相談デスク

公開日:2022年7月12日

札幌でアパート2階通路崩落。共用部で起きる「不慮の事故」賃貸管理会社はどう防ぐ?

札幌でアパート2階通路崩落。共用部で起きる「不慮の事故」賃貸管理会社はどう防ぐ?
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老朽化、手抜き工事、共用部の「見えない瑕疵」にご用心

取り壊し予定の空きアパートで2階通路崩落

2022年7月6日、北海道札幌市の空きアパートで2階通路が崩落する事故が起きました。アパートは老朽化しており、翌8月には取り壊し予定だったと言います。しかし、広報誌の配布に訪れた女性が建物に立ち入ったことで2階通路の床が崩落。女性は約3m下に転落し、腕などを骨折する大けがを負ってしまいました。

取り壊し直前ではあったものの、ケガ人が出た以上、オーナーにも責任追及が及ぶ可能性があります。事実、警察は業務上過失傷害の疑いも視野に捜査を進めていると言います(2022年7月6日時点)。

今回、管理会社から寄せられた相談は、こうした共用部の事故に対して賃貸管理会社はどのような対策を講じるべきか、というものでした。

多くの管理会社にとって札幌の事故は他人事ではありません。事故を未然に防ぐにはどうすればよかったのか、あるいは、万一の事故に備えてどのようなリスクヘッジをしておくべきか。共用部の事故対策について基本を確認しましょう。

【相談ダイジェスト】

  • 北海道札幌市の空きアパートで2階通路が崩落。女性が大けがを負う事故が発生
  • 該当のアパートは老朽化しており入居者もゼロ、もうすぐ取り壊す予定だった
  • 今回のような事故を防ぐために管理会社はどのような対策をすべきだったのか
  • 万一の事故に備えて貸主側はどのようなリスクヘッジをするべきか

専門家の回答

既に無人の取り壊し予定物件、立入禁止の警告は明確に

取り壊し直前に起きた今回の事故、けがをされた女性はもちろん、思いがけず刑事責任の疑いをかけられることとなったオーナーや管理会社の皆さまには非常に気の毒なことだと思います。

加えて貸主側は、すでに誰も住んでいない空きアパートを事故があった翌月には取り壊す予定だったとのこと。事前に危険性を承知していたかどうかは分かりませんが、解体前に予期せぬ事故が起きてしまったことは非常に悔やまれます。

では、今回の事故を未然に防ぐために、アパートの管理会社はどのような対策を講じるべきだったのでしょうか。

 

基本的なことですが、まず言えるのは、建物内への立ち入りが明らかに危険な場合には外部に向けて明確に立入禁止の警告をしておくことです。「危険」「立入禁止」と書かれたテープや看板、チェーンポールなどをあらかじめ設置しておけば、外部者が建物に立ち入ることもなかったはずです。

また、警告があったにもかかわらず外部者が立ち入ったとしたら、敷地内に無断で侵入したとして「住居侵入罪」に当たる可能性も出てきます。その場合、さすがにオーナーが刑事責任を問われる事態にはなりにくいでしょう。

今回の件に関わった管理会社がどこまで対策をしていたかは定かではありませんが、外部者の生命とオーナーの資産を守るには、建物の危険性が分かった時点で物件周辺に危険を知らせる手立てを講じる必要があったと言えます。

危険個所の発見・報告・提案が大切

取り壊しだけでなく、まだ入居者がいるアパートでも、手抜き工事や経年劣化による不具合などで通常使用が危険になる場合も考えられます。その場合でも、修繕工事に入るまでは危険個所に人を立ち入らせない注意が必要となるでしょう。

手抜き工事といえば、2021年に東京都八王子市でアパート階段が崩落し、住人の女性一人が亡くなるという痛ましい事故がありました。そのときに問題となったのは施工者・則武地所の施工不良。外階段と踊り場を接続する木製部分が腐食していたことが階段崩落の原因でした。

そうした「見えない瑕疵」にはなかなか気づけないものですが、管理会社としては、それでも見抜けるように努力を続けなければなりません。塗装の剥がれや鉄部のサビなど物件の小さな不具合を見落とさず、違和感があれば小まめにオーナーに報告して計画的な修繕提案をしていきましょう。

また、築年の古い物件であれば、建物の不具合や欠陥を調べるホームインスペクション(建物状況調査)を提案するのも一案です。

主に中古物件の売買時に実施する調査ですが、賃貸住宅の現況確認にも有効です。調査費用はかかるものの、劣化の程度や欠陥の有無に加えて、今後予想される修繕内容・タイミングなどについてもアドバイスを貰えますので、ぜひ事故防止に役立ててみてください。

「施設賠償責任保険」加入をオーナーに勧める

今回のように、事故は思いがけないことから起きるものです。物件内の不慮の事故に備えるなら、被害を最小限に抑えるためにも「施設賠償責任保険」に加入するようオーナーに提案していきましょう。

施設賠償責任保険は、以下のケースで建物や設備が誰かに損害を与えてしまったとき、オーナーが被害者に支払う補償分をカバーしてくれる頼もしい保険です。

  • 所有または管理する施設や設備等の不備により、第三者に身体障害や財物損害を与えた場合
  • 業務活動中のミスにより第三者に身体障害や財物損害を与えた場合

オーナーの中には火災保険料を節約しようと施設賠償責任保険を付帯させない方も多いのですが、年間の保険料はアパート一棟でも数千円程度です。一方、人に被害が及んでしまうと損害賠償額は数千万円に上る可能性も。それを考えると保険料は決して高いとは言えません。

もちろん、施設賠償責任保険は無駄になることも多いですが、長い賃貸経営を考えると何も起きない方がむしろ幸運ですよね。今回のような不慮の事故が起きても対応できますし、見えない瑕疵による事故にも備えられます。建物内で起きるさまざまな事故リスクをカバーできる保険ですので、ぜひオーナーに加入を検討してもらい、安定経営のためのリスクヘッジを図っていきましょう。

※この事例は2022年7月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。

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