戦争で破壊される街、他人事ではないウクライナ危機
賃貸住宅が戦火で焼失、火災保険は適用される?
2月24日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まりました。この戦争が後にどのような名前で呼ばれるのかはまだ分かりませんが、この先、ヨーロッパ全域を巻き込む大きな戦争となる可能性も考えられるでしょう。(中略)ウクライナにおける報道を見て、賃貸不動産のオーナーはふと思うことがあるかもしれません。
「そういえば、日本で戦争が起きて自分の物件が損傷を受けたらどうなるのか?」
「戦争が起きなくても、北朝鮮の発射したミサイルが自分の物件を破壊したらどうなるのか?」
そこで今回は、賃貸物件における保険と戦争(他国の武力行使含む)について、簡単に確認していきたいと思います。
戦争、外国の武力行使…、理不尽な戦争被害
皆さんこんにちは。コンサルタントの山城です。
ウクライナとロシアの戦争が発生し、世間を不安にさせていますね。遠いヨーロッパの出来事ですが、2か国の争いが日本にも波及しないとは言い切れません。現にロシアは日本の経済制裁に対し「重大な対応処置をとる」と発言していますし、北方領土問題でも火種を抱えています。ロシアが日本に攻め入ってくる可能性もないとは言えないのです…。怖いですね。
さて、冒頭のニュースでは、戦争が起きてミサイルや砲弾等で賃貸物件が損害を受けたとき、「火災保険で補償されるのか?」という興味深い内容が載っていました。
もちろん、オーナーさんとしては当然補償を受けたいと思うもの。しかし、結論は残酷で、戦争に関わる損害は火災保険で補償されないとのことでした。記事でも紹介されていましたが、各社の火災保険の約款には、保険金が支払われない事由として、戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱といった条項が盛り込まれています。
それもそのはず、戦争が起きてしまえば日本各地で建物が損壊し、甚大な被害を受けることに。その損害を補償するとなったら、財源の保険料だけではとても足りず、保険会社自体が立ち行かなくなってしまいます。オーナーさんにとっては非常に理不尽な話だと思いますが、そんな理不尽がまかり通るのが戦争なのです。
また、日本とは直接関係のない戦争でも対岸の火事というわけにはいきません。事実、ウクライナ危機の影響で、小麦やガソリン代など生活に関わる多くの物価が値上がりしています。一方、こうした物価上昇に対して、日本の賃金水準は20年以上も横ばいの状況です。もし、今後も物価が上がり続け、生活が苦しくなれば、人々はどうにか支出を切り詰めようと考えるでしょう。
そんなとき、真っ先にやり玉に上がるのが固定費、中でも家賃を抑えようとする動きが強くなると予想されます。
「家賃を上げられない」時代に管理会社ができること
入居者の間で家賃節約のニーズが高まると、空室対策もこれまでのようにはいきません。
家賃が上がってもいいから「人気エリアに住みたい」「グレードの高い物件がいい」という層が縮小するわけですから、立地の良さなどで入居者獲得に悩んでいない物件でも、この先も安泰とは言えなくなってきます。
そうした先の読めない時代でも淘汰されずに生き残るには、やはり収益の基盤となる空室対策を再度見直したいところです。
そこで、私たち管理会社がまず力を入れるべきは、基本的なことですが各物件のターゲットを一層明確にすること。
万人受けを狙った流行りの空室対策に便乗するのではなく、ターゲットとなる具体的な入居者像を設定し、入居者が持つニーズを明らかにするのです。そのうえで、ニーズに沿った設備投資や条件変更などをオーナーさんに提案していきます。
例えば、ファミリーが多いエリアなら物件の水回りを充実させる、ペット需要が高いならペット可に募集条件を変更する、といったことが考えられます。エリアの入居者ニーズに徹底的に迎合し、物件の持つ価値を維持するわけです。
一方で、物価上昇に伴う「価格の安さ」へのニーズがどうしても止められない・このエリアはとにかく安さを求められている、という状況になってしまうようであれば、まずは敷礼ゼロ・フリーレント・初期費用定額キャンペーン・仲介手数料のオーナー負担などの施策を打ち出すなどして、賃料下落を可能な限り押しとどめつつも、価格による訴求へと切り替えることも必要でしょう。
人気エリアの流入減、広域的な家賃変動も…
なお、家賃節約の動きが加速すると、これまでの高価格帯の人気エリアに住んでいた入居者層が、その周辺エリアへと流入するようになり、広域的な家賃相場の変動が見られる可能性もあります。
人気エリアの周辺物件、あるいは”不人気エリア”の物件では、お客さん(入居者)を人気エリアに取られてしまうがゆえに、家賃を必要以上に下げていたケースが少なくないはずです。
しかし今後、人気エリアに従来ほど人が集まらない・周辺エリアへの流入が増えるとなれば、周辺エリアでは人気エリアに配慮した家賃設定が必要なくなり、物件によっては賃料の値上げも可能となるかもしれないのです。
もちろん、あくまで可能性の話であり、そううまくはいかないかもしれませんが、「不況=家賃も絶対に下がる」と決めつけてしまう必要もないのではないでしょうか。
今回のウクライナ危機で加速した物価上昇に合わせて、もしかしたら私たちの給料も急上昇するかもしれませんし(笑)、そうなれば賃貸市況も今と変わらない状態が続くはずです。
ひとつ確実なのは、一見関係ないと思われるような事件も、めぐりめぐって私たちの生活や賃貸業界に大きな影響を与えるかもしれないということ。管理物件を取り巻く状況は常に変化の中にあることを忘れず、時宜にかなった空室対策をしていきましょう。