「相談デスク」
このコーナーはベーシックサポート会員様から実際に当社へご相談いただいた内容を、解決策の一例として公開していく企画です。
駐車場でイタズラ発生! オーナーには防犯カメラの設置義務がある?
いよいよ4月。長かった引っ越しシーズンも終わり、入居者募集の忙しさも一段落ですね。
しかし「管理」という観点からすると、慌ただしくなるのはむしろこれから。なにせしばらくは、新入生や新社会人をはじめ、環境が大きく変化した方々がトラブルに見舞われる季節だからです。
そしてトラブルは、物件内部でのみ発生するとは限りません。所有者・管理会社は、時として外部から持ち込まれるトラブルにも対処しなければなりません。
そして中には、
「そんなトラブルまでこっちの責任!?」
という内容のものも。貸主や管理会社の履行責任ってどこまであるんでしょうか?
相談ダイジェスト
- 駐車場で「車を汚された」「傷をつけられた」などのイタズラ被害が発生。
- すぐさま"契約者以外立ち入り禁止"の掲示をしたが、利用者が納得しない。
- 「再発防止のために防犯カメラを設置しろ。未設置は管理責任の放棄だ」と防犯カメラの設置を強く要求している。
- 貸主や管理会社は、防犯カメラを設置しないと管理責任を問われてしまうのか?
専門家の回答
未設置でも責任を問われる可能性は低い。しかし解約が増えれば費用を気にする意味もなくなるのでは。
話をうかがう限り、貸主が防犯カメラを設置することが望ましい状況、と言えるでしょう。
しかし、防犯カメラを設置しないからといって管理責任を問われるかといえば、その可能性は低いと考えられます。
確かに駐車場の貸主は、借主に対して、通常の使用ができる状態で駐車場を貸す義務があります。
しかし、駐車場は一般的に部外者の侵入を防止するのが難しい構造ですし、今回のようなイタズラ被害をゼロにすることはほぼ不可能といえます。警備員が24時間常駐している…などの防止策も考えられますが、一般的なアパートの駐車場の防止措置としては現実的ではありませんよね。
よって、『イタズラを絶対に発生させないような防止措置』をとっていなくとも、社会一般に瑕疵ある設備、瑕疵ある駐車場とはされません。
ただし、貸主に「通常の使用ができる状態で駐車場を貸す義務」がある以上、防止措置をまったくとらないわけにはいきません。
現実的な「防止措置」のラインは?
本件のようないたずら行為に対しては、通常は、外部の人や車の進入を禁止するような看板を出したり、刑事告発を警告する張り紙を貼ったりすれば、貸主としての管理義務は尽くしたと考えられるでしょう。
今回、貸主・管理会社側は、外部に向けて迅速に『契約者以外立ち入り禁止』の掲示をしており、十分な防止措置をとったと見做されると思われます。
防犯カメラの設置も有効な防止措置ではありますが、既に十分な防止措置をとっている以上、高額な費用を負担してまで防犯カメラを設置する義務は負わないものと考えられます。
空き巣被害の場合は…?
では、被害が「車へのイタズラ」ではなく、居室の「空き巣被害」であればどうでしょうか。
この場合も考え方は同じです。
貸主は「通常の使用ができる状態」で貸す義務はありますが、防犯カメラを設置するまでの義務は負いません。
内側から施錠できる窓、問題なく施錠できる玄関…、外部から人が容易に侵入できないようになっていれば十分といえるでしょう。
原則として空き巣対策の設備等を貸主が行う義務はないのですね。
しかし…、「賃貸経営」という視点では、どうでしょうか。
イタズラ被害を訴えているのに、一向に対策が打たれない駐車場。
空き巣被害が出たというのに、何の改善もないアパート。
自分が当事者なら、契約を続けたいと思いますか?
防犯カメラの設置には確かに費用がかかりますが、費用を理由に設置を先延ばしにして解約を出し、収入を減らしてしまっては元も子もありません。
特に昨今の入居者はセキュリティに敏感です。不安があれば解約しますし、セキュリティ設備が不足していると判断されれば契約も遠のくでしょう。
オートロックや防犯カメラといったセキュリティ設備が「常識」になりつつある昨今、入居者の要望が強くなるのも当然と言えます。
管理責任も問われませんし、義務があるわけでもありませんが、防犯カメラ設置は前向きに検討していい事項ではないでしょうか。
傷害事件や殺人事件はもちろん、放火によって全焼、なんてことになれば、もはや賃貸経営どころではなくなります。
どうしても費用が捻出できないのであれば、せめて「ダミーカメラ」を設置したり、防犯カメラとしても使える電池式の安価なカメラ(トレイルカメラ)で一定期間の警備強化をしたりするなどして物件の防犯性能を高め、入居者の不安や不満を解消する姿勢を見せるべきでしょう。
※この事例は2013年7月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。