「統一感」を大切に、垢ぬけた印象の物件へ
外観の傷みで入居断念も? 外壁塗装時にエントランスリノベ提案
オーナー提案のトークに役立つ小ネタ集「空室対策100選コラム」
今回、注目する空室対策は「エントランスリノベーション」です。
新築物件や築浅物件に人気が集まる一方で、「リノベーションしてきれいになっているなら、築30年でも40年でも構わない」という声は少なくありません。ありがたい話ではありますが、この言葉をそのまま受け取るのは注意が必要です。
21C.住環境研究会(※1)と株式会社リクルートが共同で実施した「第10回 首都圏賃貸住宅市場における入居者ニーズと意識調査2024~2025年」(※2)によると、過去に部屋探しで「管理状況を確認したうえで、借りるのを断念した」経験のある賃貸入居者が、その理由として最も多く挙げたのが「外観の傷み具合」。内装がどれほどきれいでも、外観が古びていると入居検討の段階で敬遠されてしまう可能性があります。
入居希望者にとっては、「築年数が何年でも構わない」のではなく、「見た目がきれいであれば築年数は気にならない」というのが本音。剥がれかけたタイルやひび割れた壁が目につくと、それだけで内見前にUターンされてしまうこともあります。
となると、管理会社としてオーナーに早急に提案すべきは「外壁塗装」となりますが、これに合わせて「エントランスリノベーション」を提案するのも一手です。
建設当時のデザインを引きずった古い印象のエントランスを、外壁の新しい色味に合わせて刷新することで、建物の第一印象を一気に垢抜けたものへと変えるのです。
内見者の「第一印象」は、建物全体を視界にとらえた瞬間に始まっています。真っ先に目に触れるところに絞ってリノベーションすることで、最小限の費用で最大限の効果を生むことができる施策です。
(※1)首都圏の不動産管理会社によって組成される組織
(※2)21C.住環境研究会とSUUMO(株式会社リクルート)の共同調査2024~2025年」
内装リノべVS外装リノべ 効果はいかほど?
エントランスをリノベーションすると聞いて、「そうは言っても、室内をリノベーションするより効果が出るの?」と訝しむオーナー様もいることでしょう。
共用部投資はどうしてもコストが高くなることが多いため、費用が小さく変化の分かりやすい各室のテコ入れのほうが魅力的に見えがちです。しかし共用部投資は、建物の居室すべてに対して魅力改善の効果が波及するという特長があり、決して利回りの悪い投資ではありません。
また、エントランスリノベーションは、100~300万円程度のコストで第一印象の大幅な改善がなされ、物件全体の魅力を底上げする効果が期待できる施策です。
シミュレーションをしてみましょう。
想定するのは全20戸・家賃8万円のマンション。現在の稼働率90%(平均18戸入居)を改善するべく、外壁塗装にあわせてエントランスリノベーションを行い、工事費は外壁塗装とは別に300万円かかったとします。
このリノベによって、稼働率が5%改善(平均19戸入居)したとすると、年間の賃料収入は1戸分の空室解消によって8万円×1戸×12ヶ月で96万円の増加。仮にNOI率が80%とすれば、手元には76.8万円が残ることになり、初期投資の300万円の利回りは25.6%。工事費を4年弱で回収できる計算となります。
| ■稼働率5%改善時(20戸・家賃8万円・工事費300万円) 一年の収入増:8万円×1戸(5%UP)×12ヶ月=96万円 経費を引いた額:96万円×NOI率80%=76.8万円 利回り:76.8万円÷初期投資(工事費)300万円×100=25.6% 工事費回収にかかる最短年数:300万円÷76.8万円=約4年 |
また、美観改善によって物件の“格”が上がり、各室の賃料を2,000円ずつ上げられたとしたら、2,000円×20戸×95%×12ヶ月=最大45.6万円の増収も見込むことができ、投資効率はさらに高まることになります。
一方、空室1戸を150万円かけてリノベーションし、8万円ではなく10万円で貸せるようになったとすると、その利回りは2万円×12ヶ月×NOI率80%÷150万円=12.8%。決して悪くない数字ですが、このケースでは外観への投資に分があることになります。
もちろん、実際の稼働率は様々な要因によって変動しますし、物件が変われば各室の賃料・工事費・賃料上昇分も異なるため、必ずこのシミュレーション通りになるわけではありません。
しかし、「外観や共用部の印象改善で空室が埋まる」ケースは十分に想定できるものであり、市場や施工内容によっては、建物全体に効果が波及する外観のリノベーションによって、内装リノベーションより投資効率を高くできる場合もあるのです。
年代を感じさせない現代的なデザインで印象改善
しかし、“エントランス”を“リノベーション”するといっても、具体的にはどのような工事をすれば良いのでしょうか。企画時に検討すべき工事箇所と、施工時のポイントを確認しましょう。

