全国賃貸住宅新聞

公開日:2017年4月10日

第99回 人材難の時代、「働き方改革」改革が急務ではないか?

第99回 人材難の時代、「働き方改革」改革が急務ではないか?
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経営者が頭を切り替え変革すべき

女性だけでなく男性も育児・家事がしやすい勤務体系をつくることが重要

「若くて明るく元気な男性社員」はどこにいる? 

今春入社の新卒採用はどうであっただろうか?弊社はやっと2名採れた。昨年は3名であったが、今年はこの3月にぎりぎり二人目が決まった次第。新卒でも中途でも有効求人倍率は20数年ぶりの高水準。大手企業が「えっ、そのレベルの大学からも採るの?」と言われるくらい、人材難である。みんなが欲しい「若くて明るく元気な男性社員」はどこにいるのだろうか。そもそも、ここ20年で20代の若者の人口が三分の一も減っているのはご存知だろうか(図1参照)。

たとえば30人採用できたものが今は人口そのものが20人になってしまっているのだ。採用に関していえば、今後は「女性」、「外国人」、「高齢者」の雇用が課題になるといっていいだろう。女性が男性と同じようにしっかり働いてもらわないと会社が回らないのだ。また国籍をとやかくいっている場合ではないだろう。弊社も今年マカオ生まれの新卒を採用した。4ヶ国語が話せる女性だ。高齢者だって、まだまだ働ける人も多いだろう。頭を切り替えないといけない。

 

そして、就活生がはたして、不動産業界を積極的に選ぶだろうか、という根本的な問題がある。はっきりいって不人気職種である。不動産業界のイメージは、「ブラック企業が多い」、「ノルマが厳しい」、「残業多し」、「休日が少ない」といったところではないか。不動産会社の雇用条件を思い切って改善する必要があるのではないか。私のよく知る賃貸業でいえば、実際に年間休日日数は地方では100日にいっていないところもあり、首都圏でも110日程度のところも多い。因みに弊社は20年前から年間休日120日である。どうしてかというと、会社を作った当初、全然人が集まらず、お金をかけないで優秀な人を採用するにはどうしたらいいかと考え、思いついたのは「完全週休二日制」であった。それにつられて入社したメンバーがいま会社の幹部を務めている(笑)。

 

「完全週休2日」で、それ以外に1年間の祝日16日分を完全に与えて、52週✕2日+16日=120日である。「隔週週休2日」だと、マイナス26日(52週÷2)で年間休日が94日になってしまう。それに冬季、夏季のコア休日を何日か足して105日程度という会社が多いのではないか。地方、また首都圏でも経営者から「人が採用できない」、と相談を受けると私は必ず年間休日日数を聞く。すると皆、120日与えていない。私はとにかく休日を増やしたらどうかという。すぐその場で決断する経営者もいるが、多くの経営者は売上が減るのではないかといって躊躇する。

 

では、もし売上が減ったら休みを元に戻すという条件で、取り敢えず実験でやればどうかというのだが、返事がないことが多い。ほぼ断言するが、売上は減らないと思う。かえって社員のやる気が出てきて、売上が伸びるのではないか。また、採用で有利なので、良い人材が入ってきて会社が良くなるのではないか。有給消化率は何%であろうか。弊社では部署によって差があるが、平均でまだ6割弱である。労基法どおり入社初年度から10日あるが、100%に近づけたいと思っている。不動産会社の経営者は頭を切り替える時期にきた。

政府も頭を切り替えた

いま、働き方を大改革している会社がけっこう出てきている。残業を減らしたらその分ボーナスで払っている「SCSK」、副業を自由にして社長自身が「育休」を取った「サイボウズ」、サイボウズは出戻り制度を作った。弊社もマネして、この春から新卒3年目の女性社員が1年間休暇を取って海外に行く。帝国データバンクも週2回は六時半で退社しなくてはいけないそうだ。

 

また、女性の扱いを真剣に考えなければいけない。結婚して、子供も産みたい、しかし、辞めると再就職では給与が上がらないし、パートくらいしかない、子供を育てながら正社員は難しい、では子供は作らず働き続ける、という選択になる。これが少子化を生んでいる。または、子供を産んで復帰した女性の先輩社員をみると毎日遅くまで働いている。親に子供をみてもらっているらしいが、私にはそれはできない。まして、子供を育てながら毎日夜10時まで会社に残りたくない。そう感じたら若い女性は会社に残らないし、入社もしたくないだろう。

 

昨年「女性活躍推進法」が施行され、301人以上の会社は女性の「平均勤続年数」、「労働時間の状況」、「離職率」、「管理職比率」、「役員の数」等、男性社員との比較数値を明示することが義務化された(中小企業は努力目標)。「女性の活躍に関する状況の把握、改善すべき事情についての分析」を行わなければいけないのだ。これによって、入社する企業を女性は選別することになる。数値が悪い企業に女性が入社を控えるのは自明だろう。実際、子供を育てながら働くのは大変だ。

 

では時短勤務でも在宅勤務でもいいではないか。弊社は子供を持つ女性の在宅勤務を今年から始めた。まったく問題ない。また、育児休暇規定を改訂したら、ここ2〜3年急に妊娠する女性社員が増えた。そして、出産後戻ってきてくれている。嬉しいことだ。時短で働くと、その時間でしっかり仕事をして帰宅するという意識が生産性をあげているような気がする。政府も完全に頭を切り替えてきているのだ。「長時間労働の是正」、「女性の登用」、が経済活性化、そして少子化対策に繋がると気づいたのだ。

 

ブラック企業の名称のハシリといえる「ワタミ」では、アルバイトが集まらず閉店を余儀なくされ、赤字に転落したことは記憶に新しい。理念集に「365日24時間死ぬまで働け」という文言が入っていたのが有名になってしまったが、創業者はそのような思いで一生懸命頑張ってきたのだろう。それが許された時代ではあったのだ。「24時間働けますか ♫ (リゲイン)」というCMがあったことも隔世の念である。あれは30年ほど前のことだ。私なども、あのCMに実は好感を持っていた。いまでも郷愁を感じる。

 

しかし、若い人にはまったく意味が分からないだろう。時代は変ったのだ。私の世代では(私は昭和36年生まれです)、同級生の女性は結婚したらどんなにいい会社に務めていても結婚したら寿退社をしたもので、専業主婦になるのが、当たり前だった。しかし、今の若い人は「共働き」をするのが普通の感覚で、男子も家事を手伝うことに抵抗がない。ということは、男子が残業が多くて育児・家事を手伝えないということは、女子にしわ寄せがくるのだから、「モテナイ」ということになる。結婚できないのではないか。

 

また、女性がしっかり働いて男性並の給与を稼いできたら、家計的には倍の収入になるわけで、男性が一人で倍の給与を稼ぐのはハードルが高いのだから、男性が育児・家事を手伝うことは極めて合理的なことだ。男性が育児・家事を手伝えるような勤務体系を作ることが急務だと思う。

(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2017.4.10 掲載)


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