全国賃貸住宅新聞

公開日:2013年1月28日

第49回 オーナーへのリニューアル提案の手法

第49回 オーナーへのリニューアル提案の手法
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10項目の入居者ニーズで物件力を明確に評価

陳腐化した部分に資金投下の説得

2009年の1月からはじまったこの連載も49回目を迎え、ついに5年目に入りました。どれだけ続けられるか私にもよくわかりませんが、これからも引き続きよろしくお願いします。さて、前々回、前回と空室対策での「間取り変更」について述べてきました。空室対策の最大の施策は「物件力を上げる」ことにつきると私は思っていますが、そのためには、「間取り」、「設備・仕様」、「外観・外構」において陳腐化した部分を改良していくのが一番効果が高いでしょう。たとえば築25年を経た空室がなかなか決まらない物理的に問題のある賃貸住宅の物件力を上昇させるためには、「お金をかけてリニューアル」をするしかないのです。

 では、実際の現場において、オーナーに「お金をかける決断」をしてもらうのに皆さんはどうされていますか? これは結構難題なのです。古いアパート・マンションの一部屋に200万円かけるという決断より、駐車場に1億円かけて新たに賃貸マンションを建てる、という決断のほうが簡単なのではないかと思うほどです。私は、オーナーに対してリニューアル提案がきちっとできる人は、かなり能力が高い人ではないかと判断します。

項目別にチェック!各戸の特徴つかむ

まず、最初にオーナーにやっていただきたいのは、自分の物件を「客観的に見る」という作業です。オーナーは賃貸市況における自分の物件の能力を意外に過信しています。思い込みが強いのか、新築(購入)時に建築会社(仲介会社)から言われたお世辞(オーバートーク)を真に受けているのか(失礼)よくわかりませんが、中には驚くほど現実とのギャップのある方もいらっしゃいます。しかし、そうは思っていないオーナーに、実はあなたの物件はこういう欠点があって入居者に人気がないんだという事実を突きつけるのにはちょっと勇気がいるものです。

 そこで、「物件評価表(表1)」の出番です。この帳票を使って、オーナーにその物件の「良い点」と「欠点」を客観的にわかっていただくのです。「欠点」ばかりを指摘しては相手も気分が悪くなりますが、「良い点」とセットで全体に評価されれば、冷静になれるのです。「良い点」がまったくない物件もないですよね。そして、この物件には「陳腐化している部分がある」、「この点を改善しなければ適正な賃料で募集することはできない」とはっきりとオーナーに伝えていくのです。

 「物件評価表」は、対象物件の「成績表」とでもいいましょうか、物件を5段階評価で数値化し、総合得点を計算してABCランキングで評価しています。あまり細かくすると大変なので、使いやすいようなるべくシンプルに、かつ重要なことは外さないようにしてあります。具体的な評価項目は、「部屋を探している方がどういった基準で部屋を決めるか」という「入居者の最大関心事の10項目」を使っています。

  ①~④の4項目はメーンとなる重要項目で、配点が高くなっています。とても良い(A)=16点、よい(B)=13点、普通(C)=10点、あまり良くない(D)=6点、悪い(E)=2点、⑤~⑩は、それぞれ、6点、5点、3点、2点、1点という配点になっています。点数の多少にそれほど大きな意味はありませんが、点数があることによって、よりリアルに評価が感じられると思います。
物件の評価の仕方は、さして難しいものではなりません。また、これらの評価は、あまり時間をかけてやるものでもないと思っています。市場にある他の競合物件と比較して、この物件がどういう位置にあるのかを比較的簡単に判断するものです。オーナーの方であれば、まず自分でやってみて、そのあとで管理会社や仲介業者方にもやってもらい、それらを見比べてみたらどうでしょう。「プロの客観的な感覚」と自分の感性がずれていないかもチェックできます。

< before > ▲ 改装前と改装後の写真を比較すると違いは一目瞭然 ▼

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入居者の視点持ち人気の間取り知る

「物件の評価は賃貸経営の出発点である」、と私は考えています。リフォーム企画であろうが新築企画であろうが、新築あるいは中古の物件を買おうとしている場面であっても、または、空室対策を施そうとする場面においても、まずはその「物件の評価」を適正にできるかということが一番大切で、すべてはそこから始まるのです。
 物件の評価は、すごく奥が深いものです。いろいろな観点で物件を評価しますが、そのベースには常に「入居者の視点」がなければなりません。この物件は入居者から見て、たとえばこういう間取りはすごく人気だ、または不人気だ、というようなことを知らなければ正しい評価は下せません。つまり物件を正しく評価をするということは、「入居者ニーズを知っている」ということにほかならないのです。そして、それは「企画力がある」ことにつながっていきます。

(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2013.01.28掲載)


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