全国賃貸住宅新聞

公開日:2010年10月25日

第22回 空室対策の実務1【賃料査定】

第22回 空室対策の実務1【賃料査定】
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2ヶ月で成約できる価格が適正な賃料

「空室期間の把握」が賃料査定のコツ

今年も昨年に続いて、しっかり「不況」ですね。家賃は下がり、稼働率も下がっています。
こういうときに皆さんはどう「空室対策」していますか? 賃貸管理に携わる者としての存在意義は、この「空室対策ができること」であることに間違いないでしょう。オーナーの最大の関心事も「空室対策」です。今回から「空室対策の実務」を何回かに分けて述べたいと思います。

「空室対策」のポイントをカテゴライズすると下記の4つになると思います。

1、賃料・募集条件の適正化
2、リーシング活動
3、企画(ソフト・ハードの両面)
4、テナント・リテンション(入居者の保持)

まず、そもそも「賃料」が合っているのかという問題があります。6月の連載でも賃料査定について述べましたが、この「賃料査定」というものは、簡単なようで意外に奥が深く、難しいものです。
賃料査定は、「エリア」と「専有面積」さえわかれば、ネットを少しのぞけば、素人でも大体はつかめるかもしれません。しかし、賃料はその「物件の力」そのものを表しているのであって、本当は、真の「入居者ニーズ」を知っていなければ、その物件の評価(賃料査定)をすることはできません。

賃料査定が正確にできるということは、どういうことに入居者が反応してその物件に住みたいと考えるか、また反対にどういうことに反応して借りたくないと考えるかをよく知っていることになります。「企画力」があるということにもつながります。
現実には、賃料査定は人によっては結構差が出るのです。よく私は研修で賃料査定の「演習」をグループで行ったりしますが、人によって見事にバラバラですね。たとえば、リビングダイニングキッチンの広さが8畳から12畳になったことで、いくら賃料が変化するのか、という問いに対しての答えがもうマチマチです。賃料は変わらないという答えがあったり、1万5000円の差があるという答えだったり。この原因は「現場感覚」の欠如と言っていいでしょう。

よく、「相場賃料」という言葉を耳にします。「このあたりの相場は大体6万円くらいかな」、と地元業者さんに言われて、うのみにしてそれで募集したけれど全然決まらないということがあります。
「相場が6万円と言ったじゃないですか!」とクレームを付けてもだめです。「確かに6万円が相場と言ったけれども、それですぐ決まるとは言っていないよ。6万円だと半年あればなんとか決まるかな」、「えっ、それでは困りますよ。普通2カ月以内には決まるものでしょう」、「2カ月で決めたいのなら、5万5000円だな」「……(絶句)」

この場合、このエリアでは、その間取りだと、みな6万円くらいで「募集は一応している」けど、「みんな空いているよ」ということなのです。これは、「募集の相場賃料」と「成約の相場賃料」が違うのです。こういうことが現場ではよく起こり得るのです。

私は賃料には、5種類あると思っています。

a.「計画賃料」
b.「募集賃料」
c.「成約賃料」
d.「実効賃料」
e.「評価賃料」

「計画賃料」とは、事業計画上の賃料です。これくらいの賃料で決まるはずだ、と想定された事業計画上の賃料です。「予算の賃料」ですね。

「募集賃料」とは、実際に募集した賃料です。7万円と計画(査定)はしたけれど、時期がいいから7万3000円でやってみようかとか、競合物件が今年はどうも多いようだから、6万7000円でいこうとか。計画と「賃料差異」が生じているのですね。

「成約賃料」は、実際に入居者と契約した賃料です。たとえば7万円で募集していたけれど、申し込みをしてきた人から交渉が入って(最近は必ずといっていいほど、値下げ交渉が入りますね)2000円まけてほしいと言われて交渉に応じて契約した場合、「募集賃料」との差が生じます。

「実効賃料」とは、空室期間や、フリーレントをした場合、滞納賃料の未回収損が生じた場合などに、オーナーが実際に手にした額をいいます。たとえば、月額7万円で契約できたけれど、1月、2月は空室だった場合には、年間の「実効賃料」は7万円×10カ月で70万円になります。月額に直すと70万円÷12カ月=5万8333円になりますね。

「評価賃料」とは、現在7万円で決まってはいるけれど、それは3年前に決まった部屋で、いまその部屋を募集したら成約賃料は6万5000円になってしまうだろうと、査定するものです。つまり、その時点でのその物件の力を表す、今の「評価」の賃料ですね。

このように一口で査定賃料や相場賃料と言っても、いろいろあるのです。賃料査定をする際には、対象物件の特徴をまずよくチェックして、その内容が他の競合物件とどのように違うのか、またその違いが賃料にどのくらいの影響を与えるのかを査定すべきです。そして、賃料査定のコツは、「空室期間の把握」にあります。

図表Ⅱにありますように、各間取り別に、そのエリアにおける平均的な空室期間を調べます。募集の相場が8万円だけれど、空室期間が平均して半年あるというのなら、冷静な成約賃料はけして8万円ではなく7万5000円くらいだなとわかるのです。大体2カ月くらいの空室期間で決まる賃料が本当の賃料だと思います。

図表Ⅰは、そのエリアにおける間取り別の賃料分布を把握するものです。この帳票を使うことによって、賃料相場を俯瞰(ふかん)することができます。この部屋はいくらだろうと一つの部屋のことばかり考えるのではなく、市場全体の相場、動きというものを把握することによって、大きな賃料査定ミスを防げます。

 

また、賃料以外の募集条件、敷金(保証金)、礼金(敷き引き)などの適正化も必要です。これは地域によっていろいろなのですが、年々、減額の傾向にありますね。「礼金」も0という物件がかなり増えました。
当然、契約金の総額が少ないほど成約に至りやすいですね。(敷金0での募集は、滞納等の担保という観点からいかがなものかと私は思いますが) 現在のように市況が下がっている場面では、現実の冷静な賃料をオーナーに伝えることもわれわれプロに課された重要な仕事だと考えます。

(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2010.10.25掲載)


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