相談デスク

公開日:2019年3月20日

「あと10年もしたら建て替えかしら…」立ち退きを意識した物件運用の最善手は?

「あと10年もしたら建て替えかしら…」立ち退きを意識した物件運用の最善手は?
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「相談デスク」

このコーナーはベーシックサポート会員様から実際に当社へご相談いただいた内容を、解決策の一例として公開していく企画です。

「あと10年もしたら建て替えかしら」立ち退きを意識した物件運用の最善手は?

アパート投資は比較的長期的な投資ですが、いずれは「建物」の寿命がやってきます。

設備の陳腐化、躯体の老朽化――、訴求力の低下や入居者の安全を考えれば、いずれは取り壊しや建て替えを選択しなければならないでしょう。

しかし、いざそうなったときトラブルになりやすいのは、やはり「立ち退き」の問題。

最後の最後で多額の立退料が発生し、結果的に赤字になってしまった…、なんて笑い話にもなりません。

いつか来るその時に備えるなら、最善手は何になるでしょうか。

相談ダイジェスト

  • 今すぐではないが、建て替えを検討しているオーナーがいる。
  • おおむね5~10年後を予定しているが、ギリギリまで賃貸したい意向。
  • 現在は普通借家契約で運用しているが、定期借家契約や一時使用貸借を活用するべきか。
  • また、現在の入居者の契約形態を変更することは可能か。

専門家の回答

再契約数を指定した定期借家契約で運用という手も。ただし、既存入居者の契約切り替えは契約日に注意

まず賃借人との契約形態については、建て替えの時期が明確なのであれば定期借家契約がもっとも適当でしょう。

定期借家契約は、書面の交付や事前説明の手間こそかかるものの、設定した契約期間のとおりに契約を終了することができます。立退料の発生に不安があるのであれば、定期借家契約できちんと契約期間をコントロールするべきです。

 

「一時使用目的の賃貸借契約」を用いる方法もありますが、定期借家契約に比べるとやや確実性に劣ります。

一時使用目的の賃貸借契約もまた定期借家契約同様、契約期間の満了と共に契約を終了できる契約形態です。借地借家法ではなく民法の規定であるため、借地借家法の適用を免れることができ、貸主からの解約の際に「正当事由」を必要としないメリットがあります。

しかし一方で、一時使用貸借はその契約書の内容ではなく、客観的な事実によって判断されます。

つまり、一時使用目的の賃貸借契約は「契約期間が短い」「契約書に”一時使用目的”と記載がある」といったことで成立するのではなく、借主が不動産を借りる目的や、短期間の使用が妥当かどうかなどの諸条件が客観的に判断されて成り立つのです。

結果、賃借人が「ずっと住むつもりで契約した」と主張し、その主張を覆すような客観的材料が用意できない場合には、その契約は一時使用目的の賃貸借契約ではなく、借地借家法における普通借家契約と判断されてしまう可能性があります。

立退料の発生や不当な居座りを回避したい、という目的で契約形態を選ぶのであれば、より確実な定期借家契約を利用したほうが無難ではないでしょうか。

定期借家契約の期間設定はどうするべきか

さて、定期借家契約による運用に決まったとして、次は「どのタイプの定期借家契約で契約するか」です。

定期借家契約は、主に3つのパターンが考えられます。

 

「非再契約型」定期借家契約  … 期間満了によって契約が終了し、再契約はできない。

「再契約未定型」定期借家契約 … 期間満了後に再契約ができるかもしれないし、できないかもしれない。

「再契約型」定期借家契約   … 期間満了を迎えても、原則として再契約できる。

 

住居の賃貸借を定期借家契約で運用する場合、オーナーズエージェントでは主に「再契約型」の使用を推奨しています。

これは、「非再契約型」では入居者に長期間にわたって住んでもらうことが難しく、また「再契約未定型」では入居者が安心して部屋を借りることができないためです。

しかし今回は、将来の建て替えを見据えた物件運用です。

建て替えのタイミングで確実に賃貸借契約を終了させたい。そう考えるなら、原則的に再契約となってしまう「再契約型」をそのまま使うことは難しそうです。

結果として、選択肢は2つに絞られるでしょう。

 

