入居者にとっての当たり前設備「室内洗濯機置き場」
オーナーを説得する3つのポイント
オーナー提案のトークに役立つ小ネタ集「空室対策100選コラム」
今回、注目する空室対策は「室内洗濯機置き場」です。
賃料帯の低い物件でも、全国的に洗濯機置き場が室内にあることを求められるのは当然の時代となりました。しかし、いざオーナーに「洗濯機置き場を室内に変えませんか?」と提案しようにも、ネックとなるのは設置費用。工事内容にもよりますが、室内化には戸当たりで概ね25万円からが相場となってきます。決して安くはなく、オーナーの承諾を取りつけるのも一筋縄ではいかないでしょう。
また、室内洗濯機置き場に変えただけで入居率が劇的に変わるわけでもありません。わざわざ出費を増やさなくても賃料を数千円下げれば決まるだろう、もっと他に安上りな空室対策があるに違いない…、そのように考えるオーナーも少なくないはずです。
とはいえ、洗濯機置き場が室外にあるとそれだけで入居付けが厳しくなるのもまた事実です。そこで、出費を渋るオーナーに対して、次の3つのポイントから納得感を引き出してみるのはいかがでしょうか。
①ポータルサイト等で募集の現実を伝える |
①ポータルサイト等で募集の現実を伝える
ひとつ目のポイントは、競合物件の動向が分かるデータをオーナーに示し、募集の現実をお伝えすることです。
具体的な方法としては、ポータルサイトを使った競合調査や、SUUMOが公開している「賃料・設備相場チェッカー」が手軽でオススメ。特に賃料・設備相場チェッカーでは、WEBの入力欄に対象エリア・建物種別・間取りを設定することで、特定エリアの賃料相場や、室内洗濯機置き場をはじめとする設備の設置率・人気度をすぐに調べられます。
同じエリア・同じ賃料帯でどのような物件が募集を出しているのか。市場の現実をオーナーに直接見てもらい、“室外”洗濯機置き場が少数派で競争に不利であることが伝われば、提案時の納得感もより得られやすくなるかもしれません。
②人気設備ランキングの調査結果を示す
競合物件との比較とあわせて、設備ランキングの調査結果も提案時のエビデンスとして示すこともポイントのひとつです。
例えば、2022年に全国賃貸住宅新聞が実施した「この設備がなければ入居が決まらないランキング(単身)」を見ると、室内洗濯機置き場は6年連続の1位を記録しています。さらに、不動産ポータルサイトLIFULL HOME’Sが同年に実施した調査でも、サイト利用者が選ぶ部屋探しの絶対条件ランキングで首都圏4位、近畿圏3位という結果でした。
こうしたランキング結果をもとに、実家で室内洗濯機置き場が当たり前だった若者世代にとって室外への設置自体が考えられないこと、そうした若者たちが今の入居者のボリュームゾーンを占めていることなどを伝え、提案の後押しとしてみてください。
③設置費用と長期空室損を比較する
室内化にかかる費用と長期空室損とを比べることもオーナーの説得材料のひとつとなるでしょう。
仮に室内洗濯機置き場の設置によって3,000~5,000円の賃料値下げをせずに済んだとすると、設置費用の25万円は4~7年で回収できる計算となります。5年後に売却するでもなく、この先10年、15年と賃貸経営を継続するつもりがあるオーナーならば、費用改修後の訴求力維持にもつながる洗濯機置き場設置は、悪くない選択です。
一方、室内洗濯機置き場にしなかった場合、空室期間の長期化が予想されます。工事をすれば3ヶ月程度で入居が決まるところを6ヶ月~1年もかかってしまった…という事態も考えられるでしょう。
加えて、募集強化のために賃貸仲介会社に支払うADが増える恐れもあります。そうなると、もし賃料5万円・AD300だった場合、募集が3ヶ月長引くだけで30万円の損失となります。設置費用を渋るオーナーに対しては、室内化をしないことで空室が長引いた場合のリスクもしっかりとお伝えしていきましょう。
もちろん、室内洗濯機置き場を設置しただけで入居率が劇的に変わるわけではありません。他にも空室対策はありますし、最低賃料帯で募集・経営を継続するのも手です。
しかし、洗濯機置き場を室外のままにしておくと、それだけで若者や女性の入居は遠ざかります。そのうえ、相場よりも低い賃料帯だと入居者属性が悪くなる恐れもあり、生活のしづらさから短期解約につながるケースもあるでしょう。そうした募集時の金額には現れないデメリットについても考慮したうえで、室内洗濯機置き場の是非についてオーナーと話し合ってみてください。
設置場所は募集に差し支えないスペースに
室内洗濯機置き場の設置場所は、脱衣所やバスルーム近辺といった入居者の家事動線に配慮した位置が理想です。ただし、設置には給水・排水・電気の3条件を備えるスペースを確保する必要があります。追加の排水工事や電気工事をする予算がない場合には、脱衣所等ではなく、収納をつぶしての設置や、玄関周りでの設置など、生活動線から外れた位置に洗濯機置き場を設置せざるを得ないケースも出てくるでしょう。
とはいえ、居室のど真ん中やキッチンシンクのすぐ隣など、募集に悪影響が出そうなところへの設置はせめて避けたいところです。忘れてはならないのは、室内洗濯機置き場の設置はあくまで入居率の改善のため。管理会社として、しっかりと「決まる部屋」にするためのアドバイスをしていきましょう。