「相談デスク」
このコーナーはベーシックサポート会員様から実際に当社へご相談いただいた内容を、解決策の一例として公開していく企画です。
冬場は注意!! 結露によるカビ問題は誰の負担?
今回はこの時期に増えてくる結露による「カビ問題」について。
約7,000戸管理のアートアベニューでは昨日までの1年間で、22件のカビ問題が発生しています。
この数字を見ると300戸管理している不動産会社で毎年1件は発生する、割と身近なトラブルだということが言えますよね。
しかもクロスの張替え、衣服や家財の弁償、健康被害・・・など、時間が経つにつれ、問題が深刻化するのが、この問題。あまり楽観視しない方が良いかもしれません。
相談ダイジェスト
- 南向きの日当たりの良い物件の1室だけに結露が発生。階下・隣室は問題なし。
- 結露は壁から床に滴るほどで、壁・床の両方にカビが発生。
- 構造は躯体のコンクリートにクロス直張り、床は吸音材の入ったクッションフロア。
- 入居者に責任はあるのか? どこまで請求できる?
専門家の回答
【弁護士の見解①】よほどひどい使い方をしていなければ入居者の責任は問えない
構造上の問題として捉えるべきか、入居者の善管注意義務違反を問えるものなのかというところ。
善管注意義務違反の問題として扱うならば、常識的に考えてよっぽど酷い扱い方をしていない限りは、入居者の責任は問えません。
目安として、一般的な人が通常にやるべきことをしていなかったために 発生したカビ程度では難しく、ものぐさな人でもやるであろう手入れをしていないことで発生したカビぐらいで、ようやく借主側に負担を求められる程度です。
補足ですが、原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)によると、結露を放置したことにより拡大したカビ、シミについては、
「結露は建物の構造上の問題 であることが多いが、賃借人が結露が発生しているにもかかわらず、かつ、拭き取るなどの手入れを怠り、壁等を腐食させた場合には、通常の使用による損 耗を超えることが多いと考えられる。」
とされています。
【弁護士の見解②】退去費用、衣類・家財の弁償、健康被害を入居者から訴えられたら?
一方、カビ発生が原因で解約となり、入居者から退去にかかる費用と引っ越し代の負担をして欲しいと言われるケースや、衣類への損害や健康被害を理由として損害賠償を請求されるケースなどもあります。
ただ被害認定は非常に難しいと言え、その被害程度やカビとの因果関係は、その被害を訴えている側で証明すべき事項なので、管理会社としては出方を待つことになります。
【アートアベニュー管理課の見解】結露の原因は?
まずは結露の原因が何なのか、現状をきちんと調べることが必要です。
躯体のコンクリートにクロスを直張り、というのは確かに結露が出やすい構造ではありますが、南向きの日当たりの良い部屋でそこまで結露が発生することはあまり聞きません。その部屋だけ、というのにも首を傾げます。
もしかしたら、漏水ということも考えられます。ただ単純に加湿しすぎているということも考えられます。
その原因によって負担する人が変わりますので、退去費用にしろ工事費用にしろ、しっかりと現状を把握し対応した方がいいですね!
おわりに
カビを未然に防ぐ対策を
構造上の問題であれば、たとえ「入居者が換気を怠っていた」「結露を放置していた」としてもよほどのことでない限り入居者負担とするのは難しいようです。
であれば、私たち管理会社はカビを未然に防ぐ対策を考える方が良さそうですね。
結露をこまめに拭いてもらう、換気をしてもらう、カビてしまったらすぐに連絡をもらうなど、冬の初めに通知文を撒き、入居者に協力を仰ぐのはいかがでしょうか。
※この事例は2014年8月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。