相談デスク

公開日:2018年10月1日

「契約満了日の数日後に解約するので更新料は勘弁して!」の取り扱いは?

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「相談デスク」

このコーナーはベーシックサポート会員様から実際に当社へご相談いただいた内容を、解決策の一例として公開していく企画です。

「契約満了日の数日後に解約するので更新料は勘弁して!」の取り扱いは?

契約更新のタイミングで解約を申し出る賃借人は多いものです。

しかし、契約終了日までにきちんと引っ越しまで手配できるかというと、残念ながら一定数の賃借人は、ちょっとだけ契約満了日を過ぎてからの解約となってしまうものですよね。

そんな場合は通常、更新手続きをきちんと行なっていただいたうえで解約、となるものですが、しかし中には「数日なんだから更新手続きなしで解約できませんか!」と泣きついてくる方もいらっしゃいます。

そして、そんな契約者のお願いを、やさしくOKしてくれるオーナー様も…。

 

しかし、ちょっと待ってください。

それって気軽にOKしてもいいものなのでしょうか?

相談ダイジェスト

  • 賃借人から解約希望の連絡が入ったが、解約希望日が現契約の満了日を過ぎている。
  • 通常であれば更新料や手数料を払ってもらったうえで更新手続きを進めるところだが、賃借人から手続きを免除してほしいとの希望。
  • 超過期間が1ヶ月にも満たないことから、オーナーは更新手続き免除を了承する意向。
  • 当社もオーナーの意向に準ずるが、果たしてこのような処理にリスクはないのか?

専門家の回答

法的には「法定更新」の扱い。悪意ある賃借人の場合は居座りもあり得る。せめて覚書の取り交わしを。

更新手続きをしない、ということの一番の効果は、やはりその更新が「法定更新」になってしまう点でしょう。

 

法定更新とは、当該の賃貸借契約が、借地借家法の定めに基づいて自動的に更新されること。

契約当事者が、一定期間前に、契約を更新しない、あるいは契約条件を変更したい、という意思の通知をしない場合には、借地借家法上では従前の契約と同一の条件で契約を更新したとみなされます。

 

自動的に更新してくれるなら便利じゃないか、と思うかもしれませんが、この法定更新の怖いところは、更新後の契約が『期間の定めがない』ものとされてしまう点。

契約期間の定めがないということは、次回の契約満了日がやってこないということです。

契約満了日がやってこないということは、契約がいつまでも終了しないということです。

つまり、先方が「悪意ある賃借人」であったなら、予定していた退去日を過ぎたにもかかわらず、そのままずっとその部屋に居座ってしまうことも…?

 

契約満了日が存在し、次回の更新がやってくるのであれば、貸主は「更新拒絶」もできるでしょう(※)。

しかし法定更新後の契約は、上述の通り期間の定めがないために「次回の更新」がやってきません。

もちろん、貸主の側から解約の申入れをすることはできますが、この場合には契約を解除するための正当事由が必要となります(※)。

正当事由とは、その契約を解除し、賃借人に建物を明け渡させる必要性・正当性、とでも言いましょうか。

正当事由は賃貸人や賃借人がその物件を必要とする度合いや、これまでの使用状況、立退料の必要性などを総合的に考慮して判断されますが、基本的に賃借人を保護する立場で語られます。少なくとも、賃貸人の一方的な都合(自分が住む・親族が使う・この賃借人には貸したくない、など)は正当事由とは認められず、賃貸人の都合が一方的であればあるほど、契約解除には先述の「立退料」が必要となってしまいます。

この、ちょっと厄介な「法定更新」をすることは、やはりひとつのリスクと言えるでしょう。

 

もちろん、すべての「更新手続き免除希望者」が、このような法定更新の悪用を考えているわけではありません。

割合でいえば、おそらくこのような最悪なケースに至る確率は1%にも満たないはずです。

しかし、だからといって万一の事態に備えない、というのは間違いです。

更新手続きを免除するなら免除するで、それなりのリスクヘッジは行なって然るべきではないでしょうか。

 

※更新を拒絶する際も「正当事由」が必要です。ただし「期間の途中で契約を終了させること」と「更新をしないこと」とでは、主張する正当事由の重みが変わります

火災のリスクにも備える

更新手続きを行わないことによるリスクとしては、「火災保険」のことも考えられます。

時たま火災保険を更新せず未契約の状態でいる賃借人が見受けられますが、これは賃借人にとって大変危険な状態です。なぜなら、万一、火災を起こして建物を全焼させてしまった場合、賃借人は貸主が被った損害全額を自費で支払わなければならなくなるからです。

更新手続きを免除する際、忘れられがちなのがこの火災保険に関する部分です。たとえ更新料等を免除するとしても、賃借人には火災保険の更新をさせるべきでしょう。保険料はかかりますが、大抵の火災保険は契約期間に応じて保険料の返金を行なっていますので、最低限の支出で済むことを伝えて納得してもらうべきです。

ちなみに、この火災保険の件。
こうした「更新料を免除してほしい」と言ってくる人には注意ができますが、案外、大人しく更新手続きをしてくれる人ほど保険の更新だけを惜しんで無保険となってしまうケースが少なくありません。

更新期限近辺で解約される方全員に、火災保険更新のアナウンスができるとベストでしょう。

覚書の取り交わしと、更新手続き免除の申し出の防止策

さて、冒頭タイトルにも書いた通り、この「更新手続き免除」の解決策は「覚書の取り交わし」です。

覚書の内容は、以下の3点を押さえていれば十分でしょう。

1.何月何日に退去するか
2.契約期間満了日から退去日までの賃料を支払うこと
3.万一、退去予定日を過ぎても退去しない場合は、通常の更新手続きをして更新料も支払うこと

当事者双方の署名(記名)・押印をもって覚書の取り交わしは完了です。

 

しかし、「たかが覚書一枚」といっても、賃借人の“ワガママ”を叶えるためと思うと手間は大きいものです。

可能であればこのようなケースが起こらないよう先手を打っておくべきでしょう。

具体的には、契約終了後の居座りに対する使用損害金請求の条項を契約書に盛り込みます。オーナーズエージェントにて作成・提供している賃貸借契約書では、次のような条文を盛り込んでいます。

 

本契約終了と同時に乙が本物件を明け渡さないときは、乙は本契約終了の翌日から明渡し完了に到るまで、賃料等の倍額の損害金を甲に支払わなければなりません。

 

賃貸借契約が終了している状況では「家賃」を支払わせることはできませんが、相手が不法に不動産を占拠している状態に対しては「使用損害金・賃料相当損害金」を請求できます。このような「ペナルティ」を用意しておくことで、期限通りの更新手続きや解約手続きを促すのです。

なお、この使用損害金については、過去の判例においても「使用料相当損害金の額を賃料等の2倍と定めること」について「不当であるとはいえない」と結論されています。

今回のような更新手続き免除の件だけでなく、更新・再契約の遅延対策に、また違法な居座り対策に、是非ご活用ください。

※この事例は2018年5月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。


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