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高齢入居者に忍び寄る「認知症」。管理会社が取るべき発症後の対策とは

2021.04.13
  • 相談デスク

    「相談デスク」

    このコーナーはベーシックサポート会員様から実際に当社へご相談いただいた内容を、解決策の一例として公開していく企画です。

    加速する高齢化。もし入居者が認知症になったら?

    世界で最も高齢化が進む日本。

    総人口に占める高齢者の数は脅威の28.4%を記録しており、実に3,589万人がお年寄りという状況です(2019年10月1日時点)。最近は賃貸住宅においても高齢入居者の数が増えてきたと言われますが、それも当然の結果と言えるでしょう。

     

    さて、高齢入居者が増えてくると、用心したいのが「認知症」のリスクです。

    賃貸借契約を結んだときは問題がなくても、認知症を発症すると記憶障害で家賃滞納が相次いだり、徘徊などの奇行が始まったりとさまざまな賃貸トラブルに発展してしまいます。

    もし入居者が認知症になってしまったら…。
    そのとき管理会社はどのような対応を取るべきでしょうか。

    相談ダイジェスト

    • 認知症を発症した高齢入居者が家賃を4ヶ月も滞納している(保証会社は未加入)
    • 最近、事故で病院に運ばれたこともあり、室内で亡くなる可能性があるため心配
    • 連帯保証人はいるが絶縁している様子で、滞納分の支払いを拒否している
    • 管理会社としてどのように対処すればいいのかと相談

    専門家の回答

    「成年後見人」の申立てを入居者親族に要請

    家賃滞納が長引いており、孤独死も懸念される入居者ですので、管理会社としてはできることなら賃貸借契約を解除したいところです。

    しかし、認知症を発症した場合、入居者に解約をお願いすることも、裁判でお部屋の明け渡しを訴えることもできません。入居者は「意思能力が欠如している」と見なされるため、単独での法律行為が無効となり、賃貸借契約に変更を加えることができなくなるからです。

    それに何より、認知症の入居者を一方的に追い出そうとするのは倫理的にも問題があるでしょう。

     

    したがって管理会社が最初に模索すべきは、事態を先に進めるために、入居者の代理人となってくれる「成年後見人」を立てることです。

    法定後見となりますので、家庭裁判所に「後見等開始の審判」を申立てることになりますが、実際に申立てができるのは本人・配偶者・四親等以内の親族等に限られます。

     

    そのため、まずは管理会社から入居者の親族に連絡を入れ、家庭裁判所に申立てを行なってもらうよう要請していきましょう。そして、申立てにより晴れて選任が確定しましたら、家賃の支払いや今後の契約について成年後見人と話し合い、解決策を見つけていくことになります。

    親族による申立てができないときは行政へ

    成年後見人を立ててもらおうとしても、入居者に身寄りがなかったり、親族との連絡がつかなかったりする場合があります。

    そうしたときの救済措置として、行政では、入居者の住所地に該当する市区町村長が代理で申立てをすることができる「成年後見制度利用支援事業」を行なっています。

    同事業を利用する際は各自治体の相談窓口(または地域包括支援センターなどでも相談可)に問い合わせてみてください。行政に引き継げれば、あとは成年後見人の選任を待って必要な交渉を進めていきましょう。

     

    ただし、利用のための要件は自治体によって異なる場合がありますので注意が必要です。

    《各自治体の利用要件例》

    福岡市

    判断能力が不十分な高齢者で,成年後見開始の審判請求ができる親族がいない方で,その福祉を図るため特に必要であると認められる方

    さいたま市

    65歳以上で2親等内の親族がいないか又はこれらの親族がいても音信不通等の事情により、親族等による後見等開始の審判の申立てを行うことができない方

    入居者を見守り支援に繋げてリスクヘッジ

    法定後見の場合、後見開始の申立てから選任の審判確定まで3~6ヶ月程度かかると言われています。その間、高齢リスクを抱えた入居者を放置しておくのは得策ではありません

    できるだけリスクヘッジを図るためにも、自治体や地域包括支援センターなどに相談して、入居者への生活支援をしてもらうよう働きかけましょう。

     

    といっても、今回の相談のように、入居者が入院するような事態にまで発展している場合は、すでに民生委員などの見守りが始まっている可能性が高いでしょう。

    民生委員とは地域住民を対象に幅広く生活支援を行なう非常勤の公務員のことで、高齢者の守り手と言える存在です。もし民生委員から協力を求められたときは、入居者だけでなく、お部屋を守るためにも上手く連携していきたいものです。

    裁判を見据えて連帯保証人への督促を繰り返す

    健康リスクを抱える一方で、入居者の家賃滞納は今後も続くことが想定されます。賃料をしっかりと回収するために、連帯保証人には内容証明郵便で督促を繰り返しましょう

    今回の相談で、連帯保証人は入居者(主債務者)と絶縁していることを理由に滞納分の支払いを拒否していますが、あくまで個人的な都合であるため正当な理由にはなりません。

    管理会社としては、内容証明郵便で繰り返し督促を続けていくべきです。支払いの期限を定め、いつまでに支払われなかった場合は訴訟を起こすことを告げたうえで粘り強く督促を行なっていきましょう。

     

    高齢入居者が増えている昨今、入居者の認知症リスクは今後ますます身近な問題になることが予想されます。

    いざというときにスムーズに対処できるよう、入居者親族の連絡先や、行政の相談窓口をしっかりと押さえ、超高齢社会にも適応できる賃貸管理を目指していきましょう。

    ※この事例は2020年4月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。

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