賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「オーナーとの付き合い方」です。
ビジネス視点で「売らない人」を決める選択を
困ったオーナーに苦慮する管理会社
こんにちは、コンサルタントの高橋です。
物件購入時の資金計画がそもそも甘すぎるため、空室が出るとキャッシュフローは即赤字。老朽化して危険な共用設備の修繕費用はおろか、解約後のリフォーム代も捻出できず、募集もできない。それでも管理会社の提案には耳を傾けず、空室損は管理会社のせいだと責任を押し付け、本来オーナーが支払うべき募集にかかる経費まで管理会社に捻出させる…。
このような、まともな賃貸経営のできないオーナーがごく一部で見受けられます。オーナーは大事な顧客だ、という気持ちは大切ですが、度が過ぎると管理会社は1人のオーナーにだけ多くの時間を使ってしまい、大勢の優良なオーナーに十分なサービスを提供できなくなってしまいます。会社全体のことを考えると、ビジネスとして「売らない(付き合わない)人を決める」ことは重要な方針のひとつと言えます。
受託ルールの徹底で利益改善
とはいえ、既存のオーナーに対してお付き合いをお断りするのは容易ではありません。そうなると、せめて入口部分、つまり受託時に「売らない人」を判別したいものですが、方法はあるでしょうか。
例えば、弊社では「受託収支シミュレーション表」を作って、管理条件をどこまで妥協できるか、営業担当レベルですぐに出せるようにしています。管理料やリフォーム・修繕費用などに対して減額を要求されるケースはままあるものですが、時にはこちらが赤字になるほどの過度な条件を要求するオーナーもいらっしゃいます。
この手のオーナーは、管理開始後も色々な場面で交渉が入ることが容易に想像できますし、「厳しい要求をするオーナー」なのか、「度が過ぎた要求をするオーナー」なのか、その差を受託時に見極めておく必要があります。弊社では、シミュレーションによって後者であると判断できたなら、きちんと受託をお断りするルールです。
また、「週1でリーシング報告をしてくれ」「決まらなかったら広告料を負担してくれ」など、特別扱いを要求されるケースについても、事前にどこまで許容できるのか、よくあるイレギュラー相談のQ&Aをまとめておくべきです。
許容できない正当な理由があれば、オーナーも理解してくれるでしょうし、逆にお断りする理由が曖昧では、融通の効かない管理会社と見られてしまいます。もちろん、管理会社側も企業努力によって他社に負けない価格を提供したり、オーナーの要望に応えられる臨機応変さを備えることが必要です。
弊社も何度となく、営業としては喉から手が出るほど取りたい契約を、会社で決めたルールを遵守するべくお断りしてきました。しかし、ルールを作った前後では、明らかに業務効率が変わり、利益率も高まりました。目先の売上に走らず、売らないルールを徹底することで、既存オーナーの相談を受ける時間も増え、収支改善という結果をも得られたのです。
「優良オーナー像」は会社として定義
ただし、「売らない(付き合わない)人」を決めるにしても注意点があります。それは、判断を個人に任せないこと。社員の抱く感情一つで、良識あるオーナーが「売らない人」に認定されかねないからです。
あのオーナーは細かすぎる、感情的で怒りっぽい、自分を認めてくれない…、そんな感情のもとに「お断り」が増えては、会社の経営にも影響が出ます。「厳しい」と「理不尽」は違います。「お金にシビア」と「お金がない」は違います。個人の感情で判断されないよう、どのような相手が「会社のビジネスパートナーに相応しい」のか、できれば経営者自ら具体的な人物像(キャラ)や判断基準を示しましょう。
継続的に顧客にサービスを提供し、そのサービスを長期的に利用継続してもらうビジネス形態をリテンションモデルといいます。賃貸管理ビジネスもその一つですが、リテンションモデルの成功には「カスタマーサクセス」が必要不可欠といわれます。
カスタマーサクセスとは読んで字の如く、「顧客が成功を手にするための企業(管理会社)の取り組み」のこと。不動産投資の目的がそれぞれ異なるオーナーを、一律のサービスによって成功へと導くことはできない以上、賃貸管理会社は顧客の成功への道筋に合わせてサービス内容を調整したり、日頃からコミュニケーションをとって課題の抽出を行なう必要がありますし、当然そのためのリソース作りも必要です。
皆さんの会社は少数の「困ったオーナー」に振り回されていませんか? 多くの優良なオーナーの成功のために知恵と時間が使えるよう、「売らない人を決める」に取り組んでみるのも一案でしょう。