相談デスク

公開日:2020年11月4日

「倒れてくるかも…」と心配されるブロック塀、万一の際の責任は誰にあるの?

「倒れてくるかも…」と心配されるブロック塀、万一の際の責任は誰にあるの?
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地震大国、日本のリスク。老朽化ブロック塀はどう扱う?

かつてのバブル経済・建設ラッシュの時代から、はや30年。

時の流れと共に、住宅に対する考え方は新しいものを作り続ける「フロー型」から、建物を長く使う「ストック型」へと変化し、築古住宅についてもリノベーションによる再生が試みられるようになりました。

しかし、土地のうえに建っているのは「住居」だけとは限りません。

変化する時代の中でひっそりと老朽化を続ける住居以外の建造物たち。特に私たちに身近なのは、土地の境界線等に建つブロック塀です。

【相談ダイジェスト】

  • 管理物件のオーナーから、所有土地の「ブロック塀」について相談。
  • 近隣の方から「地震などでブロック塀が倒れた時に備えて、何か取り決めをした方がいいのではないか」と言われたとのこと。
  • 万一に備えて、何か取り決めておくことはあるか?
  • 管理会社としてオーナーに提案できることはあるか?

専門家の回答

建築物の責任は所有者にあり。事故が起きる前に補強・作り直しなどの対策を。

結論から言えば、そもそもこの件については、近隣の方が「何か取り決めをしたほうがいいのでは…?」と心配する必要がありません

なぜなら、「建築物」が人や物に対して損害を与えた場合、その責任は原則として「所有者」が負うことになっているからです。

取り決めなどなくとも、塀の倒壊によって被害を受けたなら、近隣の方はその被害を塀の所有者に請求すればいいだけです。

この所有者の責任を「工作物責任」と言います。

 

民法 第717条1項
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

工作物とは、建物や倉庫や塀といった、いわゆる人工的な建築物のことです。そして民法717条では、これら工作物による被害について、その損害賠償責任は「占有者または所有者が負う」と規定しています。

 

しかし注目は最後の部分、「占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない」という但し書きです。要は、「事故が起こらないよう気を付けていたのなら占有者は免責」となり、「あとの責任はすべて所有者が負う」という規定になっているのです。

中古建物を購入したり相続したりして所有者となった場合でも、この責任のあり方に変化はありません。また、「私は強度に問題があるなんて知らなかった」という言い訳も通用しません。

建築物に問題があったとしたら、その問題を放置したまま所有していた所有者に責任がある、というのが日本の民法の考え方です。故に、所有者には過失なく管理していようと責任を免れられない「無過失責任」が課されているのです。

建築基準法に適合しないブロック塀は「瑕疵」があると判断

重い責任を課されている不動産所有者ですが、とはいえ一点、免責の余地が残されています。

それは717条1項の序盤、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、」という条件部分、そして、所有者であっても免責される「自然災害」との関係性です。

 

一般に、地震や台風といった災害・天変地異による損害は、人為的なミスや過失が原因ではないために原則として誰も賠償責任を問われません。いくら所有者が工作物責任を負っているといっても、原因が自然災害であれば基本的には免責となります。

そして、その際の免責条件が「建築物の瑕疵」です。この場合の瑕疵とは、強度不足の構造や問題のある運用方法などを指しますが、そういった瑕疵が建築物にあるかどうかで結論が変化します。つまり、瑕疵がある状態を放置していたなら所有者は責任を問われ、瑕疵のない状態を維持していたなら所有者は責任を追及されずに済むということです。

 

となると、今回知っておきたいのは、「ブロック塀の瑕疵」です。

たとえば、ちょっとした地震で倒れてしまうようなブロック塀には瑕疵が認められて当然でしょう。しかし「ちょっとした地震で倒れてしまうかどうか」は、実際に地震が来てみないと分かりません。となると、具体的には何をもって瑕疵の有無を判断するべきでしょうか。

