コンサルタントコラム

公開日:2023年8月16日

【コラム】「賃貸住宅メンテナンス主任者認定制度」解説。資格取得で差別化のチャンス

【コラム】「賃貸住宅メンテナンス主任者認定制度」解説。資格取得で差別化のチャンス
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賃貸管理の可能性に、挑む。

当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「賃貸住宅メンテナンス主任者認定制度」です。

賃貸住宅メンテナンス主任者認定制度が11月スタート

資格取得で「初診診断」できる人材育成が目標

こんにちは、コンサルタントの金井です。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会(以下、日管協)が、賃貸管理に関する新たな資格として「賃貸住宅メンテナンス主任者認定制度」を2023年11月に創設すると発表しました。

日管協によると、賃貸住宅メンテナンス主任者制度では、建物・設備の基礎知識や修繕方法など、資格取得を通して賃貸管理の現場で使えるハード面の基礎知識を習得。オーナーや入居者から建物の維持保全に関する問い合わせに対して初診診断(一次対応)ができ、関係各所につなげられるような人材育成を資格創設の目標としています。

確かに、管理会社のスタッフが建物・設備の基本を知らなければ、管理業務のあちらこちらで問題が起こりますよね。例えば、入居者から水漏れの問い合わせがあったとき、スタッフがどのような水漏れが起きているのか基本的な判断すらできないとなると、急ぐ必要のない状況でも業者を緊急手配してしまって無駄な出張費がかかってしまう…、といったケースも起こるでしょう。

一方、スタッフに建物の知識があれば、どの箇所でどのように漏水しているのか? 雨漏りか? 上階の溢水か? 配管か? など、さまざまな可能性を想像しながらの細かいヒアリングが可能になります。賃貸住宅メンテナンス主任者制度で有資格者が増えれば、それだけ正確な初動対応にもつながりやすくなり、スムーズな入居者対応が期待できそうです。

また、そうした入居者対応の改善以外にも、講習で建物メンテナンスの知見を深めることは建物の維持保全にも役立ちます。日管協も強調しているところですが、建物・設備の事故を未然に防ぐリスクマネジメントの点でも、この資格には意義があると言えるでしょう。

「建物の維持保全」が管理会社の一大使命に

そんな賃貸住宅メンテナンス主任者認定制度ですが、資格創設の背景には、2021年に施行された賃貸住宅管理業法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)があります。
同法によって賃貸管理業が、①賃貸住宅の維持保全、②賃料等の金銭管理(①の受託と合わせて)と明確に定義されたわけですが、それにより管理会社にとって「建物の維持保全」の重要性が増加。建物メンテナンスの能力が否応なしに求められるようになりました。

加えて、多くの賃貸管理会社は、スタッフの建物維持保全スキルの不足という悩みを抱えています。
私もコンサルタントの立場から全国の管理会社と話をする機会がありますが、ハード面の業務を苦手とするスタッフは確かに多い印象です。
もともと賃貸管理は、仲介業の補足的に集金や入居者募集、書類管理等を代行するなかで発展してきたこともあり、空室対策やクレーム対応には自信があっても、建築構造や工法、修繕、長期修繕計画といったハード面のこととなると耳が痛い、という会社は少なくないのです。
そのため、資格という形で建物・設備に関する基本的な知識を体系的に学べる賃貸住宅メンテナンス主任者認定制度は、業界に身を置く多くのスタッフにとって弱点克服の良い機会になりそうです。

資格取得のメリット、会社全体のレベルアップにも

そんな賃貸管理業界の現状を鑑み、創設されることになった賃貸住宅メンテナンス主任者認定制度ですが、実際に資格を取得することで次のようなメリットが期待されています。

  • 賃貸借契約や入居者対応といったソフト面だけでなく、ハード面の知見が広がることで、不動産オーナーに対する経営支援の幅が広がる。
  • 建物の修繕費や運営費などの算出ができるようになり、数字を使った提案ができるようになる。
  • 建物・設備についてオーナーから質問があった際、すぐに回答できるようになり信頼度アップに役立つ。

また、日管協では実務経験者のスキルアップだけでなく、新入社員向けの研修ツールとしての活用も想定しています。宅地建物取引士、沈滞不動産経営管理士といった資格とともに、早いうちから若手に取得してもらうことで会社全体のレベルアップにつながるかもしれません。

資格の学習内容・教材について

賃貸住宅メンテナンス主任者認定制度では、主に次のような学習内容が予定されています。

●建物と設備の基礎知識
建築工法、基礎工法、防水工法、外装材、内装材、給排水設備、電気・ガス・給湯設備、換気設備、共用設備など。建物の構造や工法、劣化の進行などの知識を身につけ、修繕対応等に役立てる。

●修繕対応の基礎知識
給排水設備の修繕対応、ガス・電気設備の修繕対応、雨漏りの修繕対応など。設備系トラブルの中でもよく起こる修繕対応をピックアップ。

●専門会社に依頼する業務の基礎知識
消防設備の基礎知識、外部改修工事の基礎知識など。依頼内容について基本的な理解を深めることで、発注がより効果的に。

●巡回点検業務のチェックポイント
建物トラブルの予防やオーナーとの信頼関係構築に重要。

●法令点検とコンプライアンス
賃貸管理でスタッフが最低限知っておくべき法律関係を学習。

日管協によると、上記の学習内容を網羅したテキストや、いつでも視聴可能な講習動画を制作し、受講者が自由に学べる学習環境を提供するとしています。講習は会場開催ではなくWEB講習となる予定で、遠隔地の受講者でも無理なく学ぶことができそうです。

試験内容・試験料について

初回試験の日時と講習スケジュールは今のところ未定ですが(2023年8月8日時点)、試験はIBT方式(受験者のパソコン・インターネット環境を利用したオンライン試験)が予定されています。試験内容は正誤式100問で、試験時間は120分。試験料は1万円程度となる見通しです。

日管協では、賃貸住宅メンテナンス主任者認定制度の専用ホームページを8月中旬にも開設予定ですので、試験の詳細はぜひこちらを確認してください。

新資格は差別化のチャンス!

賃貸住宅管理業法の登場に続き、賃貸住宅メンテナンス主任者認定制度の創設で賃貸管理サービスの質がますます問われる時代となってきました。賃貸不動産経営管理士の国家資格化と同様に、新しい資格に対する会社の姿勢は、長い目で見れば不動産オーナーへのサービスの質にも直結するでしょう。また、注目を集める資格だけに、資格取得率によってはオーナーへの新たなアピールポイントにもなるはずです。

ちなみに、全国賃貸住宅新聞社の運営するオンラインメディアサイト「賃貸トレンド」の特集の中では、日管協の塩見紀昭会長が資格取得について、「全社員に取ってほしいです。建物メンテナンスに従事していない方にもメリットのある資格だと思います」といった旨の発言をされていました。

もちろん、忙しい管理業務の中で社員の資格取得を推し進めることは簡単ではありませんが、一方で競合他社と差別化を図るチャンスでもあります。11月のスタートに合わせて、会社として社員の資格取得を積極的に応援してみてもいいかもしれません。


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