①エントランスの外壁や床面
エントランスを一新するなら、まずは周辺部の壁や床の刷新から。第一段階として外壁塗装にトーンを合わせるのか、敢えてアクセントをつけるのかで方向性を決めることになりますが、どちらにせよ物件の第一印象の大半を担う場所と心得て、建物を視界に入れた瞬間から建物内に足を踏み入れるまでのワクワク感を演出したいものです。
具体的には、壁は塗装の塗り分けを基本に、タイル材・化粧パネルの施工、木材やメタルのルーバーの採用など。アプローチやポーチの床はタイルの交換や舗装材の施工などが候補ですが、大幅な変更は工期・費用に跳ね返るためオーナーの予算と要相談です。
②館銘板
せっかくエントランスまわりの壁を一新しても、そこに取り付けられた館銘板が古いままでは悪目立ちしてしまいます。リノベーションのテーマに合わせて、素材やフォント等から見直すことを提案しましょう。
館銘板は、アクリル、ステンレス、天然石、鋳物などの土台に物件名を印字するプレートタイプや、金属等に印字した物件名を切り出す切文字タイプが王道。また昨今は、両タイプにLEDの照明を組み合わせる方法も人気で、ぜひ取り入れたい装飾です。
ただし館銘板は、サイズや設置箇所、加工方法などによってコストが大きく変わるため、予算に対して費用が膨らみ過ぎないよう注意しましょう。
③内装(壁紙・天井・床)
「外観はきれいなのに、中に入ったら薄暗くて古臭いまま…」はかなりのマイナスポイント。エントランス内部は明るさを意識したうえで、天井・壁・床の貼り替えを行いましょう。
費用を抑えるコツは、天井・壁・床のうちのどれかひとつでも、既存の素材を活かせないか考えながら企画を練ること。また、後述する「照明」や、設置する調度品・グリーン(フェイクも可)の効果に頼る意識も重要です。
④照明の見直し
照明は、設置する器具のデザインはもちろんのこと、その配置や照度、光の色味を変えることで空間の印象を一変できる要素です。
エントランス周りでは、主にアプローチ、ポーチ、エントランス内部の照明器具が見直しの対象となりますが、例えばエントランス内のメールボックス付近は、郵便物を確認しやすいよう暗くし過ぎないなど、雰囲気作りと快適性の両面から照明計画を考えましょう。
また、アップライト、ダウンライト、ブラケットライトなどの間接照明等を配置すれば、空間の奥行きと高級感を演出できます。
⑤扉枠やガラス扉
扉の形には案外年代が出やすいもの。この古臭さを払しょくするには、扉枠に化粧シートを貼る、ハンドルを交換する、ガラス扉をスモーク仕様や木目調デザインに変更するなど多様な方法があります。
もちろん、スチールドアへの変更・手動から自動ドアに変更など、ドアそのものを交換してしまうこともできますが、費用が一気に膨らむため、できるだけ小技でカバーすることをお勧めします。
⑥共用設備のアップグレード
外観は新しくなったのにメールボックスや掲示板が古いままでは、そのギャップからちぐはぐ感が生まれてしまいます。
劣化が目立つ場合はオーナーに交換を提案するとともに、防犯性の高い製品へのグレードアップや、人気の高い「宅配ボックス一体型」の導入による差別化の提案なども検討しましょう。
⑦庇周りの意匠変更
庇部分も建築当時の「時代」を反映していることの多い部分です。館銘板を兼ねていることも多く、あまりにも古臭さを感じる意匠の場合には、費用はかかりますが刷新工事の検討を。既存の庇の形を生かしながら、アイアンワークやモールディングを施すなどの工夫も有効です。
ただ、庇部分の増改築は建築基準法の制限を受ける可能性があるため、専門家と共に確認しましょう。
⑧植栽・外構まわり
外構周りに植栽を配置したり、植木などを置いて緑を取り入れることで、無機質になりがちなエントランスに温かみをプラスできます。
ただし、植栽を植えるのであればメンテナンスはつきもの。剪定や落葉などに気を配らなければならないため、品種選びは物件周りの環境などを考慮する必要があります。
無事にリノベーションが終われば、ポータルサイトの募集ページへ新たな外観の写真を掲載することもお忘れなく。築年が近い競合物件と差別化されてサイト閲覧者の目に留まりやすくなり、反響数・問い合わせ数に大きな差が生まれるはずです。
必ず通る・真っ先に見る場所をピンポイントで改善

内見時はもちろん、入居後も必ず通ることになる「エントランス」のリノベーション。
内見者の目に真っ先に触れる部分であり、また入居後の毎日の暮らしに不可欠な設備であるため、この場所に的を絞った美観の改善は、最小限の費用で最大限の効果を生み出します。
しかも、その費用対効果はリノベーション工事を外壁塗装とセットで行なうことでさらに高まります。そろそろ外壁塗装の必要な物件に心当たりのある方は、是非オーナー様に外壁塗装とあわせてエントランスリノベーションを提案してみましょう。
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