相談デスク

公開日:2021年9月14日

賃貸の募集条件を「ペット可」に変えるには。管理会社が知っておきたい手順&ルール作り

賃貸の募集条件を「ペット可」に変えるには。管理会社が知っておきたい手順&ルール作り
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「ペット可」への変更。トラブルなく進めるには?

原状回復のリスクはあるものの、効果的な入居付けに繋がる「ペット可物件」。築年数などの問題でお部屋の稼働率が落ちているときこそ検討したい空室対策ですが、ペット不可だった物件を既存入居者の承諾なしに勝手に変更するのは危険です。

ペット可物件はどうしても騒音や臭いが付き物ですので、炎上必至のクレームが相次いだり、入居者間のトラブルに発展したりしかねません。最悪の場合、入居者の退去引っ越し代の請求に発展することも考えられるでしょう。

では、穏便にペット可物件へと変わるためには、管理会社はどのようなことに気を付ければいいのでしょうか。オーナーの意向に従い、ペット可物件への変更を目指す管理会社のお悩みに答えました。

【相談ダイジェスト】

  • オーナーが、ペット不可物件を「ペット可」に変更したいと言っている
  • ペット可に変更する場合、管理会社としてどのようなことに注意すべきかと相談
  • ペットの飼育についてどのようなルールを設ければいいのか
  • 原状回復でオーナーが損をしないためには何に気を付ければいいのか

専門家の回答

まずは「アンケート調査」で様子を見る

前提として、既存入居者がいる物件の「ペット可」変更は一筋縄ではいかないことを覚悟しておくべきです。対象物件の戸数が少なかったり、運よく全入居者が承諾してくれたりすれば話は早いですが、実際には上手くいくことばかりではありません。

「募集条件を変えるだけだから簡単だろう」なんて甘い考えは捨て、時間が掛かることを前提で変更に向けて動いた方が無難です。

そのうえで、まずはペット可物件に変えることについて、既存入居者に「アンケート調査」を実施するところから始めるといいでしょう。流れとしては次のようになります。

《ペット可変更の流れ》

  1. アンケート調査を実施する(戸数が少ない場合は電話確認でも可)
  2. 全員が賛成なら「変更通知書」を郵送し、同意のサインをもらう
  3. 通知書にサインをもらった後、飼育ルールを文章等で通達する

ペット可への変更を前提に話を進めてしまうと、対応が一方的になってしまい、既存入居者の反発を招く恐れがあります。

そうではなく、入居者の思いを尊重し、同意してくれればペット可に変更する姿勢であることを伝えていきましょう。そのため、アンケート調査の名目で入居者の声を集め、反応を窺ってみるのです。

アンケート調査の結果、全入居者の承諾が得られれば、次は「変更通知書」を送り、同意のサインをもらいます。あくまで賃貸借契約に関することですので、書面でいただいた方が後々トラブルに発展した場合にも安心です。

サインをもらった後は、飼育ルールについて記した冊子などを送付しましょう。

ペット可物件で管理会社が後悔するのは、決まって運用ルールの甘さが原因です。飼い始める際に何が必要か、飼っている間の注意点は何かを明確にしておき、あらかじめトラブルの芽を摘んでおくことをお勧めします。

ペット可に反対の入居者。「健康被害」には要注意

とはいえ、ペット可に賛成する入居者ばかりではありません。

なかには動物が好きではない人もいるでしょうし、ペットによる騒音・臭いを気にする人もいるでしょう。あるいはペットアレルギーを気にする入居者もいるかもしれません。

もしペットアレルギーで健康被害を出してしまうと、貸主側の責任を問われる事態にもなりかねません。そのため、アンケートに反対理由を記入できるようにしておき、入居者の声にしっかりと耳を傾けるようにしましょう。

 

反対する入居者がいる場合は次のような対策が考えられます。

《反対する入居者への対策》

  • ペット可への変更は保留にして、反対する入居者の退去を待つ
  • 別のお部屋を用意して、反対する入居者に引っ越しをお願いする
  • 反対する入居者が少数のときは退去を覚悟で強行する
  • ペット可変更の猶予期間を設けて、期間後に強行する

トラブルになるリスクが一番小さいのは、反対する入居者の退去を待つことです。近いうちに退去が見込まれるなら、退去時期を待ってからペット可変更の準備を進めるといいでしょう。

とはいえ、空室対策としてペット可変更に踏み切るのですから、いくら反対の声が上がっていても、すぐにでも変更したいものですよね。

そこで、空いている物件がある場合は、反対する入居者にお部屋を移ってもらうことも一案です。オーナー負担で引っ越し費用を払ったり、最初の1ヶ月ほどをフリーレントにしたりすれば入居者の理解も得られやすくなるでしょう。

