リスクと業務内容の詳細提示で管理獲得
管理会社はオーナーから管理委託を受けなければ「管理会社」になりません。この連載では、空室対策やオーナーへの提案手法、管理ビジネスのあり方などを書いてきましたが、管理する物件がなければ意味がありません。今回は、管理受託の営業の手法を紹介します。
そもそも、なぜわれわれ管理会社に管理料を払って管理を任せていただくのか? それは第一に「リスクマネジメント」としてです。
下図は、賃貸不動産経営におけるリスクを提示したものですが、管理会社に任せないで、オーナーが自主管理でやるというのなら、これらのリスクは全部自分で被っていただくことになります。
われわれプロに運営を任せるということは、そのリスクを軽減、もしくは管理会社が負うということになります。管理受託のための営業時には、まずこれらの基本的なことを説明するとよいのではないでしょうか。
また、実際にわれわれ管理会社は何をやるのか、ということも明確にしてはどうかと思います。次の図は、管理業務の中身を表したものです。
大きく8つの業務に分かれますが、管理会社は現実にこれだけのことをやっているのです。自主管理するということは、これらの業務のほとんどをご自分でやってください、ということになります。数パーセントの管理料がだんだんと安いものに感じられますよね(笑)。
これだけの業務を遂行するということを管理業務案内のパンフレットに記載し、管理契約書に明記するという作業が大事です。
具体的には、管理受託の方法は案件の発生別に分類すると大きく2つに分けられます。
オーナー直(ちょく)営業と、間接営業です。
オーナー直営業としては、まず、(1)新築プロデュースと、(2)リニューアル・プロデュースがあります。賃貸の現場を知るわれわれこそが一番良い企画がでできると私は信じています。
次に、(3)「管理替え」の営業があります。空室が埋まらずに困っているオーナー、あるいは既存の管理会社に不満があるオーナーに対して営業します。また、「自主管理」のオーナーも対象です。
しかし、首都圏ではなく地方の場合は、業者同士のしがらみがあって、なかなか他社から管理をいただくわけにはいかないという実態があるのも事実です。難しい問題ですが、顧客の立場に立ってみれば答えはシンプルだと思うのですが。
次に(4)建築企画発生段階での営業があります。建築計画の決定後になってしまいますが、敷地に掲示される「お知らせ看板」などによってオーナーに直接営業をかける方法です。
(5)は相続コンサルなどを通しての営業です。税理士さんとタイアップしながら、相続設計などのコンサルなどで信頼を得て管理を受託する手法です。(6)は「セミナーの開催」です。
間接営業による管理受託ですが、まずオーナーをはじめ関係する各方面の人たちの信頼を得られるようしっかりとしたビジネスを展開していれば、「紹介」によって管理受託の道が開ける可能性が高くなります。
(1)既存オーナーの紹介、(2)税理士・会計士・FP・不動産コンサルタント・金融機関からの紹介があります。(3)事業用物件の売買業務を行う不動産会社(賃貸業務をしていない業者)からの紹介という方法もあります。(4)建築会社への営業、建築会社がオーナーに対して行う建築請負の営業の支援をして管理受託につなげる手法です。賃料査定から入ることが多いですが、その際に企画提案型の査定をするとよいでしょう。例えば「このままの間取り・設計では、これくらいの賃料しかとれないが、このように変更すれば、賃料がこのくらい上がる」といった営業を展開します。
同じように(5)設計事務所への営業もあります。
(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2011.09.26掲載)