賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「管理受託の注意点」です。
せっかくの管理受託、管理会社が押さえるべき確認項目
最初の失敗は後々まで悪影響に…
こんにちは! コンサルタントの萩原です。
不動産業界15年目、賃貸仲介・賃貸管理の実務経験をもとに、現場目線のコンサルや業務改善提案、講師としてセミナー・研修の開催など、賃貸管理会社のサポートに日々取り組んでおります。
さて、昨今では全国どのエリアにおいても管理戸数拡大を目指す不動産会社が増えてきていますね。ストックビジネスである賃貸管理業は、コロナ禍のような不景気でも売上への影響が少ないため、参入企業が年々増え、業界は今や群雄割拠の時代と言っても過言ではありません。
一方で、管理事業の急拡大に経験が追い付かず、不安なまま受託手続きをしている担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこで今回のコラムでは、他社の管理物件や、オーナーが自主管理している物件等の管理受託が成功したとき、新たに引き受ける管理会社が絶対に押さえておくべき内容と、気をつけたいトラブル例をジャンル別にお伝えしていきます。
せっかくの管理受託時に対応漏れがあったり、確認不足でオーナーに迷惑をかけたりすると後々まで悪影響を残します。オーナーにも社内スタッフにも安心してもらえる抜かりのない管理受託をしていきましょう。
管理受託時のトラブル例、紹介
もう真っ青、対応漏れや確認不足が招いた失敗談
いかがでしょうか。一覧表を見られて、「こんなにやることがあるの⁉」と驚かれた方もいれば、はたまた「こんなガッツリ準備しなくてもなんとかなる」と思った方もいるかもしれませんね。実際はこうしたリストを用意していない管理会社も多いでしょう。
しかし、管理受託時のちょっとした油断が後で大きなトラブルになったりするものです。私自身も痛い思いを何度か経験してきました。引き継ぎをしくじると何が起こるのか、中には「そんなことある⁉」と思うようなエピソードもありますが、以下、対応漏れや確認不足が招いたトラブル例をいくつか紹介していきます。
1.入居者対応のトラブル
〇空室だと思ったら入居者がいた!(原因.契約書確認漏れ、現地確認不足)
入居者情報のないお部屋は空室だと思いますよね。でも鍵を開けたら「住んでました!」なんてことが。家賃は入居者からオーナーの口座に直接振り込まれていたそうで、オーナーは一体どんなお金の管理をしていたのやら。ちなみに、断りもなく勝手にお部屋のドアを開けてしまうのは不法侵入になってしまいます(反省)
〇入居者クレームでいきなり炎上!(原因.クレーム内容の共有漏れ)
ただでさえ炎上リスクの高い入居者クレーム。前の管理会社がこれまでどのような入居者対応をしてきたのか、履歴を引き継いでいないと対応方法が分からず、管理替え直後からクレームに追われることに。入居者もいい加減な扱いを受けたと思って怒りのボルテージが上がってしまいかねません。
2.お金のトラブル
〇初回家賃の入金なし、初月の家賃保証なし!(原因.保証会社・銀行手続き漏れ・遅延)
入居者に対して、新しい家賃口座の案内ができていなかったり、口座振替の手続きのし直しをお願いできていなかったりすると、当然、新管理会社側に入居者の家賃が集まらず、オーナーへの送金もできなくなってしまいます。旧管理会社に「そちらに振り込まれていませんか?」と確認するだけならまだしも、オーナーに対して「もしかして、そちらの口座に…」と確認するのは、「うちは上手くやれていません」と申告するようなもの。できる限り避けたい事態です。
また、入金確認の手続きが遅れると、初月の家賃滞納保証が対象外になることも(事故報告型の場合)。そういうときに限って入居者が滞納し、滞納連絡をする必要が出てきてしまうんですよね…。オーナー送金のミスは管理会社への不信感に直結するだけに、お金関連の手続きは最優先で進めたいところです。
〇数ヶ月も未徴収、謝罪しながら回収に!(原因.徴収内容の確認漏れ)
物件によっては家賃だけでなく、定額水道代や町会費を毎月徴収するケースが。過去に私が担当した物件もその必要があったのですが、知らずに見逃してしまい、数ヶ月も未徴収の事態に。後から入居者に支払いをお願いすることになったわけですが、非常に気まずく、手間もかかってしまいました。
〇口座登録ミスでオーナー送金、不可!(原因.家賃口座の登録ミス)
正確には「引き継ぎミス」ではありませんが、担当者が受託時にシステムに登録するオーナーの口座番号を間違えてしまい、オーナーに賃料を1円も送金できないことがありました。
悪いことに、賃料の入金日は借入金(ローン)の銀行引き落とし日でもあり、引き落としのできなかった銀行からオーナーに入電。当然、オーナーは「信用を失いかけた!」「次の融資が出なかったらどうするんだ!」と激昂、危うく会社史上最速での管理解約となるところでした…。絶対にしてはいけないミスですね!