 

一方、強硬手段になりますが、反対する入居者が少数なら、退去覚悟でペット可物件に無理やり変えるという選択もあり得るでしょう。賃貸住宅はあくまでオーナーの所有物ですので、募集条件を変えるのはオーナーの自由と言えます。たとえ一部の入居者が反発しても、法的には問題ありません。

また、すぐに強行せず、ペット可変更までの猶予期間を設けてみるのもいいかもしれません。

たとえば、ペット可変更を反対する入居者に対して「1年後にペット可に変更します」と伝え、その間の引っ越しを支援することを申し出るのです。そうすれば、たとえ期限後に強行することになっても、貸主側は入居者に十分配慮したと言えるでしょう。

契約書を見直し、ペット可変更の土壌を用意する

アンケート調査よりさらに時間が掛かりますが、契約書に「近い将来、ペット可物件に変更することがある」という旨の容認条項を盛り込んでおくのも一つです。

ペット可への変更の可能性を、契約段階で入居者に伝えておけば、実際に変更することになっても承諾を得られやすくなります。

事前に「ペット飼育ルール」を用意しておく

ペット可ならではのトラブルを防ぐ!

ペット可への変更について入居者の承諾を得られても、ただ募集条件を変えればいいというわけではありません。入居付けでメリットの多いペット可物件は、反面、ペット可にすることで発生するデメリットも多くあります。

《ペット可物件のデメリット》

  • 壁や柱にひっかき傷が残りやすい
  • お部屋の原状回復費用が高額になる
  • 共用部にペットの糞尿が放置されてしまい汚損の原因となる
  • 鳴き声やマナー違反でクレームが相次ぐ
  • 一度ペット可にすると簡単にはペット不可に戻せない

こうしたトラブルを防ぐために、ペット可物件に変更する際は、合わせて「ペットを飼い始めるときに提出するもの」「飼ってから守ってもらうこと」の2つのルールを作り、入居者に伝えておきましょう。

 

《飼い始めるときに提出するもの》

【ペット飼育承諾書】

入居者がどのようなペットを飼うつもりなのか、書面にて申請を求めます。承諾書には下記のような情報を入居者に記載してもらいましょう。

  • ペットの種類・頭数・体重
  • 性別・生年月日
  • ワクチンや去勢手術を実施した日時
  • しつけ状況
  • 室内のどこにトイレを設置するかなどの飼育計画

 

【第三者機関による証明書】

狂犬病予防注射済証や、ワクチン接種証明書、去勢手術証明書といった第三者機関が発行した証明書の提出も重要です。

特に犬猫の場合、去勢することで無駄吠え・ケンカ・逃走などが減り、情緒的に安定することが知られています。賃貸トラブルを避けるためにも、去勢手術の証明書は提出を義務付けてもいいかもしれません。

 

《飼ってから守ってもらうこと》

また、飼育中に継続して守ってもらうルールも作成し、確実に伝えておきましょう。契約時だけでなく更新時にもルール確認することで、入居者への注意喚起となり、汚損などの被害軽減に繋がるかもしれません。

  • ペットを追加する場合は必ず申請を義務付ける
  • 廊下や階段などの共用部で排尿をさせない
  • 室内での排泄物の管理を徹底させる
  • 共用部ではペットを直接歩かせず、入居者が腕で抱き上げて移動する
  • バルコニーやベランダでの飼育を禁止する
  • 狂犬病などの予防接種を義務付ける

原状回復費用を確保するための取り決めをする

飼育ルールの作成に加え、退去時に原状回復費用をしっかりと回収できるような取り決めをしておくことも大切です。

ペット可物件は、ペット不可に比べて確実に費用が高騰します。費用負担について入居者と事前の約束を交わしておくことで、オーナー負担の軽減とトラブル回避を目指しましょう。

《原状回復費用を確保するポイント》

  • 敷金・礼金を上乗せする
  • 原状回復費用を賃料に上乗せする
  • 契約書に「敷金償却・敷引き」の特約を設ける
  • お部屋の状態にかかわらず必ず支払う退去費用を契約書に明記する
  • 入居者の故意過失による原状回復費用は全額入居者負担とする

 

昨今のペットブームもあり、空室対策でペット可物件への変更を考えるオーナーは今後も増えることが予想されます。

ペット可は確かに大きな武器になりますが、ペット不可からの変更や運用ルールを疎かにしてしまうと諸刃の剣になりかねません。

まずは既存入居者との合意形成や、ペット可にした後の運用に向けて準備を整え、安全な賃貸経営を進めていきましょう。

※この事例は2021年8月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。

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