相談デスク

公開日:2023年4月4日

賃貸入居者がペットを「無断飼育」。契約違反を理由に強制退去は可能?

賃貸入居者がペットを「無断飼育」。契約違反を理由に強制退去は可能?
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ペットを無断で追加飼育。契約違反で入居者を追い出せる?

「猫1匹のみ飼育可」の物件だったはずが…

今回、管理会社から寄せられた相談は「ペットを無断飼育した入居者を追い出せないか」というものでした。
よくよく話を聞いてみると、当初からペット可で募集していた物件で、許可しているペットは猫のみ、入居者とも「猫1匹のみ飼育可」と契約で取り決めていたとのこと。しかし、いつの間にか猫に加えて犬が1匹増えていたそうで、無断飼育について入居者は、「部屋探しの時にペット可の条件で見つけた部屋だから大丈夫だと思った」と悪びれる様子もないそうです。

一方、ペットの飼育について契約時に覚書まで交わした経緯もあり、今回の契約違反にオーナーが激怒。管理会社に対して入居者の強制退去を求める事態になってしまいました。しかし、無断飼育以外で家賃滞納やマナー違反があったわけでもなく、犬のことで他の入居者からクレームが来ているわけでもありません。
この場合、管理会社はオーナーの希望通り入居者を強制退去させられるのでしょうか。あるいは強制退去以外に望ましい解決策はあるのでしょうか?

【相談ダイジェスト】

  • ペット可(猫のみ)物件で、入居者とは「猫1匹のみ飼育可」の約束で契約を交わしていた
  • ところが後日、入居者が無断で犬を1匹追加で飼っていたことが判明
  • オーナーは入居者の強制退去を求めているが可能かと相談
  • 強制退去以外に望ましい解決策はあるのか?

専門家の回答

信頼関係の破壊と言えず、強制退去は困難

結論から言うと、ペット可物件で「1匹多く飼っていた」というだけで、信頼関係の破壊を理由に賃貸借契約を解除するのは難しいでしょう。
仮に「ペット不可」の物件で無断飼育が分かったのであれば退去させられる可能性もありますが、今回はペット可で募集していた物件であり、もともと「猫1匹のみ飼育可」ではあったわけです。加えて、犬の鳴き声や糞尿の放置で他の入居者が退去するといった実害が出ているわけでもありません。

もちろん、反省の色が見えない入居者の態度は気になりますし、オーナーが怒るのも無理はないでしょう。しかし、無断とはいえ追加で犬を1匹飼っていたことだけを理由に、他に問題のない入居者を無理やり追い出すのは難しいと言えます。怒っているオーナーに事情を分かってもらうのは大変だと思いますが、管理会社が仲裁に立ち強制退去以外の解決策を模索すべきでしょう。

賃料増額・敷金追加でオーナーが納得できる解決策を用意

そこで今回の落としどころのひとつとして、入居者には退去を求めない代わりに、賃料増額や敷金追加をペット飼育の条件として要求してみるのはどうでしょうか。

特に賃料増額はオーナーの説得材料としても重要ですし、犬と猫の2頭の飼育となれば、部屋の受ける物理的なダメージ、そして原状回復費用の増加は予測できるところです。退去時精算で入居者とトラブルになったり、高額な原状回復費用が回収不能になったりといったリスクを低減するためにも金銭的な備えをしておくことが有効でしょう。値上げ額について特に相場はありませんが、物件があるエリアの「ペット可」で得られるプラス賃料分を参考に少しだけ上乗せするのが無難です。

もちろん入居者が渋る可能性もありますが、強制退去はできないまでも、賃料増額や敷金追加が難しいなら無断飼育の犬を手放してほしいといった要望は伝えられます。「このまま犬を飼い続けたいなら契約の見直しが必要です」と毅然とした態度で交渉したいものです。

また、上記の要求を賃借人が受け入れ無事に入居継続が決まったなら、飼育頭数の制限(これ以上飼育させない)やマナー徹底に関する覚書の取り交わしも改めて行ないます。合わせて、予防接種の記録など追加ペットの飼育に関する必要書類も忘れずに提出してもらいましょう。

飼育を許諾するしかない以上、ここでの取り決めが将来のペット被害を予防する重要な布石となります。念には念を入れて、トラブルを起こさない慎重なペット可運用を心がけてください。

《必要書類の例》

  • 犬:犬鑑札、狂犬病予防注射済証、ワクチン接種証明書、避妊・去勢手術証明書
  • 猫:ワクチン接種証明書、避妊・去勢手術証明書

将来、退去を迫る可能性を含めた覚書の作成

ちなみに、賃借人と交わす覚書には、「将来それが起こった際には強制退去になり得ること」を明記しておけるとベターです。

以下の項目は、貸主側が必ず退去を迫れると明言できるものでもありませんが、こうした内容について覚書で釘を刺しておけると、将来にわたるスムーズな物件運営につながります。

《強制退去となり得る事態の例》

  • しつけ不足に起因する無駄吠えにより、物件内入居者や近隣住民から苦情が頻繁に寄せられる
  • 飼育中の犬に他の入居者の猫が怯えてしまい、猫飼育のテナントが退去する
  • 飼育中の犬が他の入居者や、その飼い猫に噛みつくなどして怪我をさせる事態
  • 物件内に糞尿が放置され、再三にわたる注意にも応じない
  • 覚書で定めた増加分賃料や敷金の未納、複数月にわたる賃料滞納

※この事例は2023年3月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。

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