
【事例・プロコール24】株式会社LEAP OVER
株式会社LEAP OVER
代表取締役社長
千葉 亮一 様
物件を預かる賃貸管理会社にとって、悩ましいのが賃貸オーナーの「認知症」問題。ひとたび意思能力がないと判断されると、入居者募集をはじめ、契約の更新・解除、原状回復工事など賃貸管理に関する多くの業務が滞りかねません。
今回、管理会社から寄せられた相談も、オーナーの認知症発症が原因で管理業務に支障が出ているとのことで、「対応方法を教えてほしい」という内容でした。何でも、オーナーは介護施設に入所してしまい、周囲に頼れる身内もいないそうです。一方、管理物件にはまだ入居者が暮らしており、今後修繕なども必要になってきます。こんなとき、果たして管理会社はどのように対応すべきでしょうか。
相談ダイジェスト
オーナーが認知症を発症したことで、入居者募集など多くの業務が滞っているという今回のケース。無許可で賃貸経営の判断を下すのは抵抗があると思いますが、結論を言うと、たとえ独断で募集を取り止めたとしても債務不履行として管理会社が責任を問われる可能性は低いでしょう。
というのも、民法において認知症を患った者には意思能力がないと見なされ、意思能力のない人の契約行為は「無効」と定められています。そのため、入居者募集で申し込みがあっても認知症のオーナーは入居者と賃貸借契約を結ぶことができません。そういう状況ですので募集の中止はやむを得ず、申込者や仲介会社の迷惑を考えればむしろ当然の処置と言えます。
とはいえ、入居者が今も住んでいる以上、管理会社として管理業務が十分に果たせない状態を放置するわけにもいきません。
そこで利用したいのが「成年後見制度」です。成年後見制度とは、精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害など)により判断能力が不十分な人を保護する制度で、家庭裁判所が選任した後見人を通じて財産管理などの意思決定を行なうことができます。
今回のように、オーナーの判断能力が低下した後で同制度を利用する場合は「法定後見」となり、家庭裁判所が最も適任と判断した者が法定後見人に専任されます。オーナーに身寄りがない場合は、介護施設などの協力を得て市町村長から後見開始の申し立てをしてもらいます。
また、後見人の選任前に建物修繕が必要になった場合でも、その内容が「保存行為」として適切な内容・金額であれば、後から後見人に追認してもらうことを前提に実施ができます。その際、管理会社が立て替えた代金を賃料収入と相殺する旨を後見人に通知し、追認を得ることになります。言うまでもありませんが、修繕内容や金額が適切でない場合は追認を拒絶される可能性もあるので注意しましょう。
このように、意思能力のない本人に代わってひとまずの資産運用が可能となる成年後見制度ですが、法定後見だと法定後見人が決まるまでの間はどうしても業務が滞ってしまいます。加えて、たとえ後見人が選任されても、後見人の役割は本人の資産を管理・維持すること。投資的な資産運用は最低限の範囲に制限される点も注意が必要です。
そうしたリスクを回避するため、できることならオーナーが認知症を発症する前に対策を講じ、万が一のときもスムーズに賃貸経営を回したいもの。その対策として検討したいのが、本人が自分の意思で後見人を選定できる「任意後見」と、家族が財産を管理できるように契約を結ぶ「民事信託」(家族信託)です。
任意後見とは、法定後見と異なり本人の判断能力が十分なうちに任意後見人を決める制度で、あらかじめ公正証書で任意後見契約を締結することになります。本人の意思で後見人を指名できるうえ、資産活用の希望を契約書に盛り込むこともできますので、より本人の意思が反映されやすくなります。
一方、民事信託(家族信託)は、公正証書により信頼できる親族などに財産管理を託す制度のこと。信託契約を結べば、本人の判断能力に関係なく、すぐに契約効果が発揮されますので、賃貸経営を滞らせることなく次代へ引き継ぐことができます。
このように、認知症の発症前であればオーナーのニーズに合わせた柔軟な対策が可能となります。認知症は誰しも起こり得る病気ですので、オーナーやその家族などと話し合い、万が一の備えをしておくべきです。特に、今回のようにオーナーに家族がいない場合はより早いうちから対策を練っておきましょう。
また認知症とはいかないまでも、オーナーの心身に異変を感じるなら、地域包括支援センターの利用をオーナーやその家族に勧めてみるのもひとつです。地域包括支援センターは、対象地域に住んでいる65歳以上の高齢者、またはその支援者などが利用できる福祉施設です。
高齢者の困り事に対して必要なサービスや制度を紹介してくれたり、自立した生活が継続できるように介護予防を目的とした支援をしてくれたりしますので、オーナーの高齢リスクに対して良き相談相手になってくれるでしょう。
オーナー自身はまだまだ大丈夫と思っていても、認知症はいつ発症するか分からないものです。少しでも異変を感じたら、大事に至る前に地域包括支援センターのような相談機関を紹介するのも賃貸経営の将来的な安定化につながるかもしれません。
※この事例は2023年3月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。
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