賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「社内トス上げ制度」です。
売上アップを叶える「トス上げ」、成功のコツを解説
トップダウンで社員にやらせるだけでは不十分
こんにちは、コンサルタントの高橋です。
以前のコラムで、弊社が管理受託営業の一環として行なっている「トス上げ制度」をご紹介しました。あれから2年が経過し、一定の成果とともに次の課題も見えてきましたので、ここで一度その要点をまとめてみたいと思います。
そもそも弊社の〝トス上げ〟とは、管理受託や売買の担当ではない者が、営業担当者に案件を紹介する(アタックのためのトスを上げる)ことを指します。全社的に営業目線で業務に臨むことで会社の営業数字を高めようという取り組みのひとつで、具体的には、空室募集や現場管理を担当するオーナー担当が、オーナーと会った際に何気なく資産背景や将来のことをヒアリングし、査定の依頼をいただいたり、次回の面談で営業担当を同席させたりして、管理受託や売買につなげるといった動きです。
しかし、オーナー担当は普段の業務で手一杯になりがちで、ただトップダウン的に「やらせる」だけでは全体がうまく機能しません。制度を浸透させ成功させるには、①担当者の知識、②トス上げに対する評価、③提案できる余力(余裕)が必要です。
トス上げ年間41件、成約は全体の3割に
では、肝心の成果から。昨年1年間の管理受託のトスは41件、そのうち成約に至った案件は24件(成約率58.5%)、案件の内訳は表1の通りとなりました。
表1:管理受託担当者以外からの受託案件トス内訳(2022年)
多くは「既存管理オーナーからの管理受託」で、別の管理会社に任せている物件や、購入検討中の物件の査定依頼が多くありました。また、年間の受託案件のうち、トス上げ案件は約3割という結果に。昨今、土地や建築費が高騰し、建築施工業者からの新築物件の紹介も減っている中で、管理オーナーからの紹介獲得はとても重要です。
ちなみに、受託担当者が営業リソースを新規開拓に注力できるようになることもトス上げの利点です。これまで付き合いのない業者との関係性を深めたり、新規オーナー獲得のためのセミナー開催とその集客方法に工夫を凝らすなど、質の高い営業に特化できるようになりました。
トスができているのはベテラン社員中心
一方で、課題も浮き彫りとなりました。昨年の管理受託トス上げ41件は、計13人の社員によって行われたものですが、入社年数の内訳では、入社5年以上の社員が7割、5年未満は3割。役職別にみても主任以上が7割、一般社員が3割という結果でした。
つまり、トスはある程度のベテラン社員が中心で、若手や経験の浅い社員はあまりトスを上げられていないのです。オーナー担当者は半年あたり4件のトス上げ目標(管理受託・売買の合算)を設定していますが、多くの社員はそもそも1件も紹介できていないのが現状。若手には荷が重いのでは?という意見もいただきますが、当社の担当者には賃貸経営のコンサルタントとしてオーナーと接するよう意識づけしているため、ベテラン・若手の垣根なく一定レベル以上の会話と、ご相談をいただけるようなコミュニケーションを求めています。
若い社員でもトス上げできる体制を築くには?
経験年数や入社年数が若い社員がトス上げに至らない原因は何か。
ひとつはオーナーとのコミュニケーション不足でしょう。近年はメールやアプリで連絡ができて便利ですが、どうしても「生の会話」は少なくなります。効率はいったん度外視して、面談や電話を中心に接触回数を増やせると解決につながりそうです。合わせて、担当者が顧客管理システム(弊社ではSalesforceを利用)に活動・会話の履歴をしっかり残し、新任の担当者も、オーナーと会う前に情報をきちんと吸い上げておけると、ヒアリングがやり易くなり、トス上げも叶うと考えています。
原因ふたつ目は、冒頭で挙げた「知識」の不足です。知識不足は自信不足につながり、その自信の無さが話を広げることを躊躇させてしまいます(私自身も若い頃は売買の話を極力避けていましたが笑)。これだけはいくら場数を踏んでも改善しにくく、社内での教育が必要です。
弊社では不動産投資・売買・相続など賃貸経営に関わる全般の知識を得るための勉強会を定期的に開催しています。若い社員がアウトプットできるようになるまで時間もかかりますが、若いうちからその知識に触れておくことが重要と考えます。
そして、意外と忘れがちなのが、自社の管理サービスの知識。サービスの範囲や内容はどうなっているか、他社とどう違うのかなどを理解していないと、管理受託のトス上げはなかなか難しいものです。管理委託契約書を読み解く勉強会を実施するなど、トス上げ増加のためには地道な取り組みも欠かせないようです。