賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「賃貸住宅管理業法への対応」です。
リミット迫る、経過措置の猶予は残り半年
経過措置は2022年6月14日まで
こんにちは、コンサルタントの高橋です。
早いもので今年も残り1ヶ月を切りましたね。2021年は賃貸管理業界にとって大変重要な年となりました。そう、6月15日に全面施行された「賃貸住宅管理業法」です。
これまで賃貸管理業には特定の法律が存在せず、一部の不良業者によるオーナー・入居者への被害、サブリース方式での家賃保証に関する契約内容の誤認など、トラブルが後を絶ちませんでした。同法の施行により、管理業務の適正化やトラブルの未然防止、また賃貸管理会社やその従事者の社会的地位向上も期待されます。
業界にとって大いに意義のある法律ですが、一方で、法律であるがゆえに例外なく遵守が求められ、現場の我々にはそれなりの負担や義務も課されます。経過措置(移行期間)は2022年6月14日まで。実務で相談を受けることの多い項目を確認しましょう。
“業務管理者”の育成が急務
同法については、まずは皆さん「業務管理者」への関心が大きいのではないでしょうか。
各事業所に1名以上配置する必要があるうえ、業務管理者による管理・監督がない場合は新たな管理受託契約の締結もできないとあって、その配置や要件を満たせる社員の育成について皆さん不安を持っていらっしゃるようです。
業務管理者の要件は宅建士または賃貸不動産経営管理士となっている以上、まずは社員にその資格を取得してもらわなければなりません。資格取得のためのサポートや、新入社員に詳しい業務知識を教え込み、実務経験を積ませることも必要でしょう。
今年は社内から有資格者を「かき集め」て乗り切るにしても、移行期間終了後を見据えた組織体制の整備は喫緊の課題です。
また、賃貸不動産経営管理士の国家資格化を機に、有資格者の有無によって会社を評価するオーナーが増えることも予想されます。賃貸管理の専門家としての自覚を持ち、高い意欲で社員教育に取り組むことが望ましいでしょう。
定期報告で透明性のある管理を
もうひとつ、多くの会社が対応を懸念されているのが、管理業務の「定期報告」です。
報告は「管理業務の実施状況」「管理業務の対象となる賃貸住宅の入居者からの苦情の発生状況及び対応状況等」が必須条件とされており、これまで報告せずともよかった日頃の管理業務について、定期的にオーナーに提出する必要が出てきます。
家賃の収受や建物維持管理の報告については、家賃明細・巡回報告書などで対応できている会社は多いはずですが、なかなか厄介なのは「苦情の発生・対応状況」の報告です。私の知る限り、オーナーへの相談や承諾が必要になる特別な案件はともかくとして、その他の細かな案件まで報告できている管理会社はほとんどありません。
もちろん意図的に隠しているわけではなく、対応状況の報告が日々の業務とされていなかったり、そもそも対応履歴を残せていなかったり、というのが実情のようですが、業法によって報告が義務化された以上は、どれだけ忙しくとも何らかの方法で義務を果たす必要があるでしょう。
ちなみに、弊社のグループ企業であるアートアベニュー社では、現地からスマホで報告書を作成できるオンラインツール「ピトパ」を利用し、現場管理担当の業務軽減を図りながら報告を行なっています。
入居者の苦情の報告については、コールセンター「プロコール24」に入居者対応と設備・騒音・その他問い合わせ等全ての対応履歴の報告書作成を委託しているため、同社はプロコール24作成の報告書をそのまま全オーナーに配信するだけ。定期報告の手間を削減しています。
定期報告はマンパワーでやろうとすると負担が大きいため、便利ツールやアウトソーシングをうまく活用し、担当者にかかる負荷が増えすぎないよう対策する必要がありそうです。報告の増加は面倒ではあるのですが、管理業務の透明性が高まれば、自然とオーナーの信頼も得られ、自社の存在価値を高めることにつながるでしょう。
積極的な業法対応で選ばれる管理会社に
《経過措置期間終了までに整備が必要な主なもの》
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管理業者の義務について、法律だから仕方ないと消極的に動くのか、これを機にオーナーの信頼を勝ち取り他社との差別化を図ろうと積極的に動くのかは、管理会社次第です。
法制化の当時、「これで管理がしっかりできていない会社は淘汰されるだろう」と誰もが思ったはずです。
にもかかわらず、最低限の対応しかしないのであれば自社が「淘汰される側」になっていても文句は言えません。これから繁忙期に入りますが、並行して業法対応もぬかりなく進めていきましょう。