社員の自立性を生かしたテレワーク
リアルならではのオフィスの役割
在宅勤務で集中できる環境を重視で
2022年、我々不動産業界において画期的な法律が施行される。
今年5月に「デジタル改革関連法」が成立し、来年2022年5月には宅建業法が改正され「契約時の押印廃止、重説・契約書の電子書面での交付」が全面解除となるのだ。
「FAX」がいまだに横行しているこの業界において、「ハンコがいらない」、「紙が要らない」という「電子契約」の世界がやってくるのである。PCを用いてネット空間で契約が出来るのである。
書類作成や郵送手間、また保管・管理などコストの削減、人件費の削減につながり業務が効率化される。
入居者にとっても、不動産会社に訪問しなくてもよくなるし、スマホでも簡単に契約でき、契約書の保管も楽だ。
当然、業務のあり方、働き方に大きな影響を与えることだろう。当社も5月から電子契約化に伴いペーパーレス化を進めるべく、既存の賃貸借契約書や管理委託契約書などのPDF化を急いでいる。
このような流れの中で当然出てくるのが、「テレワーク」というテーマだ。
われわれの業界も業務が電子化されれば、当然、そういう働き方が可能になり、通勤時間の長い都市圏のスタッフのニーズも高い。
ちなみに当社(東京本社・新宿駅)の平均通勤時間は58分である。1日2時間を通勤に使うのは合理的ではないように思う。
都市圏以外の地方ではピンとこない向きもあろうかと思うが、育児や介護の必要性から自宅を離れられない人で優秀な人材を雇用するチャンスでもあるし、いずれ、地方でもテレワークは浸透すると思う。
なぜならやってみたら快適だからだ。また、当社は最近、「100%テレワーク社員」という雇用スタイルで3人を採用した。一切、会社に出てこない社員のことだ。
ネットで繋がればいいので、地域を選ばない。3人は山口県、大分県、青森県在住である。これは大きな変化でないだろうか。
■社員を信用することにより自律を促す
テレワークではサボる人が現れるという懸念がある。
私の娘は勤めている会社の支給ソフトがPCに入っており、在宅勤務時に15分間PCを触っていないとアラームがなり、上司にも伝わる。
来社した某大手通信機器販売会社のスタッフに聞いたら、5分だそうだ。皆、社員を信用していないようだ。
私は、会社にいてもサボることは可能だと思う。そのような「管理」をせずに、社員を「信用」して「自己管理」させてはどうかと思う。
何%かはサボる社員が出るかもしれない。「自由」を与えれば、「悪用」する人が現れるかもしれない。
しかし、それはそれで「面白い」ではないか。自由を与えたら自己管理できず、給料をもらっていながら仕事をサボり、自己中心的に働く人が現れたら、皆で叱ればいい。それはマネジメントの問題だ。
通常の働き方では露見しないが、テレワークでそういう人が浮かび上がってくるのは、私は「面白い」と思うのだが。
それにサボれば、必ずそれはばれる。皆に知られることになる。
在宅勤務と言っていながら、携帯電話にいつもすぐに出なかったら、仕事してないんじゃないかと当然皆は思う。
当社は今年の4月からフレックスタイム制を導入した。
月に合計164時間(8時間×20.5日)働けばよく、自由に勤務時間を設定できる。いつ休みを取ってもいい。
たとえば、月曜は13時に仕事を開始して17時に終了(4時間勤務)しても、火曜日は朝8時から夜21時まで働けば(12時間勤務)帳尻は合うのだ。
週休2日制なので、基本は週5日勤務なので、8時間×5日=40時間働けばいいわけだから、週のうち4日を10時間働けば、週休3日を実現できる。
あとは、同じ部署のコアなミーティングにはリアルに参加するとかの部署のルールには従い、他のメンバーに迷惑をかけないなどの社会人として当たり前の行動を取ってもらえればいいのだ。
まだ制度を導入して半年強しか経っていないが、現在平均して出勤日の35%はフレックスが利用されている。また、半年間で平均2.05日休日(1日が完全に休みの日)が増えている。
出勤(在宅勤務を含む)しているときに、集中して時間をかけて(残業して)仕事をして、休むときは休む、というメリハリをつけるようになったとも言えるし、単に、「休みを取りやすくなった」こともあるだろう。
スタッフに聞くと、今までも「時間有給」制度はあったので、16時に退社することも可能だったが、なんとなく使うことをためらわれた。
しかし、「フレックス制」と、明確になると、堂々と早退できる、休むことができるというのだ。「制度」が変わり、会社の「風土」が変わったのだ。
そして、この制度は「スタッフの自律を促す」という大きな目的、効果がある。「一月の行動を自分で設計して、決めて実行する能力」高めるのだ。
従来の会社組織というものは、上位下達型のピラミッド型組織であり、あらゆる企業で採用されてきた。
それは秩序を保つためには有効であり、トップダウンで近代化・合理化を進める際には威力を発揮してきたといえる。
しかし、今日のように個人・社会の指向が多様化して、ある程度豊かになった時代においては、従来の枠に問わられない発想ができる「強い個」が求められる。
そのためには、「自由」を与え、スタッフの自律を促すのだ。
そして、あまり細かいルールを作らない方がいい。
権限移譲をして、「管理」するのをなるべくやめるほうがいいのではないか。
■テレワークによるオフィスのあり方の変化
また、テレワークが浸透して、会社にあまり来なくなると、リアルなオフィスはどうあるべきだろうか?
テレワークのいわば「仮想オフィス」が発展すると、相対的に「リアル」の価値が強化されていくのではないか。
久しぶりに皆と逢えるのだから、目一杯「濃いコミュニケーション」を取ろうということになるべきだし、「リアル」ならではのイベントを企画したりして、スタッフ間の結束を高めることが必要になってくるのだろう。
サイボウズ社長の青野慶久氏は6年前に出された著書のなかで、「これからのリアルオフィスは、劇場の役割をはたすべきだと考えている」と言っている。
私は昨年来、「会社は遊びに行くトコロ」というコピーをスタッフに投げかけている。自分自身の力で仕事を遊ぶように楽しくするものに仕上げること。
また文字通り、会社では皆と遊ぼう、という意味である。
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