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第27回 空室対策の実務 その6

2011.03.28
  • 全国賃貸住宅新聞

    誕生日カードや清掃サービス等で解約を抑止

    サービス向上のため解約理由を聞く

    空室対策シリーズの6回目は、「テナント・リテンション」です。「テナント・リテンション」とは、「入居者の保持」、「解約の抑止」を意味します。

    賃貸経営において入居者は一定の割合で「解約」します。退去すれば次の入居者が決まるまで、当然に一定期間空室になりますから、解約は少ないほうがいいわけです。そして、現実の賃貸経営においては、「物件の良しあし」「管理会社のサービスの良しあし」で入居者の「解約率」が違うのです。

    まず、解約率とはなんでしょう。それは、物件の戸数に対して1年間に何回の解約があるか、という指標です。10戸の賃貸マンションで年間に2戸(回)の解約があれば、分子が2、分母が10で解約率は20%です。
    この解約率は、物件のタイプやエリアによっても違いますが、一般にファミリータイプで15%~20%程度、シングルタイプで20%~25%程度ではないかと思われます。弊社の管理物件でも大体、その範囲に収まっています。ちなみに、分母に物件の戸数がくると言いましたが、正確には分母は「稼働物件戸数」になります。そうしないと、稼働率の悪い物件の解約率が実際より低くなってしまいます。

    では、入居者はいったいどのような理由で解約をするのでしょうか?上図をご覧ください。弊社では解約の連絡が入るたびに、入居者から「解約理由」を聞いています。管理会社として、より良いサービスを心がけるためにヒアリングをしているのです。

    これは1年間の解約理由の集計です。圧倒的に多いのは、「通勤・通学」ですね。「実家に帰る」というのも世相を反映しているのでしょう。第3位は「結婚」です。この上位3つで約半数になります。弊社は75%がシングルタイプなので、バイアスがかかってはいるとは思いますが、興味深いデータです。

    より「安い物件」へ、「広い物件へ」、また「家を購入した」と続きますが、「建物に理由が有り」、「近隣・住民による不満・トラブル」、そして明確に「管理会社に理由有り」と、「物件及び管理会社の良しあし」に関係する項目で10%程あります。恥をさらすようですが、弊社では現在約4000戸弱の管理戸数がありますが、弊社の対応に不満だから退去する、としている人が1年間に3人いたということです。

    現場に聞いてみると、クレーマー気質の人もいるし、捉え方の違いもあって、どこまで第一の理由かはわからないが、まったく0ということはないだろう、ということでした。もっときめ細かな対応を求められています。毎年データを取っていますが、大体この程度の率に収まっています。しかし、万一この率が高まってきたらいけないと思い、そのためのヒアリングです。

    このデータをみると、「物件及び管理会社の良しあし」が全体の10%程度なので、はたして、それが物件の解約率にどれほど影響があるのか、判断が難しいところです。

    これは、あくまで私の主観ですが、入居者は「通勤・通学」「結婚」など半数以上は明確な理由で解約をするのだと思いますが、それ以外は、ひとつの明確な理由だけで解約するのではなく、日頃の「不満」や「物足りなさ」がたまっているところへ、何かきっかけがあって「合わせ技1本」で解約するような気がします。
    その「不満や物足りなさ」がなければ解約しなかったかもしれない。そういうことがあるのではないでしょうか?逆に、他にはない「良いサービス」があれば、たとえば少々勤務先が遠くなっても我慢して住み続けてもらえるのではないでしょうか?
    これは、解約理由を単純に聞くだけのヒアリングでは、表には出てこないものだと思います。管理会社やオーナーが、入居者に対するサービスを意識することによって、物件の収益は思った以上に変わってくるものだと思います。

     

    入居者に小さな心遣いをし続ける

    これを数値で実感してみましょう。空室率を計算する公式は表2になります。

    これを「稼働ベースの空室率」といいます。この式を多少展開したものが表3です。表4が実例です。

    ある物件の戸数が10戸だとします。1年間に2戸解約し、空くたびに3カ月の空室期間があるとすると空室率が5%となります。 悪くはないですね。これが、「物件及び管理会社の良しあし」の問題で、10戸中1年間でたったもう一戸解約が増えたらどうなるか、空室率が2.5%上昇して、7.5%になりました。

    表5を見ましょう。この物件は市況が厳しいのか、物件の価値が低いのか、解約のたびに半年は空いてしまうのです。その場合に、同じく解約率が20%から30%に、10戸中たった1戸余分に空いただけで、空室率が10%から15%に上昇してしまいました。
    このように解約率の差で、収益性に差がしっかり出ます。賃貸経営で空室率(稼働率)2.5%の差というのは大きな数値です。また、市況が厳しい、物件の価値が低いものほど、痛手が大きいことがわかります。

    では、実際にどのようなことをすれば、「長く居てもらえる」のでしょうか?
    「まずは、クレームに対して迅速に誠意ある対応をする」ことが第一です。なかなか厳しい入居者も最近はおられますが、我慢です。建物の瑕疵は素早く修繕し、隣の部屋の騒音問題にも的確に対応する必要があります。あとは、次のような様々なサービスを考えてみてはいかがでしょうか?

    1.建物共用部の掃除
    2.不満がないか、入居者にアンケートを実施
    3.入居者の誕生日にカードやプレゼント
    4.更新時に何かプレゼントやサービス
    5.室内クリーニング、お風呂・トイレのクリーニング
    6.入居者の自動車洗車サービス
    7.6年入居した人には、壁クロスを新しく張り替え
    8.入居年数ごとでポイントをつけて、その値でプレゼント
    9.畳の表替え
    10.入居中でも、TVモニターインターホンや室内洗濯物干しを設置
    11.エアコンのクリーニング
    12.コミュニティーを形成するようなサービス、パーティーの企画

    弊社も全てではありませんが、契約時と更新時にプレゼントを入居者にしています。これらのサービスを行うには経費がかかりますが、退去されてしまうと、先に述べたような単なる「空室損」の被害だけではありません。
    退去があればその分「内装リフォーム代」、あるいは「業者へのバックフィー」という経費がかかりますし、また「賃料の低下」というリスクも生じます。最近では、賃料を下げたことがネットの影響で、他の入居者の知るところとなり、賃料交渉が入って他の部屋の分まで賃料を下げなくてはならない羽目になった、ということが横行しています。

    そのまま住んでもらうに越したことはないのです。「入居してしまえばこっちのもの」ではなく、「入居してからも入居者に気を使う」ことが大事な時代になりました。

    (筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2011.03.28掲載)

    • 藤澤 雅義(Mark藤澤)
      オーナーズエージェント および アートアベニュー 代表取締役社長
      プロフィール:

      オーナーズエージェント株式会社 代表取締役社長であると同時に、
      賃貸管理会社 株式会社アートアベニューの代表取締役社長を務める。

      しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、
      社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。

      あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、
      日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に豊ノ島・時津風部屋)を応援している。

      「現場」で運用の実務にあたっているものが、一番不動産のことを理解し、
      的確な投資分析及びオーナーの収益に貢献をすることができ、
      また、仲介手数料収入に依存する仲介業者ではなく、安定収入のあるPM会社こそが、
      クライアントの側にたって本当のアドバイスができる、が持論。

      著作に、
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