これについては、「建築基準法施行令62条の8」によって定義された「塀」の規定が基準となると言われます。

  1. 高さは、2.2メートル以下とすること。
  2. 壁の厚さは、15センチメートル(高さ2メートル以下のへいにあつては、10センチメートル)以上とすること。
  3. 壁頂及び基礎には横に、壁の端部及び隅角部には縦に、それぞれ径9ミリメートル以上の鉄筋を配置すること。
  4. 壁内には、径9ミリメートル以上の鉄筋を縦横に80センチメートル以下の間隔で配置すること。
  5. 長さ3.4メートル以下ごとに、径9ミリメートル以上の鉄筋を配置した控壁で基礎の部分において壁面から高さの5分の1以上突出したものを設けること。
  6. 第3号及び第4号の規定により配置する鉄筋の末端は、かぎ状に折り曲げて、縦筋にあつては壁頂及び基礎の横筋に、横筋にあつてはこれらの縦筋に、それぞれかぎ掛けして定着すること。ただし、縦筋をその径の40倍以上基礎に定着させる場合にあつては、縦筋の末端は、基礎の横筋にかぎ掛けしないことができる。
  7. 基礎の丈は、35センチメートル以上とし、根入れの深さは30センチメートル以上とすること。

こうした厳格な規定は、過去の地震災害において、ブロック塀の倒壊に巻き込まれて多数の方が亡くなったことを受けて制定されています。逆に言えば、この条件を満たしていないブロック塀は「いつ地震で倒壊し、被害者を生んでもおかしくないブロック塀と見なされている」とも言い換えられます。

特に、建築基準法の改正前に作られた古いブロック塀は、この基準を満たせていないことが大半です。明らかに2.2メートル以上の高さがあるブロック塀や、内側に控壁を持っていないブロック塀は、万一の事態に備えて早めの対処をするべきでしょう。

老朽ブロック塀は地域の難題。行政の補助を使える場合も。

もし皆さんの管理物件にバブル期以前の物件があったなら、あるいは、ブロック塀だけが古いままで残されている物件があるのだとしたら、オーナー様を損失から守るためにも、そして災害から入居者の皆さんを守るためにも、是非、管理会社の皆さんからブロック塀の対処を提案しましょう。

対処の方法は「撤去」「補強」「作り直し」「生垣への変更」のどれかとなると思いますが、費用はかかるものの、現実的かつ根本的な解決方法は「作り直し」または「生垣への変更」です。特に高さ制限を超えている塀は、相当な補強をしない限り安全を確保できませんので、一度撤去してからの対策が望ましいでしょう。

 

なお、ブロック塀の撤去や生垣の新設については、助成金等を用意している市区町村も多くありますので、是非活用しましょう。行政によって基準は異なりますが、次のことが要件となっていることが多いようです。

・安全点検に合格しない、または老朽化や損傷によって危険性が認められるブロック塀
・1メートル以上の高さがある
・道路(公道・私道など)に一定距離(1~2メートル)面している

 

特に、近隣住民や入居者から「今にも倒れそうなので何とかしてほしい」と言われるようなブロック塀は、管理会社からオーナー様にきちんと対処を提言しましょう。

既に述べた通り、工作物の責任は所有者(オーナー)が負うのが原則ですが、万一の際に占有者や近隣住民が「何度も危険性を訴えたにもかかわらず」「所有者も管理会社も何もしなかった」と証言したとしたら、オーナーの代わりに管理を行なっている管理会社も責任追及の対象となりかねません

 

2018年の大阪北部地震において、地震によるブロック塀の倒壊に9歳の女の子が巻き込まれて亡くなったニュースは、記憶に新しいところです。また2016年の熊本地震においても、ブロック塀倒壊に通行人2名が巻き込まれ、こちらは所有者に対する民事訴訟のみならず刑事告訴状の提出まで行われました(2019年不起訴処分)。

いつ起こるか分からない地震災害なればこそ、目に見える危険には早期の対処を。そして管理会社は、オーナーのリスクを解消し資産を増大させる役目を負う者として、積極的な改善提案を行なっていきましょう。

※この事例は2020年10月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。


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