コンサルタントコラム

公開日:2017年1月12日

【コラム】賃貸管理は「ブラック」な仕事なのか?

【コラム】賃貸管理は「ブラック」な仕事なのか?
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果たして賃貸管理は「ブラック」な仕事なのか?

「不動産はこういうものだから仕方がない」のか?

不動産業界は様々な問題を抱えていますが、共通の悩みと言えば「人が定着しない」という問題です。
これは賃貸・売買・仲介・管理、どの部門にも言えることで、

「もっと稼げる会社に行く」
「思い切って独立する」

といったポジティブな理由の転職が多い反面、

「長時間労働で体を壊した」
「ストレスに耐えられなかった」

といったネガティブな転職理由を耳にすることも少なくありません。

 

確かに不動産会社は休みが少なく、体育会系で、ブラック気質の企業が多い印象です。
しかし、だからといって「不動産はそういう業界だから」と、離職率の高さを放置してしまっていないでしょうか?

組織はどこまでいっても「人」の集まりであり、人が辞めるということは経営資源を喪失することに他なりません。
その喪失を「業界」のせいにしていては何も解決しません。自社の成長を望むのであれば、社員の離職という問題に真っ向から取り組むべきです。

経営資源をどう確保するか

辞めることを前提に採用し、最低限の人件費で使い倒す――、そんな使い捨ての人材戦略が一定の売り上げを生み出すのは事実です。

しかし、そのような方法でいくら売上を上げても、それは栓を抜いた浴槽にお湯を溜めようとしているようなもので、いつまで経っても会社の中に経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)が残りません。
資源の無い状態の会社経営とは、いわば自転車操業のようなもの。会社を大きくするにはまず、きちんと「栓」をして、少しずつでも社内に資源が残る仕組みを作る必要があります。

この問題を解決するには、大きく分けて2つの方法があります。

ひとつは、人が辞めない組織をつくること。
もうひとつは、人が辞めても情報やノウハウが社内に残る仕組みを作ることです。

人が残る組織作り

人が辞めない組織とは、つまりスタッフが「もっと働きたい」と思う組織です。
最近ではES(Employee Satisfaction:従業員満足)などと言ったりしますが、スタッフが仕事を通じて満足感を得られるような、イキイキと働ける環境を整備することは重要です。

もちろん高い給料や歩合制度は従業員の満足度を高めますが、例えば、人事評価基準が明確で「この先どう頑張ったらいいか」が分かりやすかったり、自主的な勉強・資格取得をバックアップする制度があったりすることも社員のモチベーションアップにつながります。

また、従業員同士で感謝を伝え合うことで仕事にやりがいを生む「ファースト・クラス・カード制度(サンクスカード制度)」や、優秀な業務改善アイデアを表彰する「アイデアコンテスト」なども、社員のやる気を高める効果を発揮するでしょう。

 

つまり、人が「この会社でもっと働きたい」と思う原動力は、
決してお金だけではないということです。

たくさんお金を稼げるから、という人もいれば、一緒に働くみんなが好きだから、という人もいるはずです。自分のアイデアから商品や社内制度が生まれることで、会社に強い愛着を持つ人もいるでしょう。

ある程度の決裁権を渡すことができれば、社員は「仕事をやらされている」という感覚から「会社を運営している/自分が会社を支えている」という意識に変わり、仕事そのものに満足を感じるようになります。

一方で、家族や友人との時間を大切にすることを目的とした休暇制度を設ければ、社員は仕事をしていない時間にこそ「この会社に勤めて良かった」と満足を感じるようになるはずです。

ES策を講じることは、離職リスクを下げるだけでなく、従業員ロイヤルティ(忠誠心)の醸成にも繋がります。
反対に、従業員満足を考えない会社では、給与などの待遇面だけで他社に人材を引き抜かれるリスクがあるばかりか、いざ会社が経営的な窮地に立たされた際、一緒に戦ってくれる社員の確保が難しくなるでしょう。

情報が残る組織作り

次に、社内に情報やノウハウが残る仕組み作りですが、こちらは急務です。

日常生活の中ではほとんど意識しませんが、事故や病気、家庭の事情など、どうしても避けられない離職はいつ発生するか分かりません。昨日元気に出社した社員が、今朝の通勤で事故に巻き込まれないとは限らないのです。
実は、スタッフの知識・ノウハウ・技術は常に喪失の危機にさらされていると言えます。

この喪失を防ぐには、

(1)マニュアル作りの徹底
(2)入居者対応状況の共有
(3)オーナーの詳細情報共有
(4)定期的な業務レポート作成

などがあります。
とにかく、離職してしまう社員の頭の中にしかない情報(「暗黙知」といいます)を具体的なかたちにして取り出し、誰が見てもすぐ分かるようにしておかなくてはなりません。

 

ただし、これらは非常に手間のかかる作業でもあるため、どれだけ効率化できるかがカギになります。第一歩は、常日頃から各人の情報をデータ化できる業務環境を整備し、可能な限りのデータ共有を実現するところからでしょう。

・報告はメール/SNS/SFAを経由してテキストデータ化する
・グループウェア(サイボウズ他)の活用
・賃貸管理ソフトの活用
・クラウドストレージ(dropbox他)の活用
・クラウド型マニュアル作成支援サービスの活用
・言語化の難しいノウハウを動画で撮影 など

 

何の準備もなく人が辞めることの損失は想像以上に大きいものです。(1)単純な戦力ダウンはもとより、(2)過去の対応内容が共有されていなければ情報がすべて消えてしまいます。(3)当然、新規に人を採用するには費用がかかりますし、(4)ゼロから人を育てるとなると手間も時間もかかります。かといって、(5)優秀な人材を採用できる保証はなく、(6)離職した人間が競合企業に転職して自社を脅かすようなケースもあります。そして、人材を失った会社は往々にして(7)社内に情報が残っていないばかりにその脅威に対抗できません。人か情報、せめてどちらかが残っていれば管理離れにならずに済んだのに…、という苦い経験は、大抵の管理会社にあるのではないでしょうか。

 

以上のような損失を考えれば、離職が発生していない今の段階で手を打つ必要があることは明らかです。

バブル期以来の有効求人倍率を記録し、人の採用が難しくなっている昨今、一度失った人材・情報といった資源はなかなか回収できません。

働きやすい環境を整備し、人を育てることの重要性に、改めて着目すべきときが来ているのではないでしょうか。


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