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公開日:2022年11月8日

入居審査、管理会社は「アリバイ会社の嘘」どう見抜く? 騙されないためのポイント解説

入居審査、管理会社は「アリバイ会社の嘘」どう見抜く? 騙されないためのポイント解説
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アリバイ会社が関与? 事例に学ぶ「入居申込書の嘘」対策

ポイントさえ押さえれば嘘は見抜ける

質の良い入居者を選び、不良入居者を弾く入居審査。管理会社には適切な判断が求められますが、入居者の中には「アリバイ会社」を使って虚偽の申込書を提出するケースも。アリバイ会社の嘘は実に巧妙で、見抜けずに不良入居者を通してしまうことも珍しくありません。

今回、管理会社から寄せられた相談も、「アリバイ会社が関与した入居申込書の嘘を見抜くにはどうすればいいか」という内容でした。確かに手強い相手ですが、それでもポイントさえ押さえれば嘘には必ずほころびが見つかるもの。ここでは実際にあった事例を参考にアリバイ会社を見破る基本をご紹介します。

【相談ダイジェスト】

  • 入居審査で通した入居者が問題行動の多い不良入居者だった
  • よくよく調べてみると、入居申込書の嘘が発覚
  • 審査時の在籍確認などにはアリバイ会社が関与していたらしい
  • アリバイ会社が関わる入居申込書の嘘を見抜くにはどうすればいいかと相談

アリバイ会社の関与が疑われる2つの事例

【事例1】渋谷から郊外に来た高収入カップル

最初の事例は、東京都渋谷区から郊外に移住を考えている高収入カップル

申込者の40代男性は大手ゲーム会社勤務で、年収900万円。同居の30代女性も年収500万円で、世帯年収1000万円を超える優良な申込者でした。現在は、繁華街に近い家賃30万円の2LDKに住んでいると言います。

一方、申し込みがあった物件は、閑静な住宅地にある郊外の6LDKで、家賃12万5000円通勤時間が30分以上増えるものの、転居理由に「今より家賃を下げたいから」を挙げているとおり、毎月の家賃は半額以下に。広めの部屋を希望する理由については、「部屋によってコンセプトを変え、用途別に使い分けたいから」と話していました。

申込内容に違和感。不審点は放置しない

一見、問題なさそうな申し込みですが、冷静に考えてみると不審点がいくつか見つかります。そもそも世帯人数2人に対して6LDKはどう考えても異常ですし、転居理由の「家賃を下げたい」は分かるものの、勤務先からも遠く離れた郊外に移住するのも疑問が残ります。入居後早々に退職する可能性もないとは言えません。

さらに気になったのは、聞き覚えのない仲介業者。念のため仲介業者のWEBサイトやSNSを調査したところ、そこにあったのはビジネスライクとは程遠い、絵文字や若者言葉だらけのページでした。不信感とともに、アリバイ会社の予感が担当者の頭をよぎったと言います。

不審点は徹底追及。嘘を見抜いて入居を防ぐ

そこで担当者は、追加審査として問題の仲介業者に電話確認を実施。さらに仲介業者から聞き出した申込者の勤務先にも在籍確認をしたところ、「在籍はしているが勤続年数は答えられない」と言われたそうです。

なぜ、勤続年数を答えられないのか…?

ここまで来ると限りなく黒に近いですが、担当者は確証を得るべく、今度は勤務先企業の代表電話を経由して遠回りの在席確認を行ないました。結果は、「該当する在籍者なし。仲介業者から聞いた電話番号も取り扱っていない」とのこと。もちろん審査落ちとなりました。

なお、申込者からは身分証明書のほかに源泉徴収票も提出してもらいましたが、偽造されたものであることが後に分かっています。アリバイ会社は書類の偽装工作を当たり前に行ないますので、書類の提出があったからと安易に信じないよう気をつけましょう。

《事例1の審査ポイント》

  • 転居理由は納得できる内容か
  • 身分証明書などの提出書類は本物か
  • 勤務先の素性や連絡先に問題はないか
  • 仲介業者の素性は確かか(WEBサイトやSNS等を確認)

【事例2】人事・営業・経理担当のフリーランスのデザイナー

もうひとつの事例は、就職のために上京したという40代男性からの申し込み。就職先の見込み年収は400万円で、これまではフリーランスのデザイナーとして地方で働いていたと言います。申込書には就職先の情報や、正社員雇用であること、人事を担当することなどが書かれていました。

申込書に不審点はなく、そのまま通過の見込みでした。しかし、入居審査の一環で担当者が申込者に電話確認をしたところ、雲行きが怪しくなります。

担当者「就職先の業務内容を改めて教えてくれますか?」
申込者「フリーランスのデザイナーです」
担当者「申込書では正社員雇用となっていますが?」
申込者「あ、はい、正社員です…」

小さなことですが、気になる言い間違い…。申込者の話し方にも落ち着きがなく、担当者の不信感はさらに強まったと言います。

入居審査では「仲介業者の審査」も重要

そのため、担当者は就職先の会社に在席確認を実施。在籍は確認できたものの、申込書では「人事担当」と書かれていた業務内容が、会社側では「経理部に所属」とのこと。また、事前に提出してもらった雇用契約書も確認すると、そこには「営業部」との記載が…。矛盾だらけの情報にアリバイ会社の関与が疑われました。

こうなると、怪しいのは仲介業者です。

さっそくWEB検索したところ、仲介業者のサイトはトップページ1枚で完結する簡素な作りで、企業理念や業務内容、アクセスといった情報が申し訳程度に掲載されているだけ。何の企業紹介にもなっていないあたり、アリバイ会社によくあるWEBサイトと言えます。

また、事務所がある建物をGoogle Mapでチェックしたものの、外観だけでは会社の様子が分からなかったため、実際に現地を訪問することに。さすがに事務所内までは見られませんでしたが、小さな事務所で入口も1箇所しかないのに対して、ポストには10社を超える会社のラベルが貼りつけられていました。おそらく法人登記を隠れ蓑に在席確認のみ対応する会社が集まっているのでしょう。

限りなく黒に近いため審査落ちとなりました。

《事例2の審査ポイント》

  • 申込者の勤務先情報に矛盾はないか
  • ヒアリング時に申込者の態度に不審点はないか
  • 仲介業者のWEBサイトに具体的な会社紹介が載っているか
  • 仲介業者の事務所に怪しい点はないか

保証会社の審査を通っても安心してはいけない!

ふたつの事例を紹介しましたが、実はどちらも保証会社の審査を通過していたという共通点があります。「保証会社の審査を通ったなら大丈夫だろう」と多くの管理会社が思いがちですが、実際にはその油断が入居審査の落とし穴となることも。少しでも違和感を覚えたなら、その正体を徹底的に追及すべきでしょう。

とはいえ、アリバイ会社を使った申し込みは苦戦物件で来ることも多いものです。担当者の中には、違和感には目をつむって審査を通したい気持ちも少なからずあるかもしれません。

しかし、管理会社の使命はオーナーの賃貸経営を守ること。管理会社の審査はオーナーの賃貸経営を守る最後の砦と言えますので、ぜひ入念な審査を心がけてください。

▶関連記事:【コラム】賃貸経営を守る「入居審査」。気をつけるポイントと判断基準の作り方

 

※この事例は2022年11月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。

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