仕事のリストを毎日更新し優先順位確定
まめなコミュニケーションで社員間の信頼構築
スマホの多様化で連絡がスピードアップ
働き方改革を推進するためには、短時間で成果を出す必要がある。労働生産性を高める必要があるわけだが、要は「要領良く働く技術」を高めるということだ。特に賃貸管理会社は「人」でやる仕事が元々多いのだから、尚更だ。4年ほど前にもこの連載でこの手の「技術」について触れたことがあるが、この4年で大きく変わったことは、「スマホ」の多用だ。チャットアプリのLINEでグループ機能を使っていない人はほとんどいないだろう。部署のメンバーでグループを作り、たとえば、建物の故障箇所を写真や動画ですぐにアップして、情報共有したり意見を求めたりするのだ。PCメールを見て返信するのに比べて格段に早くて便利だ。なぜなら、誰もが肌身離さずスマホは持っているからだ。
今年の5月から携帯キャリア3社が同じような仕組みの「プラスメッセージ」も始めた。今後どういう棲み分けになるのかわからないが、スマホ依存度はますます高まりそうだ。仕事中にちょっとわからないことがあれば、すぐにスマホで調べるようになっているし、アマゾンで本を買うのも、銀行口座から送金するのも天気予報を確認するのもみなスマホだ。いまや、PCキーボードの「ブラインドタッチ」以上にスマホの「フリック入力」の技術のほうが有益かもしれない。未だに「ガラホ」に拘っている人がいるが、ビジネスにおいては「時代に乗り遅れている人」と言われても仕方がない。
このように明らかに「コミュニケーションの技術」が進化してスピードが早くなった。そして、チャットのいいところは、ちょっとしたこと、しかしそれを伝えなければ仕事に差し支える大事なことを伝え易くなったことだろう。仕事でも個人の人間関係でも、それこそ夫婦の関係だって全て「コミュニケーション」の問題だ。仕事の進め方において、第一に触れなければいけないことは「コミュニケーション」であると思う。
送りっぱなしは危険 一方的に終始しない
仕事上の連絡をしてこないスタッフが時々存在する。1ヶ月も前に、あるタスクを与えているのだが一向に返事がない。また、大事な情報を言ってこない場合もある。そのことを黙っているのはおかしいでしょ、ちょっと連絡してくれればよかったのに、という類のことだ。
いま話題の映画「カメラを止めるな」で、オタクっぽい人が二度ほど「メールを送ったんですけど」と文句をいう場面がある。「あるある」な場面だが、メールさえ送っていればそれを受け取った人が行動を起こすのが当たり前で、責任は相手にある、という態度を取るのである。返事がなければなぜもう一度メールを出すとか、それこそ電話をするとかの対処をしないのか。いろいろな事情でメールを受け取っていない可能性だってあるのだから。これはコミュニケーションが一方的なのだ。
行事や食事会企画し距離近づけるのも重要
ある人気投資ファンドを組成している方の話しを聞いたことがある。ファンドマネージャー達が毎日、取材や調査で自由に活動をしているのだが、毎朝、1時間だけは必ず全員集まることにしていて、そこでは「雑談」をしているというのだ。昨日、食べたレストランが良かったとか、そのようなたわいもない話しらしい。なぜそうするかというと、そういうコミュニケーションを取っていない人同士では、お互いの情報を信じない傾向にあるというのだ。興味深い話しだ。コミュニケーションが少ないと信頼関係が築けないのだ。会社であっても、たまの飲み会や行事、ランチなども重要なのではないだろうか。
また、5月のこの連載でも書いたが、「伝える力」を鍛えなければならない。主語(主人公)をはっきりさせ、接続詞(だから、でも、また、それから等)の使い方を間違えず、また単語の意味を明確にして、ロジカル(論理的)に話せる人は意外に少ない。伝え方が下手な人と電話で会話するのは苦しい。「・・・ということは、◯◯が◯◯という意味でいいですか?」といちいち確認しないと前に進めないのだ。これをやらないとお互いに誤解したまま話しが進んでしまう。
やり残した仕事を自覚する作業組み込む
次に、「タスク(仕事)のリスト」を作ることが大事だと思う。誰でも同時にいくつかのタスクを抱えているものだ。それを文字化けしてリストにしていない人が多い。そのリストを毎日、更新することが大事だ。どのようなタスクを自分が持っているのかを、日毎に確認するのだ。弊社では「モーニングリスト」というアクションリストを記述するA5サイズのメモをオリジナルで作っている。メモでも、ノートでも、スマホへの入力でもなんでもいいので、「毎日更新する」ということが大事だ。更新とは、残っている(やり残した)タスクを再確認する、ということでもある。私などは、リストに150件くらいは常時あり(新しいアイデアなども入っている)、とてもとてもやりきれるものではないが、その中から「優先順位の高いもの」からこなしていっている。このタスクリストは、その日のタスクの「優先順位を決める」というとても重要な意味合いを持っている。
人は、重要でないのに、そこそこ緊急性があるもの(たとえば、かかってきた電話の内容に振り回されるとか)に時間をかけてしまって、「緊急ではないかもしれないけれど、とても重要なタスク」を後回しにしてしまうものだ。重要なタスクは、「重い内容のタスク」であることも多いので、ついつい避けてしまう。「それほど重要ではないけれど、そこそこ緊急性のある仕事」に関わっているので、けしてサボっているわけではないし、人にも言い訳できるので、結果的に「重要なタスク」に取り掛かれずじまいということが普通に起きる。
作業の着手前に仕事の方向性定める
また、「仕事の取り掛かり方」にも技術がある。タスクが発生したとき、たとえば上司から今度訪問する会社へのプレゼン資料を作るように依頼されたとしよう。この場合、言われた瞬間に5分〜10分でいいので、上司に言われた直後に、プレゼン資料を作るためにはどうしたらいいかと頭をフル回転させるといい。そうすると、疑問が湧いて来るからもう一度上司に質問しようとか、作成のために必要な資料を誰それに依頼するといいなとか、「資料作成の締切直前ではできない準備」をしっかりすることができる。よって、いい資料を作成できるのだ。これは「仕事の設計図」を作っているということでもある。どう作ったらいいか、と「設計」できれば、あとは工事(作業)をするだけだ。
ある部分の工事を他の業者(会社の同僚)にアウトソーシング(手伝ってもらう)することだって思いつく。この設計と工事を同時に締切直前にやるから中途半端でピントのずれた結果になってしまうのだ。上司からこんなものを頼んだのではない、お前はわかっていない、と怒られるのだ。設計図がないままに行き当たりばったりで建物を作っていっても、良い建物ができるわけがないのだ。また、依頼主(この場合上司)に設計図(大体の方向性)ができたところで、それを持っていって、こんな感じでいいですか?と確認すると良い。その設計は上司の望んでいるものでないかもしれないからだ。方向が間違ったまま本工事に入ってしまったら、時間がもったいないのである。
(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2018.11.12掲載)