相談デスク

公開日:2023年7月6日

退去時に元借主がエアコンを持ち去った。原状回復させるにはどうすればいい?

退去時に元借主がエアコンを持ち去った。原状回復させるにはどうすればいい?
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元借主が退去時にエアコンを持ち去り…。原状回復させるには?

元借主の窃盗か。室内には別のエアコンの残置物も

今回、管理会社から寄せられた相談は、「退去した元借主にエアコンを持ち去られた場合、どのように対応すればいいか」というものでした。

トラブルがあったのは2LDKの物件で、LDKに設置してあった2014年製エアコン1台が退去後の現地確認でなくなっていることが発覚。一方、LDK以外の2部屋には、元借主が自身でつけた2009年製エアコン2台がそのまま残されていました(※)。
勝手な持ち去り行為について管理会社は「窃盗」を疑っているそうですが、元借主にはまだ事情を聞けていないとのことです。

さて、こうしたエアコンの持ち去りがあった場合、管理会社は原状回復に向けてどのように対応すればいいのでしょうか?

 

※LDK以外の2部屋には、あらかじめエアコン用のスリーブが設けられており、取りつけにあたり借主に特に許可を求めておらず、契約条項にも特段の記載はなかった。

【相談ダイジェスト】

  • 2LDKの物件で、元借主が退去時にLDKのエアコンを持ち去ってしまった
  • さらに、LDK以外の2部屋には元借主が設置したエアコンが残ったままに
  • 元借主にはまだ事情を聞けていないが、管理会社としては「窃盗」を疑っている
  • 原状回復を請求するにあたり、今後どのように対応すればいいかと相談

専門家の回答

故意か過失か、まずは事情確認を優先

元借主に事情を聞けていないとのことですが、まずはエアコンの持ち去りが故意なのか過失なのかを判断するためにも、元借主に話を聞くことから始めましょう。もしそれで、持ち去りが故意だと分かったなら(音信不通で確認が不可能な場合も含む)、貸主側は窃盗事件として警察への告発を検討することができます。また、警察沙汰にする・しないを交渉材料とすれば、その後の原状回復について元借主との交渉もやりやすくなるでしょう。

ただし、たとえ故意が強く疑われる場合でも、相手方が正直に告白するとは思えません。現実問題として故意の立証はほとんど不可能と見た方がいいでしょう。

一方、元借主が過失と主張する場合、元借主の責任とはいえ、故意のときほど管理会社は強く出られません。元借主に対してどのような形で原状回復を請求するか、元借主と妥協点を探りながら冷静に交渉を進める必要があります。

 

なお、元借主に対して、事情を確認する前から「窃盗」という言葉を使わないよう注意してください。現時点では元借主が転居先に誤って持っていってしまった可能性もないとは言えず、窃盗ではなかった場合、問題が余計にこじれる恐れがあります。エアコンの持ち去りに腹が立つのは当然ですが、まずはぐっとこらえ、落ち着いた態度で話し合いに臨みましょう。

LDK側エアコンは「取りつけ工事費の請求」を

では、元借主に原状回復を請求するにあたり、どのような対応が考えられるでしょうか。

まず前提として、元借主に課される原状回復義務とは、本来ならLDKにあった2014年製エアコンを元の状態に設置し直すことになります。しかし、元借主が転居先からエアコンを持ってきて設置し直すとなると、元借主もすぐに応じてくれないでしょうし、いつ元通りになるのかも分かりません。

それなら貸主側でエアコンを買い替え、その買い替え費用を元借主に請求できればスムーズですが、ここで問題となるのが設備の耐用年数です。
壁かけ型エアコンの耐用年数は6年とされており、2014年製エアコンの設置年数を考えると残存価値は1円に過ぎません。そのため、買い替え費用の全額を請求したくとも、「持って行ってしまった1円のエアコンの代わりに、新品のエアコン代を払え」と主張するのは法的に難しいのです。

となると、次善策は、エアコンの再設置にかかる取りつけ工事費の負担のみを元借主に請求することでしょう。

実は取りつけ工事費も上記の残存価値に含まれ、本来なら請求は難しいのですが、一方で元借主がエアコンを持ち出さなければ発生しなかった負担とも言えます。そのことを元借主に伝えたうえで、新品のエアコンの費用を貸主側で持つ代わりに、工事費を支払ってもらえるよう交渉するのです。「原状回復」の意味合いからも、元借主の納得は得やすいはずです。

残置されたエアコンは残すのも手

一方、残置物のエアコンについても、本来の原状回復を求めるなら、元借主の負担で機器を撤去することになります。しかし、LDKのエアコン再設置と同様に、こちらも元借主が対応してくれるまで大人しく待っているのは非現実的。かといって、たとえ「こちらで撤去しますので、費用だけ負担してください」と譲歩しても、元借主が素直に従ってくれるとも限りません。

そこで、事前にオーナーと進めておきたいのが、あえて残置物のエアコンを撤去せず、次の入居者に使ってもらうという選択肢の検討です。

2009年製のエアコンなので状態の見極めや故障リスクなどを十分に検討する必要はありますが、まだまだ使える状態なら入居者募集に役立てられます。残置物ありでの運用はトラブルも発生しがちですが、あらかじめ前入居者の残置物のため修理等の維持管理はしない・ただし撤去費用の一部を貸主側が持つなどの約束があれば、次の入居者に使用させてもスムーズに進むはずです。

想定される最悪のケースは、元借主が「LDKのエアコン費用や残置物の撤去費用をどちらも払わない」と主張してきた場合です。しかし、「残置物扱いで運用する」という手段を採用する余地があるなら、「撤去費用はもういいので、せめてLDKの取りつけ工事費は払ってください」という譲歩案も示せます。

賃貸設備を持ち去るような人間ですから、交渉は一筋縄ではいかない場合も十分考えられます。管理会社として、あらゆるケースを想定したうえでオーナーと作戦を練り、交渉を有利に進めるための準備をしておくといいでしょう。
また、せっかく話がまとまっても約束を破られる恐れもありますので、最終的な合意内容は合意書や覚書などにまとめ、証拠として残しておけると安心です。

※この事例は2023年7月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。

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