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公開日:2019年9月11日

ペット飼育における原状回復費用はどうなる?トラブル未然防止に有効な手立て

ペット飼育における原状回復費用はどうなる?トラブル未然防止に有効な手立て
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「相談デスク」

このコーナーはベーシックサポート会員様から実際に当社へご相談いただいた内容を、解決策の一例として公開していく企画です。

ペット飼育における原状回復費用はどうなる?トラブル未然防止に有効な手立て

ペット需要が高まっている現在の日本。

今や、15歳未満の子どもの人口・約1600万人に対して、全国の犬と猫の飼育頭数は1855万頭と犬猫のほうが多い状況、ペットを飼っている世帯も3世帯に1世帯と言われています。

これに伴って、最近ではペット可の賃貸物件も増えてきましたが、同様に増加しているのが、ペットにまつわる原状回復トラブル。

「ペット不可なのにペットを飼われてボロボロ…」
「ペット可物件だけど、想像以上に傷んでいてコストが…」
「入居者に工事費を全額請求したい」

…などなど、ペットによって思わぬ損害を被ったオーナーの声も。

ペットによる損耗の原状回復は原則、どのように考えるべきなのでしょうか?

相談ダイジェスト

  • ペット不可物件の賃借人が解約となったが、退去時にペットを飼育していたことが判明。
  • 部屋の損耗も激しく、原状回復費用はけっこうな額になってしまいそう。
  • 賃借人の契約違反を理由に、修繕費の全額請求は可能か?
  • ペット「可」の物件の場合、原状回復時に気を付けることはあるか?

専門家の回答

契約違反であっても減価償却は考慮。ただし、違反時のペナルティを特約で設定することは可能。

まず、ペットNGの部屋でペットの飼育が発覚した場合の原状回復費用ですが、大原則として、契約違反の有無にかかわらず原状回復には減価償却・通常損耗が考慮されます。

1.経年による通常損耗は、貸主の負担で原状回復
2.借主の故意・過失による損耗は、借主の負担で原状回復。ただし、負担は通常損耗を上回ったぶんに限る

という考え方は、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも規定されている通り。

契約違反をしてペットを飼う、という行為は「故意」とも言い換えられるでしょう。
結果、借主が修繕費を負担するのは当然としても、負担はあくまで減価償却・通常損耗を上回った分に限られることになるのです。

「ペットが傷をつけた部分の交換費用は、契約違反をした借主に全額負担させたい!」

というオーナー様の気持ちも分かりますが、原状回復は訴訟に発展するケースも多数。思わぬしっぺ返しを食らわないためにも、費用の請求は正当性のあるものに留めるべきでしょう。

契約違反(ペット飼育)によるトラブルを未然に防ぐには?

では、契約違反による原状回復トラブルを未然に防ぐにはどのような手立てが有効でしょうか?

まず考えられるのは、契約書でのルール設定。契約の時点で特約を設けておくことが重要です。

とはいえ、「契約違反(ペット飼育等)によって汚損・破損したクロスや建具の交換はすべて賃借人の負担で行なうものとする」という条文だと、先述の通りガイドラインに反してしまいますし、支払金額が不明瞭ということで消費者契約法10条を盾に無効を訴えられかねません。

ですので、たとえば、

「クロスの交換費用として金4万円、ただし契約違反(ペット飼育等)による汚損・破損の場合は金6万円を支払う」

といった特約を設けます。

契約違反がある場合とない場合とで差を設け、(妥当な範囲で)金額を明示しておくことがポイントです。

ペット「可」物件での原状回復運用のポイントは?

「ペット可」は訴求力の高い空室対策である一方、原状回復費の貸主負担がどうしても膨らみがちです。

そのため、ペットNGでの原状回復と同様、貸主としては借主に多く負担してほしいと考える傾向にあり、その無理な請求によってトラブルが多く発生するようです。

しかし、繰り返しになりますが、原状回復ガイドラインに反するような借主の費用負担は認められません。

 

そこで検討したいのが「敷金償却・敷引き」の特約。

この特約は、「賃貸借契約の終了時に修繕費の負担問題とは関係なく、貸主が預かった敷金から一定額を控除する」ということを可能にします。西日本ではわりと一般的な商習慣ですね。

この敷金償却の考え方を導入し、ペットの飼育の有無によって敷金・敷金償却の金額を変更すれば、ペット飼育部屋の原状回復リスクを低減することが可能です。

「ペットを飼育しない場合は敷金2ヶ月償却1ヶ月。ペットを飼育する場合は敷金3ヶ月償却2ヶ月」

といったように、ペットの飼育の有無によって契約条件を変更。契約の時点で入居者に飼育の意思を確認し、修繕にかかる費用を見込んだ敷金・償却額を設定しておきましょう。

ただし、契約時は飼育の予定がなかったものの、途中からペットを飼い始めてしまう入居者も出てくるはずです。ペットの飼育が判明した場合は、その時点で追加の敷金を差し入れる、といった内容の文言も忘れずに記載しておきましょう。

 

また、原状回復時に意外と問題となるのが「ペットによる臭い」。

こちらは、「ペット可」の物件で、何も取り決めがなければ通常損耗と扱われてしまうことが多いようです。

ペット可物件といえど、次にペットが苦手な賃借人が入居するケースも考えられ、その際は消臭作業も必要になります。特約で「消臭費用として○○○○円」といった取決めもしておけると、より安心ですね。

 

冒頭で触れたとおり、ペット需要は年々高まっています。

上手に運用できれば、ペット可物件はメリット十分。「ペットを飼いたい」という入居者のニーズに応えながら、特約の明記など契約内容を熟慮し、未然にトラブルを回避する策を講じることが重要です。

※この事例は2013年7月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。


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