コストが気になるオーナー、進まない雑草対策
生い茂る雑草、放っておくと大変な事態に…
夏になると驚異的なスピードで成長する雑草たち。その生命力・繁殖力は凄まじく、中途半端な除草ではとても太刀打ちできません。しっかりと雑草対策を講じるなら、貸主側は多少なりとも身銭を切る覚悟が必要です。
しかし、賃貸オーナーが雑草対策に消極的でなかなか実施できないケースもありますよね。今回、管理会社から寄せられた相談も、「オーナーが除草にかかるコストを嫌がり、雑草対策ができずにいる」というものでした。こんなとき、管理会社はどのように雑草対策を提案すればいいのでしょうか。
【相談ダイジェスト】
- 管理物件に雑草が生い茂り、本格的な雑草対策が必要になってきた
- これまでは現地巡回のときに担当者ができる範囲で除草していた
- オーナーが雑草対策に消極的なため実施できずにいる
- 雑草対策をどのように提案すればいいのかと相談
専門家の回答
賃貸経営の「雑草リスク」から対策強化の必要性訴える
相談内容によると、オーナーが雑草対策に消極的な理由は「コストが気にかかるから」とのことでした。それに対する提案として、ここではもし雑草が生い茂ったとき、果たして賃貸経営に「どんな損失が生まれるのか」に目を向けたアプローチをお勧めします。
雑草による賃貸経営の損失とは、ずばり「収益性の悪化」。主に以下の雑草リスクにより、物件の入居申込数の減少・解約率の増加が起こり、物件のキャッシュフローが徐々に悪化することが予想されます。
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■物件の見た目が悪くなる
言うまでもないですが、雑草が生え放題のアパート・マンションは見た目が非常に悪いですよね。せっかく内見があっても、残念な景観では「管理がずさんで不安」「不衛生で見苦しい」といったマイナスの印象を持たれてしまい、入居にはつながりません。さらに既存入居者の満足度も低下し、短期解約を招いてしまう恐れもあります。
■害虫・害獣被害が発生する
入居者を遠ざける一方で、雑草が生い茂った場所は多くの害虫を呼び寄せることになります。入居者満足度が大きく下がるのはもちろん、住宅内への侵入があれば駆除費用を負担する事態にもなりかねません。加えて、虫の集まる場所は害獣の住処にもなります。気が付いたときには物件がネズミやハクビシンなどの巣になっているかもしれません。
■空き巣などの犯罪リスクが高まる
皆さんは「割れ窓理論」をご存じでしょうか。1枚の窓ガラスを割れたまま放置すると、次第に割られるガラスが増え、いずれはその建物全体、街全体も荒れてしまうという理論です。
生い茂った雑草も同様に、放置することで空き缶などのポイ捨てが始まり、次第に家具家電などの不法投棄に発展、最悪の場合は不法侵入や放火につながるリスクを抱えています。良からぬことを企む者にとって、雑草が生い茂った住宅は格好の標的になってしまうのです。
このように雑草対策を疎かにすると、やがては物件の収益性を損ね、予期せぬトラブルの原因となってしまいます。雑草対策のコストを惜しんだばかりに多額の出費を迫られたとあっては元も子もありません。オーナー提案では、「雑草対策のコスト」と「雑草リスクによる損失」を秤にかけ、どちらが今後の賃貸経営にプラスに働くのかをオーナーに根気よく伝えていくことが大切です。
雑草対策の種類
除草剤など、必要最低限のコストで雑草対策
ひと口に雑草対策といってもやり方はさまざま。中でもコストを最低限に抑えるなら、下記の方法がオススメです。毎年実施しなければならないという手間こそありますが、コストを気にするオーナーの承諾は得やすいでしょう。
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特に効果的なのは除草剤で、年2回程度の散布で雑草の発生をぐっと抑えることが期待できます。除草剤には大きく2種類あり、雑草が生い茂る前に散布する「土壌処理型」、生い茂った後の「茎葉処理型」に分けられます。
ちなみに、除草剤の代わりに「塩水」を撒く方法が流行ったことがありますが、こちらは絶対にお勧めしません。というのも、土が塩分を含むことで、酸化による「基礎・インフラ設備への被害」が生じたり、土地建物の評価が下がり売却の足かせになったりする恐れがあるからです。効果は絶大ですが、失うものも大きいですので絶対に止めましょう。
防草効果+見た目アップの提案も
一方、コストは上がるものの、防草効果の持続性や見た目に優れた雑草対策も検討したいもの。ただ防草するだけでなく、外構のグレードを上げて賃貸経営のプラスにつながる提案をしていきましょう。
■砂利
雑草対策の王道とも呼べる砂利敷き。防草シートの上に厚さ3~5cm(駐車場は10㎝)程度の砂利を敷けば完成です。施工は簡単でコストも低く、化粧砂利を使えば外構の印象アップにもつなげられます。ただし、「壁や塀の立ち上がり部分にできる隙間から雑草が生えやすい」「防草シートの上に土が溜まると、そこから雑草が生えてくる」といったこともありますので注意が必要です。
■真砂土
砂利敷きよりコストは上がりますが、土の温かみを演出しつつ雑草対策ができる真砂土もオススメ。カラーバリエーションも赤、青、白と豊富で、物件の外観に合わせた使い方ができます。耐用年数は15~20年程度あり、比較的長持ちするのもメリットです。
■人工芝
施工単価は高めですが、一年中きれいな芝生を演出できる人工芝という選択肢もあります。最近は天然芝と見分けがつかないほど見た目も質感もリアルな人工芝が登場しており、手入れも必要ないことから、より使い勝手が増しています。耐用年数は概ね10年ほど。雑草対策というよりは空室対策寄りの提案ですが、試してみるのも面白いでしょう。
■固まる砂利
物件の犬走りなどアプローチ以外の雑草対策なら「固まる砂利」も一案です。砂利をセメントや接着剤などで固める施工方法のことで、低コスト・簡単施工で3~5年ほど防草効果が持続します。ただし、強度が弱いため人が頻繁に歩く場所や駐車場には不向きです。
繰り返しになりますが、雑草対策は決して甘く見てはいけません。オーナーが実施に消極的な場合は、雑草がもたらす賃貸経営の損失を丁寧に説明し、できることから対策を始めてみてください。
※この事例は2022年4月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。
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