全国賃貸住宅新聞

公開日:2011年6月27日

第30回 稼働率から逆算する賃貸経営

第30回 稼働率から逆算する賃貸経営
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稼働率、解約率から平均空室日数を計算、賃料の下げ幅を決定

最近ますます市況が悪くなっていますね。もともとの不況の上に震災不況がやってきて厳しい世の中になってきました。空室率が上昇する中で、はたして賃貸経営における空室率と家賃との関係をどう考えればいいのでしょう?

今までの連載で何度か触れていますが、上図にあるのが、「稼働率ベースの空室率」を表す式です。
式①の考え方はこうです。仮に10戸の賃貸住宅があって、1年365日運用している中で、年に何戸かの解約(退去)があるとします。この解約された部屋がそれぞれ平均何日の空室期間があるかで、その物件の「空室率」を求めることができます。

式②は式①を展開したものですが、「解約率」とは、1棟の物件から1年間に何戸の解約があるかということです。10戸中解約が2戸なら、解約率は20%という意味ですが、一般的な賃貸住宅の解約率は大体20%から25%の間で推移していると思われます。
エリアによっては地方のファミリータイプの場合で、解約率が15%ということもままありますが、大まかにいってシングルタイプで25%程度、ファミリータイプで20%程度といえるのではないでしょうか。

式②を展開したものが式③です。これは、現状の空室率と解約率がわかっている場合に、果たして、解約があるたびに平均の空室期間がどれくらいあるかを測る式となっています。
これらの数値は、3種類の立場でみることが可能です。それは、営業エリア内の数値、管理物件全体の数値、物件ごとの数値、です。これらの数値を把握することからはじまります。

そこで、仮に空室率が10%、解約率が25%であったとしましょう(式④)。そうしますと、平均空室日数はなんと146日、約5カ月と導き出されます。実感はありますでしょうか? なんとなく、もうちょっと短いような気がしていませんでしたか? 空室率が10%、つまり稼働率が90%の賃貸経営というのは、平均して5カ月の空室期間があるのです。

ここで、空室率2%、稼働率98%という「夢のような」賃貸経営を想定してみましょう(笑)。
式⑤がそれにあたりますが、平均空室日数は29.2日となります。約1カ月間です。稼働率98%の賃貸経営とは、空室期間が1カ月で次に入居者が決まるという意味なのです。この差は空室期間で4カ月分にあたります。

仮に、平均家賃が6万円としましょう。すると、90%稼働の物件が98%稼働になるということは、単純にいうと、6万円×4カ月分=24万円の収入が増えるということになります。解約率が25%の物件の平均居住年数は、下図式⑦から、100%÷25%=4年となります(正確には4年から平均空室日数を控除した期間)。

よって、24万÷48カ月(4年)=5000円/月に換算されます。つまり、家賃を5000円下げて5万5000円で貸しても、空室期間が1カ月になるのなら、結果としての収入は一緒になるというわけです(厳密には、家賃が下がって4カ月間の収入も減るので、4615円ほどの家賃ダウンとなります)。
5000円と8%ほども家賃をダウンさせればすぐ決まりそうな気がします。

また、「5カ月間空く物件」の募集と、「1カ月間で決まる物件」の募集の状況を想像してみてください。「1カ月間で決まる物件」の募集というのは、これはもう人気物件という意味ですから、「5カ月間空く物件」の募集に比べて、実際の経費もマンパワーも格段に違うことが容易に想像できます。

「5カ月間空く物件」というのは、何回も案内してやっと決まるという意味ですし、決めてくれる業者にはバックフィーを1カ月分も払わなくてはいけないでしょう。また、インターネットや紙媒体への広告費や5カ月間の様々な人件費を考えると、家賃でいうと総計2カ月分くらいの経費の差が出るのではないでしょうか?

第一、空室期間が長くなるということは、その分の「空室管理」の経費が出るということです。だれも住んでいませんから、オーナーもしくは管理会社が面倒をみなくてはいけません。プラス2カ月分となると、6万円×(4カ月+2カ月)=36万円となり、36万円÷48カ月=7500円/月ほどになります。早く決まるのなら、10%以上家賃を下げてもよいということです。

もちろん、むやみに家賃は下げるのは考えものです。なんとか家賃を維持し、家賃を下げずに決めるのが「真のプロパティ・マネジメント」ではあります。
しかし、市況が悪いのも事実。本当は、家賃を下げずに決めるためには、「物件の力」を上げる必要があります。何らかの付加価値を付けるか、もし陳腐化している部分があるのなら、抜本的にそれを改善する必要があります。

しかし、すべてのオーナーがその提案にすぐ乗ってくれるとは限りません。コストもかかりますし。では、家賃を下げるしかない。では、その下げ幅はどれくらい許されるものなのか。それは、今回のように計算すると意外に大きくてよいということになってしまいました。このように、賃貸経営は、一定の目標とする稼働率を確保することを前提にして募集した方が、結果として収益が良いということになるのではないかと思います。
オーナーの収益の最大化を確保するのが、プロパティ・マネジメントなら、現在の市況においては、これらの情報を的確に提示するのも、われわれの役目ということになります。

上に、空室率と解約率の差による平均空室日数の差をまとめました。皆さんの営業エリアによって、数値はさまざまでしょうから、各自計算をしてみてください。

ところで、空室率、解約率の数値がわかっていない管理会社も多いと思います。これらを日頃から計数管理ができていないと、オーナーの利益を守ることもとうてい無理な話です。

(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2011.06.27掲載)


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