賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「効果の高い社員教育」です。
自発的に成長する社員は少数派、できる社員を育てるには?
学ぶ姿勢、社員の大半は受動的
こんにちは、コンサルタントの高橋です。
業界の繁忙期となる1月から3月は、組織全体のレベルアップを図るような取り組みがどうしても難しくなる時期ですね。それでも4月になれば社員の入社や部署異動もあり、通常業務に加えて社員教育にも目を向けなければなりません。求められる教育方法は時代によって変化し続けるため、研修もアップデートを重ねる必要があるなど、企業にとって社員教育は永遠の課題です。
実際、経営者の皆さまからも「うちの社員は知識が足りていない。その不足を補おうと自発的に学ぶこともしない」と、社員の知識不足・主体性の欠如に関するお悩みをいただくことが多々あります。
中には、「私が若い頃は、お金や時間に糸目をつけず自己投資をしたもんだ」と、社員に過去の自分とのギャップを感じている経営者様もいらっしゃいます。
お気持ちは分からなくもないですが、残念ながらすべての社員に皆さまと同じ動きができるとは限りません。そもそも、大多数が苦労する「自発的な学び」のできる人だからこそ、皆さまは世間で一握りの「経営者」という立場になられているともいえるはずです。
全社員が自発的であれば教育で悩むこともないのに…、そんな願いとは裏腹に、社員の大半は受動的で、知識量も期待値より低いものです。
それでも社員に自発性を望むのなら、どうにかしてその自発性を「育てる」しかないでしょう。
やるべきことを自ら考え、公言させる
自発的に学ぶ社員は成長速度が人一倍早く、将来の期待も膨らみます。まずは自己実現のために何を学ぶ必要があるのか自分で考えさせ、明確化させるところから始めましょう。
一般常識が足りないなら新聞を読む習慣をつける、管理業務の知識に乏しいなら1日1本eラーニング動画を視聴する、発想が足りていないなら外部の研修に参加する…、自分の未熟な部分とやるべきことを明確化させ、それをできるだけ自らの口で公言してもらいます。
少なくとも、人からやれと言われたことより、自分で公言したことの方が実行するでしょう。もし、その内容が不明確・的外れだった場合には、会社がその社員にとって必要と思われる教育・研修を提示し、社員に選択させましょう。
ただし、いくら自発性を磨くためとはいえ、その後を放置しては意味がありません。学んだ知識を現場で役立たせるには「アウトプット」が重要です。
知識を「スキル」に変えるアウトプット
2年目の社員が新入社員の教育係を担うことで、急成長を実感されたことはないでしょうか。これまで知識のインプットに専念してきた社員が、初めてアウトプットすることで、与えられた知識を自分のスキルへと変えた瞬間です。
学びをアウトプットさせることで社員の成長は強く促されます。会社全体の取り組みとして、アウトプットを習慣化させることが自発的社員育成の近道です。
例えば、外部の研修を受けた社員が《研修内容勉強会》を社内で開催することを習慣化させてみてはいかがでしょうか。勉強会のハードルが高ければ、研修内容を要約させ、メール・チャット等で共有させるだけでもいい思います。
《社員の学びをスキル化するためのアウトプット例》 研修に参加した社員は…
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ここで重要なことは、社員に「内容を要約し」「自分の言葉に置き換え」「自社でできる取り組みを考えてみる(ここでは非現実的でもよい)」というアウトプットのステップを踏ませることです。
若手社員にはまだ難しいという場合は、経営者や上層部が自ら手本を見せるのがいいでしょう。そもそも、若手だけに任せておいて「全社でのアウトプットの習慣化」など叶わないのですから。
強制も工夫次第で成果が変わる
とはいえ、人の成長には時間がかかるもの。自発性が育つまでは「強制」も一つの方法です。
私もこんな経験があります。ある日、弊社代表の藤澤がやってきてこう言いました。「このセミナーすごく興味があるんだけど、予定あって行けないから、高橋代わりに行ってきて」と。
なかなか高度な内容のセミナーでしたが、あとで社長に受講内容を伝える約束があるため、セミナー講師の話を血眼になりメモをとった記憶があります。一社員としては迷惑な話ですが(笑)、これほど集中してセミナーを受けたことはなかったかもしれません。
極端な例ですが、工夫次第では強制的なやり方でも「成果の高い教育」は可能ということです。特に短期的な視点では、こうした目的の付与やアウトプットの強制が学びの効率を高めるでしょう。
会社の成長には社員の育成が不可欠。なればこそ会社としては、各人の自発性に期待するだけでなく、あの手この手で社員の成長を誘導し、新たな取り組みや業務改革を促すことも必要ではないでしょうか。