空室対策100選コラム

公開日:2025年2月17日

空室対策「防音設備」解説。騒音対策のカギは“補助金”の賢い活用

空室対策「防音設備」解説。騒音対策のカギは“補助金”の賢い活用
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「防音」で退去防止と空室対策を

騒音に悩まされる入居者と
対応に追われるオーナー

オーナー提案のトークに役立つ小ネタ集「空室対策100選コラム」

今回、注目する空室対策は「防音設備」です。

賃貸物件に入居後、早期退去の理由として最も多い問題は「騒音」です。

CHINTAIが2024年9月20日~9月26日に過去賃貸物件に引っ越しをしたことがある全国20~50代の男女に行ったアンケート調査によると、賃貸物件入居後に「後悔した…」と答えた人は57・2%。

早期退去の経験についても、5人に1人が「経験がある」と答えました。

その中でも一番の原因はやはり「騒音」。内見時には気付かなかったものの、入居後に「騒音」の問題が発覚するというケースが多く、これが退去の決め手となることがよくあります。

騒音問題はクレームや近隣トラブルに発展し、最終的に退去を招き、この結果空室が発生する……と、オーナーにとっては頭の痛い問題です。

音を抑えるには? 基本知識をおさらい

一口に「防音工事」といっても、音を防ぐ方法には「遮音」「吸音」「防振」「制振」などがあります。

遮音は、空気音を遮断し外へ音が通り抜けないようにする方法。コンクリートや石膏、鉄板などの重たい素材が用いられます。

吸音は、発せられた音を吸収することで、室外へ音が通り抜けたり室内で反射したりすることを防ぐ方法。音楽スタジオやホールなどで用いられるグラスウール、ウレタンフォーム、ハードファイバーボード、穴あき石膏ボードなどを使うことで、外に音が通り抜けることを防ぎます。

防振は、対象の物体を防振材で支えることで、振動の伝達を小さくし、音を伝えないようにします。床や壁などに高密度の多孔質材料や防振ゴムなどを用いた防振マットを設置することで、音漏れを防ぎます。

制振は、振動を短時間で止めて音の発生自体を抑える方法。制震シートやゴムシートなどを、振動するものに直接貼り付けることで振動を抑えます。エアコンや洗濯機の鉄板部分に貼ることで、振動音を抑える効果が期待できます。

入居者が「騒音」と判断する音の種類は、建物や環境によって大きく変わります。騒音問題の解決時には、音の種類を正しく見極め、最適な工事を実施することが重要です。

補助金の利用
防音にこだわらず「断熱化」をキーワードに

まず、外部の音を防ぐためにできる対策として一般的に知られているのは、窓を「二重サッシ」にすること。

ガラスとガラスの間に空気層を作ることで、外の音は家の中に入ってくることを防ぎます。外部の音だけでなく、室内から外に出る音も抑えられます。サッシの隙間も音が漏れる原因になるので、そこにも気を使って防音効果を高めましょう。

さらに、窓以外の箇所の遮音改修をするのであれば、床や壁、天井に遮音材や吸音材を入れて、音の伝わりを抑える等の対策を実施することになります。

ただ、窓・壁・ドア・天井・床と、場所ごとにリフォームを実施しそれが物件の全体改修ともなれば、リフォーム費用は少なくとも数百万円から見積もる必要があります。オーナーに「騒音の低減」という理由だけで提案するには難しい金額、というのが現場の実感値でしょう。

では、少し発想を変えてみましょう。

・内窓を立てるなどの方法で窓を二重にする。

・壁や天井の内部に吸音性の高い建材を追加で充填する。

この2つの工事、防音工事とは別の場所で見たことがないでしょうか?