1.非再契約型で、建て替えの寸前まで契約する。

5年なら5年、10年なら10年と建て替えの時期を決めて、その期日までの非再契約型定期借家契約を締結してしまいます。

メリットは、確実に賃借人が退去してくれる点です。

一方で、「10年も長期の定期借家契約は結びたくない」という声が上がりやすい、契約1年目から深刻な滞納状態・居座りが発生した場合に対応策が限られる、といったデメリットがあります。

 

2.再契約可能数を決めて、再契約型で運用する。

基本的には再契約型の定期借家契約ですが、再契約できる回数に制限を設けて契約を締結します。

2年契約の再契約型で10年運用するなら「最大4回」、1年契約の再契約型なら「最大9回」など、再契約できる回数を特約で指定してしまうのです。

メリットは、「1」のデメリットをカバーできること。借りてもらいやすくなりますし、滞納等の発生に対するリスクも低減できます。もちろん「1」と同様に期日までの確実な退去が望めます。

デメリットは、再契約の数だけ事務作業が煩雑になることでしょうか。また、再契約のタイミングで解約される可能性が若干高まる、といった指摘もあります。

 

どちらも一長一短ですので、状況に合わせて運用方法を選択してください。

なお、「10年で建て替えるつもりだったが、もう3年延びそうだ」という場合には、どちらも入居者との合意のうえなら再契約できます。

ただし、入居者はすでに転居するつもりでいるでしょうから、早めに話を持ち掛けてあげるべきでしょう。

普通借家契約を定期借家契約に切り替える場合は「契約日」に注意

最後に、既存入居者の対策を考えておきましょう。

これから入居する人たちは定期借家契約で運用するとしても、既に入居されている方々はおそらく普通借家契約でしょう。立ち退きリスクを解消するには、彼ら既存入居者の契約も定期借家契約に切り替えておきたいところです。

 

切り替えは、「普通借家契約の合意解約」と「定期借家契約の締結」によって行います。

ポイントは、普通借家契約を一度解約しなければならない点です。

「現行の普通借家契約を定期借家契約に切り替える合意」を行なったとしても意味を為しません。契約が解除されるまでは普通借家契約における借家権が存続し、結果的に「正当事由なしの解約」を否定してしまうからです。

ですので、まずは普通借家契約を終了させ、普通借家契約の借家権を終了させる必要があります。

契約が終了したあとであれば、どのような条件の定期借家契約であっても、賃借人との合意のもとで締結可能です。

 

ただし1点、注意しなければならないことがあります。

それは、普通借家契約の契約開始日です。

 

定期借家権に関する法律が施行されたのは2000年3月1日です。それ以前の社会には、現在の定期借家契約という概念が存在しませんでした。

よって、それより前に締結された普通借家契約は、たとえ貸主・借主が合意のうえで普通借家契約を解約し、合意のうえで定期借家契約を締結したとしても、契約形態を定期借家契約に切り替えることはできない、とされています。たとえ当事者同士が同意していたとしても、当分の期間(立法当初は4年程度)を経なければ、同一の当事者間で、同一の建物について定期借家契約を締結することはできない、と制限されているのです。

結果として、建て替えまでにとるべき行動は以下のとおりです。

・新規入居者:定期借家契約で運用
・2000年3月1日以降に契約した賃借人:普通借家契約を合意解約し、定期借家契約を締結
・2000年3月1日より前に契約の賃借人:普通借家契約のまま立ち退き交渉

 

定期借家契約の法律が施行されて20年弱。

さすがに、定期借家契約に切り替えられない賃借人はアパート内でも少数派となっているでしょう。

定期借家契約を活用して交渉の手間を減らした分、普通借家契約の方々と慎重な立ち退き交渉を進めていただけたらと思います。

※この事例は2017年9月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。


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