
第21回 管理会社のモデル収支
- 全国賃貸住宅新聞
地方でも管理500戸で営業利益500万円
15戸の管理でも総資産額は億単位
賃貸管理ビジネスが注目されています。
「仲介業」を主軸とするビジネスモデルから、「管理/プロパティ・マネジメント」を収益の柱に据えるという考え方が広まっています。
不動産業のなかで、管理ビジネスはどういう位置を占めているのでしょう。
「売買仲介」をずっとやってきた方は、たとえば1億の物件を決めて、一契約で「両手」で600万の仲介手数料をいただく、ということに慣れています。
同じ一契約でも賃貸物件の仲介ですと、6万円の家賃だと6万円の手数料です。売買仲介をやっている方からみると、かなり見劣りする、がっかりする金額ですね。
まして、「管理業」となると、多くの入居者からのクレームを受けたり、物件の掃除をしたり、家賃滞納者に督促したりという業務があって「それで管理料5%か、細かいなあ、不動産屋の俺としては肌に合わないなあ」とそんなところでしょうか?
私は、この「菅理業」というものは、不動産を扱ってはいるが、いわゆる「不動産屋さん」ではないのではないか、と思っています。
私自身も自分はいわゆる不動産屋さんではない、と思っています。菅理業はもっと誇り高い、高度な業務であり、また、意外に利益性の高い商売だと思っています。
具体的な条件設定・シミュレーション
菅理物件で、入居者が決まって、賃料が6万というと、売買がメインの方からみると本当にガクッとくる数字ですが、そんな必要はありません。
たとえば、家賃6万円の1Kタイプが15戸あるマンションを菅理していたとします。そのエリアの物件のキャップレイト(期待利回り)が8%とすると、その物件は式Aより、1億3500万円の価値(値段)があることになります(式A参照)。
もし同じような物件を500戸菅理していたら、45億円(式B参照)の資産を預かって運用を任されていることになります。
式A (6万円× 15戸×12ヶ月) ÷ 8% = 1億3500万円
式B (6万円×500戸×12ヶ月) ÷ 8% = 45億円
どうです? やる気が出ませんか?
アートアベニューは3500戸以上の菅理物件があります。東京なので家賃も高く、総計400億円以上の資産を預かっている計算になります。
こう考えると、下手な売買仲介をやっていることよりずっと高度なビジネスだと思いませんか?
そして、我々プロパティ・マネージャーの腕次第で、家賃収入が上下します。
もし、さきほどの式Aの物件で、1戸あたりの家賃をたった2000円上げることができたら、もしくは2000円の下落を抑えることができたら、
式C (2000円×15戸×12ヶ月) ÷ 8% = 450万円
それだけで、450万円の価値の上昇を実現したことになります(式C)。
これはオーナーにとっては、すごいことではないでしょうか?
だから、プロパティ・マネジメント(PM)の進化しているアメリカでは、「不動産を買うということはPMを買うことだ」と言われるのです。
図表1に示されているように、設定としては、菅理戸数が500戸あって、平均家賃が6万円、稼働率が90%、年平均解約率が20%、菅理料率を5%等々とします。
スタッフは3名で1人年収400万円としました。それぞれ、1.リーシング、2.メンテナンス及びクレーム対応、3.出納系を担当します。業界ではよく1人あたり200戸の管理をするなどと言いますが、3人で500戸なら余裕でしょう。

具体的には、月平均で7.5戸の解約があって、契約があります。
また更新契約が15戸です。500戸ですからオーナーの数は50~60人といったところです。
毎月50~60枚の支払い明細を出納担当が作成します。細かな計算根拠は紙面の都合上省きますが、結果、売上総利益(粗利)が2500万弱、営業利益が500万です。

毎月0からのスタートをしなくてはならない、仲介業よりずっと安定している上に儲かります。
そして、菅理戸数が増えるほど効率がよくなり、付加価値も生まれます。
ただし、これには菅理受託の営業マンの経費が入っていません。単純に500戸あった場合に、という収支です。
実際には菅理を増やしていかなければなりません。これに、年収720万の菅理受託専門の担当を入れて、月に平均約20戸の菅理を取っていくとすると大体同じ利益が確保できます。
そして、次期は740戸の管理会社としてスタートすることになります。ちなみに、首都圏で菅理が500戸あると、3人で担当して、売上総利益が3000万円、営業利益が1000万円になります。更新料収入があるからです。
机上の計算ではこのようにうまくいきますが、実際にはそうそううまくいかないことも多いようです。業務の精査、ノウハウの構築、菅理受託の仕組み、人のマネジメント等々、会社経営はそう簡単ではありません。
(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2010.9.27掲載)
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藤澤 雅義(フジサワ マサヨシ)/Mark藤澤オーナーズエージェント および アートアベニュー 代表取締役プロフィール:
オーナーズエージェント株式会社 代表取締役であると同時に、
賃貸管理会社 株式会社アートアベニューの代表取締役を務める。しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、
社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。役職呼称を禁止にしている。あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、
日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に時津風部屋)を応援している。「現場」で運用の実務にあたっているものが、一番不動産のことを理解し、
的確な投資分析及びオーナーの収益に貢献をすることができ、
また、仲介手数料収入に依存する仲介業者ではなく、安定収入のあるPM会社こそが、
クライアントの側にたって本当のアドバイスができる、が持論。2001年、不動産会社向けコンサルティング企業であるオーナーズエージェント株式会社を立ち上げ、代表取締役に就任。
また、アメリカのIREM®(全米不動産管理協会)発行の国際ライセンスである
CPM®(米国不動産経営管理士)の日本での普及活動にも尽力。IREM JAPANの創学メンバーである。著作に、
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