全国賃貸住宅新聞

公開日:2013年4月22日

第52回 賃貸住宅の企画法

第52回 賃貸住宅の企画法
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賃貸住宅の企画工程を4つに分類

新築、リニューアルにかかわらず、賃貸住宅をつくろうという方がいらっしゃったら、建築会社さんの場合ですと、提案プランを競合他者のどこよりも早くお施主さんに持っていきたいと考えるでしょう。営業的にはそれが正しいのですが、賃貸住宅というのは20年30年という長期にわたって経営をしなくてはならず、また投資額も大きなものになるわけです。
したがって、「入居者ターゲット」やそれにともなう「間取り設計」、「設備・仕様」、また「賃料設定」等々の『企画そのもの』が失敗していたということだけは避けたいものです。
つまり、建てる前の入念な企画、そのためのしっかりした「市場調査」が必要です。完成してからの運営も当然大事ですが、最初を間違えたら後でいくらがんばっても追っ付かない、というのも事実です。

表1は、「建築企画の流れ」、ですが、企画を思い立ってから完成して、全室が満室になるまでの過程です。Aの肝心の市場調査の内容を説明します。
①「エリア内の既存物件の調査」は、このエリアには現在こんなアパート・マンションがあり、こういう物件が空室になっているという物件調査です。最低でも500〜1,000戸程度は調べたいもの。多いときには3,000〜4,000戸の物件を調べることもあります。
②の「入居希望者の特性調査」は、このエリアにはどのような人が部屋を借りにやってきて、どんな物件(間取り等)を望んでいるかというニーズ調査です。地元への業者ヒアリングで、「単身者」、「カップル」、「夫婦+未就学の子」など、家族類型別のシェアと間取りニーズ、それぞれの支払い可能賃料などを調査します(表2参照)。
③の「将来予測」は、このエリアの賃貸市場は今後こうなっていくだろうという将来予測、トレンドの把握です。

 Bステップは、市場調査の結果を踏まえての企画立案です。
④の「問題点の発見」は、Aの調査結果を分析して問題点を発見する作業。具体的には、どういった物件の稼働率が高く、どういった物件の稼働率が低いのかの分析をします。ともかく市場調査を行えば行うほど、その母数が多ければ多いほど、物件の力の差がわかり、問題点が浮かび上がってきます。

需要ギャップ把握し、改善点を明確に

また、「問題点の発見」の最大の眼目は、①で把握した供給物件のデータと②で把握した入居者の需要をマッチングさせること。それにより、需要と供給の間にズレが出ます。つまり「需給ギャップ」を明確にすることで、次の対策、改善提案がより鮮明になるのです(表3参照)。この「需給ギャップ」ですが、全国さまざまなエリアでいままで市場調査をしてきましたが、どのエリアにも需給ギャップのズレがありました。つまり、入居者が望んでいるものがキチンと捉えられておらず、供給されていないのです。だからこそ、企画次第で、まだまだ賃貸住宅の可能性があると、私は思っています。
 ⑤の「問題点に対する『対策、改善提案』」では、④で把握した問題点(これらの「需給ギャップ」など)に対し、「このように対策を立てて改善しなければならない」という対策、改善提案をします。たとえば、そのエリアでは2LDKを望んでいる人がたくさんいるのに、実際には2LDKが少ないという需給ギャップがあり、かつ将来的にも2LDKを希望するファミリー層が多くなるとの予測が立てば(③将来予測)、そのエリアには2LDKを供給する提案が実に有効であることがわかります。

表3にあるように、入居者ニーズが2LDKに35%ということは、そのエリアで部屋探しをする人のうち、35%の人が2LDKを望んでいるということです。それに対してそのエリアにおける2LDKの供給シェアが10%ということは、35%-10%=25%の需給ギャップがあるということなのです。これは大きな数字です。他の間取りの需給ギャップをそれぞれ調べて、2LDKの需給ギャップが一番大きいとなれば、2LDKを中心に企画することが良いとなる可能性が高まるでしょう(⑥「『対策、改善提案』を踏まえた企画立案」)。

 ⑦の「基本設計」では、⑥で決定された企画案が基本設計に落とし込まれます。設計のあらゆる部分で、企画の意図が体現されることが大切です。そして、次に⑧の「賃料設定および事業収支の分析」において、設計プランにおける確実な賃料設定を行い、投資の期待利回りに基づいた全体のコストを想定し、「事業収支の分析」を行います。
 従来の賃貸物件の建築では、この①から⑧までの流れが、軽視されてきたと思います。案件敷地を提示したとたんに「こんなプランでどうですか?」と、いきなり建築会社の標準プランを提案され、見積もりや事業収支表が出てきたりすることも珍しくないのです。

(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2013.04.22掲載)


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