賃貸管理サービスを「見えるかたち」にする重要性
正しい評価を得るために。
不動産業の中でも、賃貸管理は常に多種多様なタスクに追われる慌ただしい事業です。
オーナーの要望に沿って様々な業務をこなすかたわら、入居者からのクレームに対応し、解約が出れば迅速に空室を埋め、毎月正確な集送金をおこなう…、どれをとっても期限があり、手間のかかる業務ばかりです。しかも、その盛りだくさんの業務を同時にこなしていくのですから、賃貸管理の現場スタッフの器用さ・バイタリティは相当なものです。
しかし、その業務の過酷さ、価値の高さは、正当に評価されているでしょうか?
全国各地の賃貸管理会社様をご支援させていただいていると、
「きちんと業務をこなしているのに管理離れが起きてしまう」
「入居率が少しでも悪化すると、オーナーに「管理料を払っているのに何もしてくれない」と文句を言われる」
といったお話を伺うことが少なくありません。
場合によっては、
「ふつうに管理業務を行なっているが、管理料をもらえていない」
「サービスでやっていた無償管理から有償管理に切り替えられない」
…など、そもそも賃貸管理サービスに対して対価をもらえていないケースも散見されます。
せっかくオーナーのために激務をこなしても、それを評価されない(対価がもらえない)のでは、社員のモチベーションも下がりますし、何よりビジネスとして成り立ちませんね。
こうした悩みを解消するには、まず、自分たちが行っているサービスや業務内容を、オーナーに対してしっかり表現することが必要です。
サービスを有形化する
なぜ、オーナー様に管理の苦労・管理料の意義を分かってもらえないのか。
なぜ、オーナー様に管理を任せるメリットを理解してもらえないのか。
先に答えを書いてしまうと、それは賃貸管理というサービスが、「目に見えにくい」「利用してみなければわからない」といった種類の商品だからです。
オーナー様に賃貸管理サービスを理解してもらうには、そのサービス内容を「目で見て分かるように」伝えていく必要があるのです。
具体例を挙げましょう。
たとえば皆さんは、ホテルの居室やレストランのトイレなどで「清掃カード」を見かけたことはないでしょうか。
これがサービスの有形化です。
目に見えにくい「清掃」というサービスが「カード」に有形化されたことで、私たちは「質の良い清掃サービスを受けているのだ」ということを自覚できるようになったのです。
既に、同じことを入居者に対して行なっている会社は少なくないでしょう。
「この部屋はハウスクリーニング済みです」
新規入居者に向けて玄関先やトイレにメッセージを残す戦略はだいぶ一般化しました。
では、同様の戦略をオーナー様に対しても展開していますか?
「8月3日、103号室の滞納分家賃60,000円を回収しました」
「8月6日の深夜に301号室で騒音クレームが発生し、対応しています」
「8月10日に202号室で鍵紛失トラブルが発生し、解決しました」
たとえば、日々の管理業務を「対応報告書」として月ごとに提出すること。
貴社のサービスを有形化することで、オーナー様は「質の良い管理サービスを受けていること」に気が付くのではないでしょうか。
サービスを定義する
しかしながら、管理サービスを有形化できていない多くの管理会社は、そもそも「自社の賃貸管理サービスとは」を定義できていないことがほとんどです。
どんなレストランにも大抵は「メニュー」が用意されているものです。
果たして、貴社の賃貸管理サービスは「メニュー」としてオーナー様にお見せできるようになっていますか?
オーナー様に言われるがまま、何でもかんでもやってしまっていて、いざ「おたくの管理って、どんなことをしてくれるの?」と尋ねられると困ってしまう…なんてことはありませんか?
そもそも賃貸管理料の5%の根拠は何なのでしょう。
たとえば、「カレー」はどのレストランでも700円、ということはありません。質を高めて1200円で売るところもあれば、安さを目玉に400円で売るお店もあります。さらには、サラダやスープをオプションとして用意し、辛さも自由に設定ができ、顧客が自分のニーズに合わせてサービスをカスタマイズできるお店もあります。
ところが、賃貸管理料はほとんどの企業が、入居賃料の5%です。
しかも、サービス内容は不明確。
これでは各社の特長が分からず、オーナーとしてもサービスの良し悪しの判断をつけることができません。どの管理会社を選べばいいのか、判断に迷ってしまうのです。
この問題を解決するには、自社の業務をひとつひとつ検分し、賃貸管理サービスを整理した「管理メニュー」を作らなくてはなりません。
「滞納保証は7%の管理料でなければ行わない」
「家賃集金は管理料5%から」
「3%の管理料では定期巡回は難しい」
このような判断を丁寧に繰り返し、メニューを構築していきます。
サービスと価格の関係を明確にし、目に見えるかたちに有形化して説明しなければ、オーナー様の理解を得られないのはもちろん、管理委託先を検討しているオーナー様の「比較検討企業」の中に割り込むことも難しくなるでしょう。
サービスを定義し、管理メニューを構築できたら、今度はそれをパンフレットやホームページに落とし込み、誰が見ても分かるかたちに有形化します。
目に見えるかたちにすることで、理解や納得が容易になることは、先に説明した通りです。
有形化された管理メニューを持って、オーナー様のもとへ出かけましょう。口頭であれこれ説明するよりも、はるかに説得力のある管理受託提案ができるはずです。