3.物件設備の維持管理トラブル
〇エレベーター、気づいたら数年間点検なし!(原因.点検期限の確認漏れ)
貯水槽やエレベーター、消防点検など、現在どの会社が保守点検をしており、次の点検日はいつなのか、という情報も大切です。これらを引き継げていないと、気づいたときには点検期限をとっくに過ぎていた、なんてことも…。
数年間、エレベーターの保守会社が入っていないことに気づいたときは冷や汗かきました。
〇ネット環境が遮断、大炎上!(原因.公共料金系の契約忘れ)
オーナーチェンジに伴う管理受託時もトラブルが起こりがちです。特に新オーナーが「はじめての不動産投資」だったりすると要注意で、たとえば共用部の公共料金系は新オーナーが新たに契約を結びなおすことになりますが、管理会社がサポートしていないと手続きがスルッと抜けます。
私の担当した物件でも、新オーナーが「電気」の契約をし忘れたまま旧オーナーの契約が終了。結果、物件の「無料インターネット」「テレビ」「照明」等が使用不可になる事態となり、管理開始の当日から入居者の怒りの連絡が相次ぎました。
4.空室管理のトラブル
〇ずっと募集なし、オーナー怒りMAX!(原因.空室の募集忘れ)
管理変更となった時点で現管理会社は募集をストップ。しかし、新管理会社がそれに気づかず募集をしていなかったため、空室があるのに反響なし、オーナー激怒でした。当たり前の話ですね…。
空室が原因で管理替えするオーナーは多いので、募集に関する情報はしっかりと押さえておく必要があります。
〇せっかくの内見、現地キー行方不明!(原因.鍵情報の確認漏れ)
たまに現管理会社が現地キーを黙って回収してしまうことがあります。そんなときに仲介会社が案内に行って、鍵がない!内見ができない!とクレームに。
コミュニケーション不足が原因ではありますが、管理会社同士の関係がバチバチの場合、わざと情報共有しないことも。よほどひどい場合はオーナーに間に入ってもらうことも必要ですが、まずはトラブルが起きる前に解決したいところです。
【まとめ】変更手続きは管理会社の腕の見せ所
これらのトラブルは、最終的にオーナーの賃貸経営に飛び火してしまいます。ひとたび問題が起これば多大な迷惑をかけてしまいますので、担当者は気を引き締めて手続きを進めなければなりません。しかし、逆の見方をすれば、スムーズな変更手続きができればオーナーの信頼獲得の第一歩につなげられるはず。
というのも、上に挙げた保証会社移管の手続きや、保険未加入者の把握(更新時に加入させる)などはオーナー単独では難しいもの。そうした部分こそ管理会社の存在意義を見せるチャンスと言えるでしょう。
管理受託時はやることがたくさんあります。ぜひ社内で統一した対応リストを作成し、どの担当者であっても漏れのない受託手続きができるよう準備しておきましょう。
また、残念なことですが、管理受託では前の管理会社から嫌がらせを受けるケースも少なくありません。入居者からのクレームをわざと伝えなかったり、引き継ぎ作業を故意に引き延ばして新しい管理会社の仕事を滞らせたりとダメージもなかなかです。
そんな管理会社同士の関係を穏便に保ち、“ケンカ別れ”のような状態に持ち込まない姿勢も大切です。そして、引き継いだ入居者とコミュニケーションを取りながら、スムーズな管理変更を目指しましょう。受託時の対応でオーナーの信頼を勝ち取り、ゆくゆくは他のオーナーが所有する物件の管理受託や、知人の紹介などにつなげていけたら素敵ですね。
※賃貸管理のことで、質問したい、自社の課題解決について相談したい方がおりましたら萩原までお気軽にご連絡ください。