全国賃貸住宅新聞

公開日:2010年8月25日

第20回 IT進化が不動産業を変える

第20回 IT進化が不動産業を変える
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入居者負担の仲介手数料がオーナーへ移行

Googleで不動産検索開始

5月末の17回目のこの連載で、「賃貸仲介手数料が0になる!」というお話をしました。
業界の方に少々反感を買うかもしれないと思いましたが、賃貸フェアでもそのような内容の講演をしたところ「私もそう思います…」といった反応で、否定をされませんでした。現場で頑張っていらっしゃる方は、そういう時期が近づいていることを肌で感じているのでしょう。

「仲介手数料が0になる」理由としては、(1)Web環境の充実、(2)スマートフォンの浸透、(3)仲介営業力の低下、(4)賃貸管理ビジネスの台頭、(5)デフレ・不況、の5つをあげました。
また、アメリカのGoogle Mapでは、不動産検索ができて、地図上に物件がちりばめられていて、その掲載登録が「無料/フリー」だと、そのうち日本にもやってくるのでは、と書きました。
そうしましたら、思ったより早くやってきましたね。今月12日の午後、何気なくGoogle Mapで検索していたら、いきなり地図上に物件情報の赤丸が無数に出てきました。

注)2017年現在、このサービスは終了しています。

今は、ジ・アース社(元アイ・ディー・ユー)のものだけですし、まだまだ本格稼動までは時間がかかるかも知れませんが、そのうち各社の情報が「無料」でたくさん掲載されていくのでしょう。
また、来年からドコモの携帯端末は、格段に速くなっていくらしいですし(LTE規格:エリアも含め本格稼動はまだちょっと先? 当初はFOMAと併用型携帯電話になるとのこと)、iPadのような「タブレット型PC」も今後は主流になると言われています。
「ネットで簡単に部屋探し」はますます加速するでしょう。「カウンター接客で人に探してもらうのがいい」という人も無くならないとは思いますが、手数料を何万円も払うくらいなら、ネット上で自分で絞りこんで「現地集合で鍵を開けてもらえればいいです」という若い方も増えていくでしょう。
業者も鍵を開けただけなのに、手数料を6万円も取れないですよね。

管理ビジネスの強化が不可欠

仲介手数料も全てが0になるわけではなく、その働きに応じて0円から最高で賃料の1ヶ月分まで、その選択がまずは広がっていくような気がします。
契約書だけはしっかり作ったから1万円はください、とか。また、徹底的にユーザーサイドに立ったエージェントが良い仕事をしたら、入居者は賃料1ヶ月分の手数料を払っても惜しくはないでしょう。
そもそも、それが本当のビジネスのあり方ですよね。不動産業者は「宅建業法」に今まで過度に守られていたのです。

こうなると、オーナー側からフィーをいただける会社とそうでない会社では、ビジネスが成り立つかどうかの瀬戸際に立たされます。
おそらく、不動産業者は半減するのではないでしょうか? 賃貸仲介がメインの会社は厳しいでしょう(売買仲介も3%しっかりいただくのはそろそろ難しいと思いますが…)。
よって、「管理ビジネス」を強化しないわけにはいきません。
近未来は、アメリカのように、オーナー側からフィーをいただき、エンド側からはいただかないというスタイルが一般的になるかもしれませんね。業者が自分の管理している物件のみを客付けしようとし、他社の管理物件を仲介しなくなるでしょう。
そのほうがシンプルで仕事がやりやすいですね。自社で預かっている物件であれば、物件の内容も良くわかっていますし、そもそもオーナー側からフィーをいただいている物件よりも、他社の物件の仕事を優先すること自体がおかしいのです。

そうなるとますます、「物件の力」が重要になってきます。
昔のように、仲介営業マンの「口八丁手八丁」で物件が決まるというようなことは、既に減ってきています。
昔は、業者のカウンターで募集図面をお客と一緒にペラペラめくりながら、どれにしようあれにしようとやっていましたが、いまやその行為は自宅のPC上で行われているのです。
ネット上で、選ばれる物件と選ばれない物件とに、既に選別されるということです。相場賃料もエリアの特性も、街の雰囲気も日当たりだって「ストリートビュー」で把握できます。

「オーナーの力」も試される時代です。
「土地があったから、建築会社の言われたとおりアパートを作りました」、「賃貸経営のことはまったくお任せです」といった姿勢ではたしてうまくいくでしょうか?
いままでは「美味しい時代」でした。賃料も上昇するのが当たり前でしたし。
これからは、空室対策等、「良い提案をしてくれる管理会社なのかどうかを選択する力」、「管理会社からの提案内容を把握し、理解する力」が求められます。
今後は、物件毎の「稼働率の差」、「賃料の差」がますます激しくなるのでしょう。

入居者集めイベント開催

空室率の高い時代になってきました。差別化を図るために、もっといろいろなやり方があるのではないでしょうか。
最近、シェアハウスの話題が盛んですが、コミュニティのある賃貸住宅というものがもっと多く出てくるような気がします。私が幹事をしています「21C.住環境研究会」では、このたび「第5回入居者ニーズと意識調査」を実施、発表しましたが、「シェアハウスに興味があるか」という質問をしましたところ、1人暮らしの人のうち約3割の人がYESと答えました。
若い人は、賃貸住宅において「人との交流」があっても楽しいと感じているような気がします。
「ラウンジのあるマンション」を展開している会社さんもありますが、入居者同士で簡単なパーティをしたり大変楽しそうです。

ただ部屋を貸すだけでなく、「ソフトコンテンツも一緒に提供する」という貸し方も今後は面白いでしょう。
毎月なんらかのパーティ等を企画して、「イベントのあるマンション」という触れ込みもあってもいいですね。
アメリカの物件をよく見ていた数年前、「プール開き」や「バスケットボール大会」等が企画され、物件内でも「ビリヤード」ができたり「ボーリングレーン」があったり、また「毎週パーティ」をやっていたりするのを見て、日本とは関係ない話だと思っていましたが、今では日本でもあり得るものだと理解しています。
そのまま持ってくることは難しいにしても、その思想は持ってこられると思います。 また、「同じ趣味の人同士で集まる賃貸住宅」というのもいいですね。

このように賃貸経営は誰でも簡単にできるものから、ちょっと難しい商売になってきたのではないでしょうか?
土地さえあれば良いという時代は終わりました。少なくともプロのアドバイザーがついて、いい企画を考えていかないと駄目な時代になったのでしょう。
最近は地主さんに変わって「個人投資家」の方の元気が大変いいですよね。良く勉強されているし、大変優秀です。
本来、不動産投資というものは、運営リスクも高いし、多額の借り入れもして簡単なものではないですよね。ここ2~3年で業界は大きく変わっていくのではないか、そんな気がしてなりません。

(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2010.8.23掲載)


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