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入居者が家賃滞納のまま行方不明に。明け渡し訴訟を起こすための「公示送達」とは

2021.01.12
  • 相談デスク

    「相談デスク」

    このコーナーはベーシックサポート会員様から実際に当社へご相談いただいた内容を、解決策の一例として公開していく企画です。

    行方不明の入居者からお部屋を取り戻す

    賃貸経営を悩ませる家賃滞納。

    それが3ヶ月も続くようなら、契約解除や明け渡し訴訟に踏み切りたいところですが、入居者のなかには訴訟を起こすタイミングで「行方不明」になってしまうことも。

    そうなると通常の手続きでは裁判を起こすことができません。原則として裁判をするには貸主側の「お部屋を明け渡してくれ」という意思を、借主側に伝えないといけないからです。

    今回寄せられた相談も、まさに雲隠れした入居者に対しての「どのようにしてお部屋を取り戻せばいいのか」という嘆きの声でした。

    相談ダイジェスト

    • 問題の入居者は前管理会社(倒産)の時に入居した方で、素性がよく分からない
    • 家賃3ヶ月を滞納したところで、駐車場に車を放置したまま音信不通になってしまった
    • 強制執行によりお部屋の「明け渡し」と放置車両の「処分」を行ないたいと相談
    • 入居者が行方不明のまま、お部屋や放置車両の明け渡し訴訟を起こせるのか?

    専門家の回答

    上に書いた通り、相手方が不在の状態では裁判を起こすことはできません。

    そのような時に利用したい司法制度が「公示送達」です。

    送達とは、民事訴訟において裁判所が訴えた側(ここでは貸主)の「お部屋を空け渡してくれ」という訴状を相手方(滞納者)に通知し、相手方がそれを受領することを言います。

    その一つである公示送達は、通知を送るべき相手方の住所や居所が不明の場合に活用できる制度。裁判所の掲示板に呼び出し状を貼り、その日から2週間が経過した時点で「訴状の送達がされた」と見なすことができます。

     

    つまり,実際には相手方が「お部屋を空け渡してくれ」という貸主側の意思を受け取っていないにもかかわらず、法的に届いたことにして明け渡し訴訟をスタートさせることができるわけです。

    訴訟が始まれば、後の流れは通常の訴訟と変わりません。判決が確定した後、強制執行の申立てを行ない、執行官の立会いのもと粛々と明け渡しが実施されることになります。

     

    ◆放置車両や駐車場は「土地明け渡し請求」で

    お部屋の明け渡しに加えて、相談では「放置車両の強制執行はできるのか」という質問が寄せられました。

    夜逃げの場合、たいていの入居者は車ごと行方不明になるものですので今回のケースは珍しいですが、放置車両もお部屋と同様に強制執行が可能です。裁判で「土地」の明け渡し請求を行ないましょう。

    請求には、契約書等での車両の所有者確認に加え、土地の登記簿謄本や固定資産評価証明書、駐車場の図面や配置図などが必要です。

    裁判所によって必要書類に多少の違いがあるかもしれませんので、最寄りの裁判所に確認するのが望ましいでしょう。

    公示送達の手続きは非常に手間がかかる

    相手方が行方不明でも、明け渡し訴訟を起こすことができる公示送達。

    しかし、見方を変えれば「相手方の意思を無視する」ことになる制度は、その特殊性から、必要書類を揃えるのに結構な手間がかかります。

    貸主側が裁判所に提出するものには、たとえば相手方に到達させる意思表示が記載された通知書、意思表示の公示送達申請書、相手方の住民票または不在住証明書といった書類がありますが、とりわけ大変なのが「調査報告書の作成」です。

    調査項目は多岐にわたり、以下のような内容を細かく報告書に記載しなければなりません。

    • 電気ガス水道の使用状況
    • 表札・郵便受の状況
    • 建物・部屋の外観
    • 親族・近隣住民への聞き取り結果

     

    もちろん、住民票上の住所や勤務先の調査も必要不可欠です。徹底した調査を実施し、「相手方が本当に行方不明である」ことを証明しなければならないのです。

    公示送達さえ済めば、あとは勝利がほぼ約束された裁判が待つだけ。しかし、そこに至るまでの道のりは骨が折れるということを、あらかじめ覚悟しておいた方がいいでしょう。

     

    ちなみに調査報告書の作成で、行方をくらませた入居者が「まだ住んでいる」ことを証明できれば、訴状を発送した時点で送達完了とされる「付郵便送達」の手続きを踏むことになります。

    手間こそ変わらないものの、付郵便送達なら公示送達と異なり2週間の掲示をパスして裁判に進むことができますので、公示送達より早くお部屋を取り戻すことが可能です。

    公示送達になるか付郵便送達になるかは、調査報告書を見た裁判所が決めることですが、相手方がまだ住んでいる可能性があるのなら、付郵便送達での明け渡し訴訟を目指したいものです。

    入居者の身元をしっかり把握して堅実なリスクマネジメントを

    首尾よく強制執行が実現できても、結局のところ今回のようなケースでは明け渡しに必要な費用は貸主負担となります。残置物は競売に出せるものの、大抵は二束三文。滞納賃料さえカバーできないでしょう。

    肝心なのは、いかにして公示送達を利用するような最悪の事態を回避するか、ということ。入居審査を見直し、滞納リスクのある入居希望者を弾くことができれば一番いいでしょう。

    加えて、万が一夜逃げされてしまった場合に備えて、裁判の手続きや費用などを請け負ってくれる保証会社を利用するのも一手です。

     

    また、今回のケースでは、管理受託する前に入居した方の情報が不足していたことが事態を悪化させる原因となってしまいました。

    管理替えのタイミングでは可能な限り、入居者の身元を確認したり、連絡先を追加で確保したりといった「万一の備え」をしておきたいものです。

    公示送達の制度はあくまで奥の手。

    入居者の情報をしっかりと確保し、たとえ滞納したとしても一緒に現実的な返済プランを考えるなどして入居者とコミュニケーションを取り、滞納を長引かせない体制づくりを整えていきましょう。

    ※この事例は2020年12月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。

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