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第17回 今後仲介業は存在し得るか

2010.05.24
  • 全国賃貸住宅新聞

    強まる「仲介手数料0」の傾向

    スマートフォンで急変する物件検索

    「仲介手数料0円の時代が必ず来る!」

    最近、この思いが日々強くなり、単なる予想から確信に変わりつつあります。
    世の中が急速に変化しようとしています。そして、今までのビジネスモデルが通用しない、という状況が生まれているのです。
    10年前に大手仲介会社が賃貸仲介手数料を0.5ヶ月にすると発表しました。業界にかなりの衝撃が走ったことを覚えています。
    他に追随するところはあまりないだろうと当時言われましたが、現在関西地方などではかなり浸透していますし、首都圏でも同じことが起こっています。
    そして、0.5ヶ月どころか、近い将来仲介手数料というものは「0」になってしまうのではないか、そんな気がしてなりません。
    理由は、5つあります。

    インターネットというものが一般個人に普及し始めたのは、1995年「Windows95」が発売された頃からだと記憶しております。
    パソコン環境は、1人に1台の専用パソコンを用意していないところがほとんどでした。1991年にNECがカラー液晶のノートパソコン(PC-9801NC40)を発表したときの価格は738,000円。重さが3.5㎏で、ハードディスクが40MBでした。
    あれから20年近くが経過し、ノートPCは大体5万円くらいで買えるようになり、ハードディスクは320GBが一般的になりました。容量は約8,000倍になって、価格は15分の1になりました。

    そして、これからは「スマートフォン(高機能携帯電話)」の時代です。「iPhone」が大変人気ですね。重さは133gです。オバマ大統領愛用の「Blackberry」や、ドコモから最近「XPERIA」も発売されています。
    スマートフォンは、一応「携帯電話」ですが、これは「手のひらに乗るパソコン」と考えたほうが良さそうです。あんな小さい画面でパソコンではないだろう、と思われた方もいるでしょうが、携帯の画面に慣れている若い人にとっては、スマートフォンのサイズは十分な大きさでしょう。
    最近では、従来使っている携帯電話を解約せず、2台目の携帯端末としてスマートフォンを持つ人も増えてきました。これはまさに小型PCを持ち歩いているということです。

    スマートフォンは世の中を変えると言われています。リクルートが運営する不動産検索サイト「スーモ」では、既に公開されている分譲マンション物件情報に加え、賃貸物件情報についてもiPhoneアプリの「セカイカメラ」への対応を開始するようです。
    iPhoneに内臓されたカメラを街に向けるだけで、物件情報があぶりだされるようになります。

    アメリカのGoogleでは不動産ガイド「Real Estate in Google Map」で不動産情報が無料で登録でき公開されています。
    日本のGoogleの検索オプションで検索できるのは「お店やサービス」しかありませんが、そのうちここに「不動産賃貸物件」という項目が追加されるのでしょう。
    「ストリートビュー」を使えば街の雰囲気も机上でほとんどわかりますし、部屋内部の動画も当然閲覧することができます。

    注)2017年現在、このサービスは終了しています。

    入居者は、自分で簡単にさまざまな物件情報にたどりつくことができます。
    首都圏不動産公正取引協議会(RSC)の調査のよると、ネットで部屋探しをする人のほとんどは業者に1~2社しかいかず、2~3戸程度に絞り込んで来店しているようです。
    自分で選んでいるのです。そうなると、不動産仲介営業マンはただの「カギ開け案内人」にすぎません。
    はたして、カギを開けてもらっただけなのに、家賃7万円の部屋を選んだ時に7万円の手数料を払う気になるでしょうか?

    最近はお客さんのほうが物件の情報に詳しいことも珍しくなくなって、仲介営業マンが「クロージングトーク」をしなくなっています。本当にただ「鍵を開けている」だけの人が多くなってきました。
    また、昔と違って若い人が「歩合制」でなくて「固定給」を望むようになって、いわゆる「営業」マン(ウーマン)がいなくなってしまいました。

    手数料より管理料へ。変化する収益構造。

    また、昨今の「管理ビジネス」への関心の高まりは「仲介手数料『0』」を加速するでしょう。
    しっかりいい管理をして、オーナーからフィーをいただければ、何も入居者から仲介手数料を無理にとる必要はありません。
    この原稿を書くためにGoogleで「賃貸仲介手数料無料」で検索してみたら……、なんだ、既に多くの業者がやってました(笑)。
    そもそも賃貸仲介業は赤字体質です。儲からない。大事なのは「管理」です。「管理」をいまからしっかりやっていないと、「仲介」の売上がメインの会社は近い将来、大変厳しいことになります。

    はたして、「仲介業」というものは存在し得るのでしょうか?
    人が介在することによる「マッチング」を望むニーズもある程度は存在するでしょうから、まったく無くなるとは思いませんが、今のようにたくさんの業者は必要ないでしょう。
    もっと簡易な「マッチング店舗」になっていくのではないでしょうか。ただ、どのような形であれ、言えることは「手数料は0円になっていく」ということです。

    (筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2010.5.24掲載)

    • 藤澤 雅義(フジサワ マサヨシ)/Mark藤澤
      オーナーズエージェント および アートアベニュー 代表取締役
      プロフィール:

      オーナーズエージェント株式会社 代表取締役であると同時に、
      賃貸管理会社 株式会社アートアベニューの代表取締役を務める。

      しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、
      社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。役職呼称を禁止にしている。

      あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、
      日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に時津風部屋)を応援している。

      「現場」で運用の実務にあたっているものが、一番不動産のことを理解し、
      的確な投資分析及びオーナーの収益に貢献をすることができ、
      また、仲介手数料収入に依存する仲介業者ではなく、安定収入のあるPM会社こそが、
      クライアントの側にたって本当のアドバイスができる、が持論。

      2001年、不動産会社向けコンサルティング企業であるオーナーズエージェント株式会社を立ち上げ、代表取締役に就任。
      また、アメリカのIREM®(全米不動産管理協会)発行の国際ライセンスである
      CPM®(米国不動産経営管理士)の日本での普及活動にも尽力。IREM JAPANの創学メンバーである。

      著作に、
      ・『賃貸経営マイスター』(住宅新報社)(Amazonで購入
      ・『「収益改善」&「リニューアル企画」マニュアル』(総合ユニコム)(購入
      ・『200万円からはじめるマンション投資術』(主婦の友社発行)(Amazonで購入

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