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驚愕、空き巣犯は「同じアパートの住人」管理会社にできるトラブル回避策とは?

2022.10.11
  • 相談デスク

    賃貸住宅の「空き巣被害」入居者募集で告知すべき?

    犯人は別の部屋の住人。全戸に知れ渡る最悪の展開に…

    今回、管理会社から寄せられた相談は、ファミリータイプの物件で起きた空き巣被害について、その旨を「入居者募集のときに告知すべきか」というものでした。

    話によると、逮捕された犯人は、意外にも同じアパートに住む入居者男性。無施錠だった玄関ドアから被害者宅に忍び込み、窃盗を働いたと言います。犯人にはすでに実刑判決が出たものの、犯人家族はその後も入居の意向を示しているとのこと。オーナーも同情的で、犯人家族の入居継続には反対していないそうです。

    一方、穏やかでないのが他の入居者。犯人逮捕の報道を知った被害入居者が、事件のことを他の入居者に触れ回ったため、すっかり全戸の知るところとなってしまいました。こんな状況で入居者募集をするとき、申込者には空き巣被害があったことを告知すべきなのでしょうか。

    相談ダイジェスト

    • ファミリー物件で空き巣被害。逮捕された犯人は別の部屋の入居者だった
    • 加害者家族は住み続ける意向。オーナーも同情的で、退去までは求めていない
    • 一方、犯人のことは被害者家族がアパート中に伝え、全員に知れ渡ってしまった
    • 入居者募集で空き巣被害のことを告知すべきかと相談

    専門家の回答

    トラブル回避には告知が無難

    結論から言うと、管理会社は申込者に対して事前に告知した方が無難です。

    物件で空き巣被害が起きても、それだけで心理的瑕疵とはならないため申込者に対して法律上の告知義務はありません。しかし、現実問題として、申込者が入居後に事件のことを伝え聞く可能性は高いでしょう。加えて、加害者家族は引き続き入居していますので、刑期を終えた加害者が戻ってくることも考えられます。もしそうなったとき、「知っていたら契約しなかった」と入居者クレームや訴訟に発展する恐れがないとは言えません。

    幸い、今回の空き巣原因は入居者の無施錠であり、加害者側のプライバシーを保護する必要もあるため、告知しなかったからと管理会社側が裁判で負ける可能性は低いものの、入居者感情には大いに悪化してしまいます。当時者はもちろん、他の入居者にまで飛び火して連鎖的な退去が起きるかもしれません。そうしたトラブルをあらかじめ回避するには、やはり募集時に告知をしておいた方が無難と言えるでしょう。

     

    告知では、加害者側のプライバシーに配慮して次の3点を伝えます。

    • 空き巣被害があった事実
    • 事件の日時
    • 加害者が他の部屋の入居者だったこと

    ただし、告知だけでは申込者の不安をいたずらに煽ることになりかねませんので、告知と合わせて、申込者が安心できる情報も添えたいところ。例えば、「事件後は物件内で特にトラブルが起きていない」「管理会社としても防犯に力を入れている」など、事件はすでに過去の出来事であり、物件には何も問題がないことを丁寧に伝えられるといいでしょう。

    これを機に防犯強化。設備設置で入居者フォローへ

    今回、無施錠が空き巣被害の直接の原因でしたが、それでも事件が起きたことは事実です。管理会社としては、既存入居者のフォローのためにも、また告知時に申込者の背中を押せる安心材料を得るためにも、防犯強化につながる対策を講じたいものです。

     

    そのひとつとして、検討したいのが「防犯カメラ」
    存在感のある防犯カメラを共用廊下などに取り付ければ、外部から侵入を躊躇わせるだけでなく、入居者に対しても牽制となります。今回のような事件の対策としては打ってつけの対策と言えるでしょう。ネックとなるのはコストですが、最近はネットワークカメラなど安価なカメラも多く登場しています。設置数を増やしたいときでも検討しやすいでしょう。

    それ以外にも、防犯性の高い鍵(ディンプルキー、カードキー、ロイヤルガーディアン等)への交換、補助錠・ドアガードプレートの設置、スマートロックの導入、ホームセキュリティの活用といった対策も挙げられます。

    目に見える形で迅速に防犯対策が進めば、既存入居者も、告知を受ける申込者も安心できるはずです。また、防犯対策をすることで、入居者への訴求力アップにも役立ちます。空き巣被害が起きたことは残念ですが、これを機に物件の防犯強化に力を入れ、入居率アップへとつなげていきましょう。

    退去に向けて加害者家族と交渉も選択肢

    ところで、事件の告知とは別の話となりますが、退去に向けて加害者家族と話し合うことも事後対応の選択肢のひとつです。今回、加害者家族は住み続ける意向を示しており、オーナーも反対はしていません。当然、賃貸借契約は継続となりますが、問題なのはオーナーの賃貸経営です。

    自宅(同じアパートではない)に住んでいるオーナーと、実際に物件で生活をしている入居者たちとでは、どうしても認識に差が生まれてしまいます。たとえオーナーが住まわせてあげたいと思っても、他の入居者からの反発は必至でしょう。実際に退去という形で反発が表面化すれば、賃貸経営へのダメージは募集時の告知以上に大きくなってしまいます。

    そうした二次被害を避けるため、仮に加害者家族を住まわせるにしても、賃貸経営を守ることにも目を向けなければなりません。例えば、加害者家族の入居継続の希望を受け入れる代わりに、期間を「次の更新期日まで」に区切るなど、オーナーの思いを尊重しつつ、妥協点を見つけていきましょう。オーナー、加害者家族、他の入居者、それぞれが納得できそうな落としどころが見えてきたら、管理会社は交渉や覚書の取り交わしなど、事態の収拾に向けて実務を粛々と進めていきましょう。

    なお、賃貸借契約に「公序良俗に反する行為をした場合は契約解除」といった内容の文言があれば、より話をまとめやすくなります。改めて契約内容を確認してみるのもいいかもしれません。

    ※この事例は2022年9月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。

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