相談デスク

公開日:2021年10月12日

賃貸住宅の「イタズラ行為・ごみ漁り」。犯人が入居者だったら? あるいは外部犯だったら?

賃貸住宅の「イタズラ行為・ごみ漁り」。犯人が入居者だったら? あるいは外部犯だったら?
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自転車へのイタズラ&ごみ漁り被害にどう対処する?

犯人は別の賃貸住宅に住む入居者という可能性も

今回、管理会社から寄せられた相談は2件の賃貸トラブルでした。
ひとつは、駐輪場に止めてある入居者の自転車がイタズラにより傷付けられてしまった、というもの。もうひとつは、アパートのごみ置場に捨てた衣類や書籍などの資源ごみが漁られ、ごみが持ち去られたり、散乱したりする被害があった、というものでした。

それぞれ異なる物件で起きた異なる内容の賃貸トラブルですが、何者かによって「物件内にある物が荒らされてしまう」という点では共通しています。では、入居者からこうしたイタズラ行為やごみ漁り被害の報告があったとき、管理会社にはどのような対策が取れるのでしょうか。また、もし問題を起こした何者かが同じ物件の入居者ではなく、実は近くにある他社の管理物件に住む入居者だった場合、一体どのように対応すればいいのでしょうか。

【相談ダイジェスト】

  • 駐輪場の自転車がイタズラにより傷を付けられてしまった、と入居者からクレーム
  • 別物件では、ごみの持ち去りや、ごみ置き場が荒らされる被害も起きている
  • これらの問題にどう対応したらいいのかと相談
  • 犯人が他社の管理物件に住む入居者だった場合、どのような対応ができるか?

専門家の回答

イタズラ行為・ごみ漁りが「犯罪」であると周知する

管理物件でイタズラ行為やごみ漁りの被害が起きたとき、解決を早めるにはできるだけ被害入居者にも自衛手段を取ってもらいたいところですよね。しかし、物件内に防犯カメラを設置するなど、管理会社が動いた方が実効力のある対策を取れるのも事実です。

そこで、管理会社にできる対策として、まずは全入居者に通知文をまいて注意喚起をしていきましょう。基本的な対策ではありますが、誰が問題を起こしているのか分からない以上、全体に周知して様子を見ることが必要です。

 

注意喚起をする際は、他人の所有物を傷付けるイタズラ行為やごみ置き場のごみ漁りが「犯罪行為」に当たること、貸主として警察に通報する意思があることを分かりやすく明記しておくと再発防止に役立つでしょう。

犯罪行為と書きましたが、事実、他人の所有物を傷付ける・壊すといった行為は「器物損壊罪」に当たります。人の物を壊したら罪に問われるのは当然ですよね。

一方、ごみ漁りですが、実はこちらも「窃盗罪」「占有離脱物横領罪」(いわゆる置き引き)といった罪状が適用されることがあります。

「いやいや、ごみとして捨てたのだから、持ち主は所有権を放棄したはず」と思われるかもしれませんが、実際に所有権を放棄するタイミングは持ち主次第と言えます。「ごみ収集業者が回収するまでは、ごみ置き場に置いているだけ」となれば、ごみ漁りは盗みと同じことになるのです。

 

このように、注意喚起をする際は他人の所有物へのイタズラ行為・ごみ漁りがれっきとした犯罪であることを周知したうえで、警察・通報・懲役・罰金といったインパクトのある言葉を全面に押し出していきましょう。

ただし、注意喚起でよくある掲示板への張り紙は避けた方がいいかもしれません。張り紙一枚で済みますので楽ですが、もし内見に来た入居希望者が、イタズラ・警察・通報といった文言を見てしまったら入居意欲に悪影響が及んでしまうでしょう。そのリスクを考えると、面倒でも通知文の方が安全と言えます。

《量刑一覧》

  • 器物損壊罪:3年以下の懲役または30万円以下の罰金
  • 窃盗罪:10年以下の懲役又は50万円以下の罰金
  • 占有離脱物横領罪:1年以下の懲役又は10万円以下の罰金

 

防犯カメラで「証拠」を押さえる

証拠がなければ警察は動かない

とはいえ、お察しのとおり、入居者への注意喚起だけでは十分とは言えません。それこそ被害が何度も起きているようなら、実際に管理会社から警察に相談することも視野に入れたいものです。

ただし、警察を頼るには相応の証拠が必要になります。

被害入居者に協力してもらい、被害状況が分かる写真を用意するのはもちろんですが、一番効果的なのは防犯カメラを設置して犯行の瞬間を押さえることです。設置コストこそかかるものの、防犯設備として空室対策にも役立ちますので、この機会にオーナーに提案し、取り付けてもらえるように交渉するのもいいでしょう。

防犯カメラには、威圧感のあるボックス型やビューレット型、どこを映しているのか分かりづらいドーム型など多くの種類があります。設置場所に合わせて商品を選んでみてください。

