選ばざるを得ないケースも多いと思われます。
その際、ポイントとなるのが「3ヶ月程度の滞納の実害を作ること」です。

本来、相互の合意によって結ばれた賃貸借契約は、片方の主張によって強制的に解除することができません。契約解除に至るためには、貸主・借主という当事者間の「信頼関係の破壊」があることが求められます。

信頼関係の破壊とは、どちらか一方の裏切り行為・不信行為によって、賃貸借契約の継続が困難になった状態を指します。そして、この信頼関係の破壊を証明しないことには、たとえ裁判を起こしたとしても、契約解除の主張を認めてもらえないのです。

 

家賃滞納と信頼関係の破壊

では、どのような行為が不信行為とされるかというと、債務不履行、つまり家賃滞納も不信行為のひとつとされています。ところが、今回は連帯保証人みずから滞納を解消してしまっているため、現時点で当事者間に信頼関係の破壊を示すものがありません。

そこで、「3ヶ月程度の滞納の実害作り」です。相談者も「実害がない中で訴訟ができるのか」と心配されている通り、信頼関係の破壊を示すには実害が必要です。(滞納しているという事実だけで提訴可能という判断もあります)

信頼関係破壊を認められるには、1ヶ月分の滞納では足りず、一般的には3ヶ月分程度が必要とされています。ですので、まずは3ヶ月分の滞納の事実を作るところから始めることになるでしょう。

 

訴訟中の賃料・訴訟費用について

さて、これで部屋の明け渡し・契約解除の訴訟となるわけですが、連帯保証人という立場として気を付けておきたい点があります。それは、

 1.敢えて作った滞納3ヶ月分は、最終的に支払う必要がある。

 2.実際に部屋が明け渡されるまでは家賃が発生し、これを支払う必要がある。

 3.明け渡し後、原状回復費用を支払う必要がある。

 4.保証人の意向による訴訟。訴訟の費用はだれが負担するのか。

…以上の4点です。

 

当然ながら、1~3の費用は本来、賃借人が支払うべきものです。
しかし、賃借人に支払い能力がないためにこの状況に陥った以上、これらの費用も最終的に連帯保証人が支払わなければならなくなる可能性が高いです(もちろん保証人は賃借人に対して立替分を求償できますが…)。

また、4の訴訟費用についても、本来は貸主が負担するものですが、訴訟を保証人の意向で起こしているならば、いくらか負担を求められる場合も少なくないと思われます。トラブルを避けるためにも、訴訟費用について予め貸主と話し合っておいたほうがいいでしょう。

 

以上、連帯保証人の立場からの契約解除についてまとめましたが、先述の通り、やはり望ましいのは(1)による解約です。

貸主が解約を承諾しているのであれば、管理会社としては連帯保証人の賃借人確保・説得に協力し、早期の解決・部屋の明け渡しを目指すべきです。一見すると(2)のほうが確実のようにも見えますが、事態が長期化し、賃借人・連帯保証人の負担額が大きくなればなるほど賃料未回収のリスクが高まることは、管理会社としても看過できない点ではないでしょうか。

 

※この事例は2014年1月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。


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