そう、「断熱工事」です。

防音工事のみを目的にすると、こうした工事の費用回収は非常に難しいものとなりますが、主目的を断熱工事に置き換えて、副次的効果を狙い防音性能の向上を目指すとなれば、補助金の利用という選択肢も見えてきます。

昨今、政府や自治体は住宅の断熱・省エネ化を強く推進しており、補助金制度も充実しています。

これらを活用し、“断熱性能も防音性能も高い住宅”へと改修を図れば、施工費用の補助を受けながら、早期退去の防止だけに留まらない、集客力向上や賃料上昇の効果も期待できる工事を実施できるのではないでしょうか。

「住宅省エネキャンペーン2025」補助金活用

国土交通省・経済産業省・環境省の3省連携事業「住宅省エネキャンペーン」が2025年も行われます。

この中の「先進的窓リノベ2025事業」の支援制度を用いて高断熱窓の設置工事(内窓設置・外窓交換・ガラス交換など)を行うと、リフォーム内容に応じた額が補助されます。補助率は2分の1で、上限は1戸につき200万円。

断熱と防音が期待できる高機能なサッシを交換・設置するのにかかる費用は、1カ所につきおよそ10~30万円。

補助金を使えば、この費用が上限200万円まで半額で行えます。

さらに、「子育てグリーン住宅支援事業」では、①開口部の断熱改修②躯体の断熱改修③エコ住宅設備の設置……などを行うと、①②③全てを実施すれば1戸につき上限60万円まで、①~③のいずれか2つを実施すれば1戸につき上限40万円まで補助を受けられます。

投資した額を回収できるかを悩むオーナーは多いはず。補助金や制度を活用することを進言し、オーナーに寄り添った提案を行いましょう。

運用面での工夫
管理会社の立場からサポートを

では、「改修はやはり難しい…」と悩んでいるオーナーさんに、管理会社は何を提案できるでしょうか。

騒音トラブルの内容で最も多いのが、「子供の足音」。振動による音は思ったよりも階下の住人へ大きく聞こえてしまうものです。

管理会社としては、子育て世帯へ防振・防音マットを敷いてもらえるようにお願いをしたり、階下の入居者へ理解を求めたりなど、ソフト面でのサポートが必要となるでしょう。

生活音のトラブルを防ぐには、入居者同士の「お互い様」と思える関係作りが重要となってきます。賃貸住宅という枠組みである以上、管理会社による物件運用上での頑張りが欠かせませんね。

建物の改修というハード面、住民同士の相互理解というソフト面の両面からオーナーとともに物件運営を支えていきましょう。

一般社団法人住宅改良開発公社調べ 「2020年『賃貸住宅市場の動向と 将来予測(展望)調査』」(国土交通省住宅局『賃貸住宅の断熱性向上や遮音対策のための大家向けガイドブック』より)

簡易防音室の設置
付加価値アップできるかも?

窓・壁・天井・床などに手を加えることが難しいのであれば、いっそのこと住戸へ簡易防音室を設置するのも一つの手です。

テレワークの需要が高まり、Web会議に集中できる環境を求める入居者も増えていることから、「ある程度話し声や音を出しても迷惑が掛からない部屋」に人気が集まっています。

簡易防音室は、工事不要のものであれば10~20万円ほどで設置可能なので、予算に余裕があるオーナーさんであれば提案してみるのも面白いかもしれません。


求められるレベルが上がる時代、
防音設備を整える最後のチャンスかも

全面で断熱改修を行った鉄骨造物件の改修費は、およそ400~500万円(築40年、2階建て全6戸)。工事期間は少なくとも2か月以上を見積もりましょう。

そして、2025年4月には建築基準法が改正され、住宅建築物が適合しなければならない「省エネ基準」が、これまで最高等級だった「断熱等性能等級4」と「一次エネルギー消費量等級4」が最低等級となり、すべての住宅と小規模の非住宅で適合義務が課せられます。

つまり、今まで断熱・遮音性に優れているとされた新築物件の水準が「基準」となる世界がやってきます。

防音性において、競合物件との差別化をはかる最後のチャンスかもしれません。

費用に余裕があるオーナーさんには、工事実施の後押しとして子育てグリーン住宅支援事業など、断熱目的の二重窓の設置に対する補助金・助成金が利用できると伝えるのもアリ。

前項のとおり、二重窓には防音効果も期待できるので、一石二鳥ですね。
採用に踏み切れないオーナーさんには、国の助成金や自治体の補助金などで工事費用の負担を軽くするなど、コスト面・回収期間・採算性も含めた柔軟な提案をしてみてください。


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●「防音設備」の掲載ページ(サンプル)


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