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第26回 空室対策の実務5【シェアハウス】

2011.02.28
  • 全国賃貸住宅新聞

    共通の趣味で集える新たなシェアハウスに注目

    趣向やサービスを提供。必要なのは運営力

    空室対策シリーズの5回目は、前回に続いて企画編です。「企画」には「ハード」と「ソフト(コンテンツ)」の2種類があります。前回の「ハード」では、大きく「間取り・内装」、「外観・エントランス・外構」、「設備・仕様」の3つについて取り上げましたが、今回は、「ソフト」について解説しましょう。

    「ソフト」とは、建物や設備の企画においての差別化ではなく、何か他と違った「趣向やサービス」を提供することをいいます。たとえば以前からある「ペット可」にする、というのもそれにあたります。もちろん、設備的に、たとえば傷のつきにくいフローリングや、足洗い場を設けるなど、ペット仕様にする向きもありますが、私はペット可は「運営力」が大事だと思っていますので、「ソフト」の範疇(はんちゅう)にいれます。

    当社では、以前よりファミリータイプでは積極的に、ペット可にしています。入居者アンケートでは、約4割の方が「ペットが飼えるのなら飼いたい」と答えます。分譲マンションは87%がペット可で販売(平成19年時)されているのに、賃貸ではごくわずかです。
    これは、管理会社がもっとオーナーを説得すべきだと思います。汚されたらどうしよう、という心配はあるかもしれませんが、要は入居者審査だと思います。また当社では入居者に対し「年に1回、ペットとの暮らし方をチェックさせていただきます」としています。今まで、これといったトラブルはありません。

    ニーズ高まるコミュニティー住居

    最近、業界に新風を吹き込んでいるものに、「シェアハウス」があります。以前はゲストハウスといっていたものですが、これは「新しい貸し方」といえます。

    これは、部屋だけを貸すのではなく、プラス「コミュニティー」を提供するという貸し方です。「見ず知らずの他人と交流し、同じ施設(風呂・トイレ・ダイニングキッチン・リビング・洗濯機)を共有する」というものに、はたしてどれくらいのニーズがあるのか、最初聞いた時には疑問があったものです。私が幹事を務めます「21C.住環境研究会(協力:リクルート)」で最近行ったアンケート調査(図参照)では、一人暮らしの方のうち3割の人が肯定的な感触を持っています。これは意外に多いとみるべきでしょう。

    当社も実は、つい最近シェアハウスを始めました。
    場所は浅草で、女性限定のタイプです。防犯面の安心感や都会暮らしに慣れるまではお友達がいたほうがいい、というような入居者のニーズも結構ありそうです。管理会社としてのプレゼンス(存在感)を出していかなくてはいけないそうで、定期的に物件に足を運ばなければならず、運営は結構大変そうですが、これからは、この「面倒くささ」を嫌がっていてはいけないのだろうなと思います。

    このスタイルの貸し方は確実に今後日本各地に定着していくことでしょう。管理会社としては、手間がかかる分、管理料も通常のものより多くいただけますので、割に合う、ものだと思います。賃料的にもけして安いわけではなく、意外に高いので投資としても合うものだと思います。水回りのコストがかなり軽減できますので、新築から始めるという手もあります。

    共用部

    専有部

    こういったコミュティーのある暮らし方は、北欧スウェーデンが発祥の「コレクティブハウス」に見ることができます。日本初のコレクティブハウスである東京・日暮里にある「かんかん森」にお住まいの方から詳しくお話を聞いたことがあります。

    これは、あまり管理会社が前に出ず、かなり入居者の自治に任されているもので、自ら定期的に会議を開き、皆で運営について話し合っていくという暮らし方です。高齢者から幼児のいる若いカップル、単身者まで多種多様な方が一緒に暮らすというのが特徴です。当番制で皆で夕食を作って一緒に食堂で食事をしたりして、ちょっと驚きの賃貸マンションですが、「下町の人情マンション」といった風情でしょうか?
    先日、NHKでも特集されていましたが、住んでいらっしゃる方が言われた「人間関係が面倒な部分もあるが、面倒なことが当たり前でしょう。それが社会だし、それを楽しんでいる」というコメントが大変印象的でした。

    設備が共用ではなく、各戸の専有部分にはバス・トイレ・キッチンがあって、別途共用のコミュニティーラウンジだけを設けるという手法もあります。そこでの「個人間の交流を楽しむ」、という暮らし方の提供です。若い世代の単身者向けですが、定期的に休日に会費2000円でパーティーを開いたりして楽しそうです。普段もラウンジに行けば誰かいて一緒にテレビをみたり、話したりすることができます。

    数年前、よくアメリカの物件を見に行っていた頃、大きなプロパティになると、必ず、共用ラウンジがあって毎週パーティーをやっていると聞きました。毎月入居者の過半数が参加するそうです。アメリカではそういうコミュニティーを形成していました。アメリカにはあって、日本にはないということはないと思います。

    ラウンジ以外に必ずあったのは、「フィットネスジム」、「ビジネスコーナー」等ですね。これは、日本でもあると受けると思います。また、定期的なイベントも開催していました。夏になれば、「プール開き大会(これちょっと日本では無理か)」、また「バレーボール大会(これも敷地が広くないと無理か)」等々。日本にそのまま持ってこれはしないかもしれませんが、その「思想」は持ってこられるような気がします。何か、「イベントのあるマンション」を提供したらどうでしょう?

    コンセプト差別化で新生活を提案

    ただラウンジで見知らぬ同士が交流する、というものだけではなくて、「同じ趣味で集う」という貸し方もあります。
    ピアノがしっかり弾ける「音大生マンション」というのは前からありましたが、「24時間、スタジオでの練習が可」というミュージシャン・アーティスト用マンションというものもあります。これは、素晴らしいと私なんかは思います。音楽をやっている人にとって、いつでも思い立ったときに同じ建物内で練習できるというのは、極上の環境でしょう。夜中にメロディーがひらめく時だってあります。そういうときに、同じマンション内で仲良くなった仲間に、ちょっと付き合って、と言ってセッションをすることも可能なのですから。

    また、「英会話が上達するマンション」というのもいいですね。この発想も素晴らしい。館内は日本語禁止(?)だそう。ラウンジで定期的に英会話レッスンもあるとのこと。わざと英語のできる人を住まわせているとも聞きました。
    「バイカーズ・マンション」「ガレージ付きマンション」というのも、「バイク好き」、「クルマ好き」に的を絞った企画ですよね。私は、こういう「パイは狭いけれど、その人たちにとっては、たまらないマンション」というのは、戦略として大変面白いと思っています。

    賃貸住宅はまだまだ「差別化」できると思います。みなさん、頑張っていろんなアイデアを出し合いましょう!

    (筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2011.02.28掲載)

    • 藤澤 雅義(Mark藤澤)
      オーナーズエージェント および アートアベニュー 代表取締役社長
      プロフィール:

      オーナーズエージェント株式会社 代表取締役社長であると同時に、
      賃貸管理会社 株式会社アートアベニューの代表取締役社長を務める。

      しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、
      社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。

      あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、
      日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に豊ノ島・時津風部屋)を応援している。

      「現場」で運用の実務にあたっているものが、一番不動産のことを理解し、
      的確な投資分析及びオーナーの収益に貢献をすることができ、
      また、仲介手数料収入に依存する仲介業者ではなく、安定収入のあるPM会社こそが、
      クライアントの側にたって本当のアドバイスができる、が持論。

      著作に、
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      ・『「収益改善」&「リニューアル企画」マニュアル』(総合ユニコム)(購入
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