相談デスク

公開日:2023年2月7日

家賃保証会社の「追い出し条項」無効判決。オーナーに定期借家契約を勧める切り口になる?

家賃保証会社の「追い出し条項」無効判決。オーナーに定期借家契約を勧める切り口になる?
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最高裁判決で、家賃滞納による明け渡し条項「無効」

オーナーに「定期借家契約」勧める切り口になるかと相談

家賃滞納者を追い出す家賃保証会社の「追い出し条項」が2022年12月、最高裁で無効判決となり世間の注目を集めました。賃貸管理会社や賃貸オーナーの中には、「今後は滞納者を退去させられなくなるのでは」と不安に思っている方もいるようです。

今回、このニュースに関連して賃貸管理会社から、「判決をもとに定期借家契約の優位性をオーナーにアピールしたいが可能か」という相談が寄せられました。あらかじめ定めた契約期間が満了すると更新せずに契約終了となる「定期借家契約」。不良入居者から物件を取り戻しやすい契約形態ですが、オーナーにお勧めするにあたり、この判決は追い風となるのでしょうか。

【相談ダイジェスト】

  • 家賃保証会社が保証契約に定めた家賃滞納者の「追い出し条項」の是非をめぐり裁判
  • 最高裁判決で、条項が消費者契約法に基づき無効と判断
  • 今後、家賃滞納者の退去が難しくなるのではと心配の声があがる
  • 滞納者を退去させやすい定期借家契約を勧めるオーナーアピールになるかと相談

専門家の回答

争点は「保証契約の条項」。賃貸借契約ではないので注意

結論から言うと、オーナーに定期借家契約を検討してもらう判断材料とするには今回の判決は少々弱いでしょう。というのも、裁判内容をよく見ると、無効となった追い出し条項は家賃保証会社が賃借人と交わす「保証契約」の条項です。賃貸借契約(普通借家契約)の条文に問題があったわけではなく、従来の裁判による建物明け渡し請求を制限するものでもない以上、オーナー(賃貸人)への影響は限定的といえます。つまり、今回の判決は、定期借家契約を使うべきかどうか、という議論とは直接つながらない話なのです。

今回の裁判を簡単に要約すると、保証会社が設けた借主に不利となる契約条項が一部差し止められた、という話になります。問題となった条項は次の2点でした。

① 家賃を3ヶ月以上滞納すれば、借主に知らせることなく賃貸借契約を解除できる。(無催告契約解除条項)
② 借主が家賃を2カ月以上滞納し、連絡がつかず、電気・ガス・水道が長く未使用などの条件がそろえば明け渡しがあったとみなす。(みなし明渡条項)

①の「無催告契約解除条項」については、そもそも賃貸借契約の解除は法的手続きを踏んだ賃貸人の手によってなされるべきであるところ、賃貸人ではなく保証会社が、借主に連絡することなく“無催告で解除できる”としている点の適法性が問われました

また、②の「みなし明渡条項」については、保証会社の一方的な判断によって「明け渡しがあったとみなす」とされてしまうことで、借主の部屋に住む権利が一方的に制限され、“法律上の手続きなし”に建物明け渡しが実現してしまう点が問題視されました。
上記2点について最高裁は、どちらの条項も借主に不利益を与えかねないものと判断。消費者契約法に基づき無効とする判決を下したわけです。

ただ、誤解せずにおきたいのは、この判決によって「保証会社が機能しなくなるわけではない」ということ。あくまで上記2点の条項(保証会社の手による強引な賃貸借契約の解除)が無効とされただけで、保証会社も賃貸人も、督促から訴訟、強制執行まで適切な手順を踏めば悪質滞納者をお部屋から退去させることは引き続き可能です。
もし周囲に心配されているオーナーがいれば、ぜひ裁判内容を説明し、安心させてあげてください。

賃貸トラブル対策として「定期借家契約」をアピール

とはいえ、この判決で日本の「借主保護」の姿勢が改めて鮮明になったのも事実です。多くのオーナーにとっても、家賃滞納による建物明け渡しについて考える良い機会になったことでしょう。「借主ともめずに物件を取り戻したい」「不良入居者に居座られたくない」と思うオーナーに対し、普通借家契約よりも不良借家人に対する対抗手段の多い定期借家契約をアピールすることは、一定の効果を発揮するものと思われます。

ご存じのとおり、定期借家契約は再契約する・しないにかかわらず、期間満了によりいったんは契約が終了することになります。契約の相手方が契約違反や滞納を繰り返す悪質な入居者だった場合には、たび重なる契約違反を根拠に「再契約しない」とする主張も可能です。

定期借家契約の運用には多少の工夫も必要ですが、この機会にオーナーの意向をうかがってみてはいかがでしょうか。また、当社では定期借家契約を有効活用する業務サポートも行なっております。興味のある管理会社様はぜひ一度お問い合わせください。

※この事例は2023年1月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。

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