賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「従業員の発想と実行力」です。
活気のない社内…、原因は従業員の素質・力量にある?
「ちんたいグランプリ2022」が教えてくれたこと
こんにちは、コンサルタントの高橋です。
「あの会社は優秀な社員が多い」「うちはチャレンジする社員が少ない」そんな悩みを持つ経営者の方は数多くいらっしゃいます。社内でもっと活発にアイデアが飛び交い、それらを皆がモチベーション高く実行してくれたなら…。しかし果たして、その理想とのギャップは従業員の素質や力量だけが問題なのでしょうか。
去る10月25日、不動産賃貸仲介・管理業界の中で最も優れたプロセス・取組みを共有&表彰する「ちんたいグランプリ2022」が開催されました。全国の不動産会社から書類選考を勝ち抜いた8名が、10分という短い時間の中で自身の取組みを大勢の観客の前でプレゼンするというイベントです。
これまで「REAA不動産甲子園」という名前で5回開催してきましたが、「個人の知を業界の知に広げ、業界全体をより良くする」という目的はそのままに、今年から主催と大会名称を変更し、パワーアップして生まれ変わりました。そして私はこのイベントで、先ほどの問いかけの答えの一端を垣間見たように思います。
売上と社会双方に貢献しグランプリ
見事グランプリを獲得したのは、草薙匡寛さん(株式会社日本エイジェント/愛媛県)の「社内と顧客のグローバル化で世界に挑む」という取組みでした。
タイトルの通り、草薙さんは自身の海外経験をもとに一から国際事業部を立ち上げ、数年がかりで外国人入居者の取り込みに成功。会社への売上という貢献はもちろんですが、外国人の部屋探しの難しさ・今後日本が取り組まないといけない課題を可視化するとともに、その解決は不動産会社という立場でしかできない「社会貢献」だと訴えかける、影響力の高い内容でした。観客を惹きつける「間」をうまく使ったプレゼンも素晴らしく、堂々のグランプリ獲得でした。
「バックオフィスならでは」の仕事を評価
本大会の醍醐味は、なんといっても出場者が第一線で働く「営業」だけでなく、バックオフィスの従業員も参加していること。たとえ売上目標を持たない部署でも、会社の利益に直結する、貢献度の高い仕事をしているはずで、そういった取組みにスポットライトを当てるのも本大会の趣旨の一つです。
今回は初めて「経理部」の担当者が2名も出場され、石田鈴さん(株式会社HIROTAホールディングス/福岡県)は、控除外消費税の計算方法を見直し控除額アップを図るという、経理ならではの取組み、細山忠明さん(株式会社クラスコ/石川県)は補助金・支援金を活用した取組みと、どちらも素晴らしい発表をしてくださいました。
バックオフィスは、日々のルーティン業務を正確にこなすことが求められる守りの部門。それでもアイデアと実行力があれば、営業でなくとも会社への利益貢献が可能であることを証明してくれました。
それにしても、どちらの発表も共通しているのが「会社へ貢献したい」という気持ちの強さです。また双方とも、会社から命令があったのではなく、個人の発想から取組みをスタートさせています。出場者は皆、それぞれの企業内でも優秀な従業員であることは明白ですが、本当にそれだけでここまでの発想と実行を成せるものなのでしょうか。
従業員エンゲージメント高める工夫を
従業員が自らアイデアを生み出し実行に至れるかどうかは、優秀な人材の数ではなく「従業員エンゲージメントが高い企業」であることが第一の条件と考えます。従業員エンゲージメントとは、平たく言えば従業員の会社に対する信頼や愛着、共感など。つまりこれが高い状態とは、従業員が会社を好きで、仕事に対して誇りを強く持っている状態です。
「私も会社の目標に貢献したい」と考える従業員を増やすには、まずは心から共感できる会社の理念や社風や制度を整えるところから。これには経営者によるメッセージの発信や新制度の構築など地道な取組みが欠かせませんが、共に同じ方向を向いて成長できる仲間を一人ずつ増やしていくことが、最終的に会社の成長につながることは明白でしょう。
できるなら本コラムで出場者全員の発表を紹介したいところですが、続きはちんたいグランプリ特設サイトにて大会動画をご覧ください。各社の取組みを自社に取り入れてみるのも、多忙な中で練習を重ねた熱量の高いプレゼンに注目してみるのもいいと思います。
そしてせっかくなら、従業員の取組みを表彰する社内グランプリもスモールスタートで始めてみてはいかがでしょうか。きっと従業員エンゲージメントを高めることにつながるはずです。