防犯カメラの種類

【ボックス型】
スタンダード型とも呼ばれる一般的な防犯カメラです。その特徴は、何といっても見た目の威圧感。防犯カメラの存在を周囲にしっかりとアピールできるため、犯罪を未然に防ぐ効果が期待できます。一方、カメラの視線が分かりやすく監視範囲が狭いため、死角を狙われやすいという欠点もあります。通路上やエントランスの出入り口など、場所を選ぶカメラと言えるでしょう。

 

【ビューレット型】
ボックス型に似ていますが、ハウジングケースに入っていない分、すっきりした見た目でボックス型より安価なのがビューレット型です。現在はビューレット型が防犯カメラの主流となっており、威圧感を損なわず、設置コストを下げたい場合にオススメです。

 

【ドーム型】
半球状のドーム型なら、威圧感が小さいため、物件周りの景観を崩さずに監視することができます。カメラがあることを感じさせにくいので、入居者に「監視されている」という抵抗感を与えにくいメリットがあります。また、ボックス型などに比べてカメラの視線が分かりづらいのも強みです。

 

【全方位魚眼レンズ型】
ボックス型のような死角をなくし、一台で広範囲を監視したいなら全方位魚眼レンズ型を使うという選択肢もあります。カメラを何台も導入する必要がないので、場合によっては設置コストを抑えられるかもしれません。ただし、夜間撮影ができないモデルが多いので、夜間照明のある駐輪場に設置するなど、設置場所はかなり限定的になってしまいます。

 

【PTZ型】
カメラを縦横に動かすことのできるドーム型に似た防犯カメラで、Pan(横)・Tilt(縦)・Zoom(拡大)の頭文字からPTZ型と呼ばれます。このカメラ一台でさまざまな方位から監視できますので、広い場所への設置に適しています。ただし、設置コストが高いため賃貸住宅への設置はオーバースペックになるかもしれません。

コストを抑えるなら「トレイルカメラ」がオススメ

また、低コストで設置するなら電気工事のいらない「トレイルカメラ」が便利です。

トレイルカメラとは、防犯・害獣対策に使われるカメラで、人・動物の動きに反応するセンサーを搭載しており、動きを検知することで写真・動画撮影を自動で開始してくれます。害獣対策に使われるものですので耐久性が非常に高く、柱や庭木などに巻き付けて設置することも可能です。

基本的に電池式ですので長期の設置には向かず、威圧感もないため防犯効果は薄いですが、短期間の証拠集めとして使う分には十分なコストパフォーマンスを発揮してくれるでしょう。

 

そのほか、物件にインターネット環境が整っているなら、スマートフォンから24時間監視できるネットワークカメラ(有線LAN専用やWi-Fi対応モデルなど)を設置するという手もあります。また、防犯カメラのダミーを設置したり、ごみ漁りへの防衛手段として、入居者しか番号が分からない鍵をゴミストッカーにつけるという対策もあるでしょう。

いずれも物件の防犯力・安心感を上げる効果が見込めますので、空室対策としてオーナーに提案してみるのもいいでしょう。

ちなみに、オーナーが契約している火災保険によっては、物件内で発生した犯罪行為の再発防止に要した建物の改造費用や防犯機器等の設置費用が補償される場合もあります。提案する際には、オーナーを通じて保険内容の確認をしてみるのも一案です。

犯人が近くに住む「他社管理物件の入居者」だった場合

被害入居者・警察にも協力を頼む

ところでイタズラ行為やごみ漁りの犯人が、必ずしも同じ管理物件の入居者とは限りません。では、もし犯人が近隣にある他社管理物件の入居者だった場合、管理会社にはどのような対応が取れるのでしょうか。

正直なところ、なかなか難しい事態と言わざるを得ません。なにせ他社の管理物件ですので、こちらから積極的な行動は取れないからです。

そのため、基本的な対応として、まずは相手の管理会社に被害内容を伝えて問題入居者への対応をお願いすることから始めましょう。

 

では、相手の管理会社に対応をお願いしたからもう安心かと言うと、そんなことはありませんよね。相手の管理会社にとって所詮は他人事ですので、事態の改善はあまり期待できないでしょう。

そこで、次善の策として、証拠を集めたうえで被害入居者に警察へ被害届を出させる、または相手の管理会社から問題入居者に通知文を送ってもらうなど協力して問題入居者の対応に当たってもらうといったことも検討してみてください。

 

もちろん、相手の管理会社がどこまで許可をしてくれるか、問題入居者が問題行動をやめてくれるかは状況次第です。もしかしたら、問題の解決には至らないかもしれません。

ただし、そこまでして被害入居者の悩みに付き添ったことは、少なからず入居者やオーナーの胸に響くはず。トラブルの経過報告だけはしっかりと行ない、対応に費やした時間・労力を自社の心証アップへとつなげたいものです。

※この事例は2021年9月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。

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