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第58回 「先付け業者」は無くなってしまう

2013.10.28
  • 全国賃貸住宅新聞

    先付けから管理ビジネスへの転換急がれる

    私はこの連載で3年以上前から「今後、賃貸仲介業は存在し得るのか?」と問うてきました。業界の人にとっては少し過激な意見ととられるかもしれませんが、結論からいうと、私はこの先、「先付け業者」は無くなっていくのではないかと思っています。そして、そのまま業者そのものが無くなるのではなく、「元付け」もしくは「管理会社」に転換するという選択をすることになるのでしょう。転換できないところは淘汰されるということになります。今後は「元付け」もしくは「管理会社」が直接に部屋探しの入居者と接触して募集~契約を行うようになるということです。また、逆にそのように直接募集する力がない「元付け」「管理会社」も淘汰されてしまうことを意味しています。現実には、「先付け」だけの業者も少ないでしょうし、「元付け」「管理会社」でまったく自社では仲介していない、というところも少ないと思います。入居者の「自社付け」か「他者付け」かのバランスの問題になります。また、「元付け」「管理会社」が全ての管理物件を自社で仲介できるようになるとも思いにくいので、「先付け」が完全にゼロになるとは言いませんが、その数は減って行くことでしょう。

    先付け業者が無くなってしまう理由は、表1にあるように、①インターネットの更なる普及(通信環境の向上、スマホの普及も)、②部屋探しポータルサイト上での情報の充実、③管理会社から先付け会社へ多額のバックフィーの支払いに対する疑問、④オーナーから先付け業者へのバックフィー支払いに対する法的懸念、⑤入居者が仲介手数料を支払うことへの疑問、⑥結果、管理会社が積極的に直接リーシングをする時代になる、⑦管理会社なら「仲介手数料0」をアピールできる、があげられます。インターネットというものが世の中で認知されるようになったのは1995年くらいからでしょうか。それから20年がたとうとしています。もう20年もたったのか、という感じですね。いまやすっかり我々の生活に入り込んでいます。
    また、その影響でビジネスモデルが大きな変化を余儀なくされています。「交通機関」、「ホテル・旅館」、「飲食」、「レジャー」また「本・衣類・電化製品・小物・生活用品・生鮮食料品等の小売り」に至るまで、今はなんでも自宅や職場に居ながらにして予約できて購入できます。私もすっかり本屋さんにいかなくなりました。いつもAmazonでまとめ買いです。最近、注文したその当日に配達されたのには驚きました。Amazonでは、読んだ人の講評もあるし、人気度やまた本の中身も少しは読めるようになっていて、当然目次も閲覧できます。本屋さんに行くよりずっと便利で合理的です。ZOZOTOWNは衣類の通販なんて無理、という常識を押しのけて急成長しています。西友ドットコム(西友ネットスーパー)も伸びているようです。ネットで「お刺身」を注文して当日配達してもらえるのはとても楽でしょう。楽天の成功は言うに及ばず、ですね。「衣・食・住+遊」の全てに影響があるのです。

    インターネットの普及以前は、旅行代理店は交通機関とホテルの「空き情報」を押さえているというだけで、店頭にお客が並びました。消費者はそこに手数料を払う意義を感じていました。しかし今は、JALもANAも自社ホームページでそれと全く同じことをやっています。そして、たとえば東京⇔福岡間のチケットが飛行機だけより泊まったほうが安くて片道運賃程度になる、なんてことが起きています。「メーカー」が「卸」を飛ばして「消費者」に直接商品を売っているのですね。JTBは2009~2010年に940店舗のうち20%の200店舗を、近畿日本ツーリストは30%の店舗を閉鎖することになってしまいました。これは全て「中抜き」と言われる現象ですね。旅行代理店は、法人向けや修学旅行や社員旅行の営業を強化して売り上げの内容を変化させています。

    先付けから管理ビジネスへの転換急がれる

    さて、我々の業界はどうでしょうか? 通販のように「物件(商品)を実際には見ないで決める」ということはできないでしょうが、将来は最終的にはインターネットで充分に調べ上げて2~3つくらいに絞って、現地を確認して申し込みというふうになると思います。店舗に行く必要はないと思います。もう調べて見当はついているのですから。ただ、現時点でのポータルサイト上の情報はとても脆弱で、絞り込むにはまだまだだとは思います。他の業界では当たり前になっている、「写真や動画」をたくさん載せ、「物件情報」「周辺環境情報」「入居者OBの声」「今住んでいる人の声」を反映し、また「住所の特定」をしていけば「ネットで選ぶ」ようになるでしょう。これらのことは、「管理会社」や「元付け」であればできることですね。「先付け業者」ではそこまで手が回りませんし、「住所の特定」はビジネスモデル上不可能なことです。
     現時点の仲介店舗にも実は2種類あって、表2にあるように①「仲介手数料」売り上げるための店舗、と②「管理物件を決める」ための店舗に分かれています。見た目はまったく一緒ですが、どちらが良い悪いではなくて、考え方の違いです。私は①から②へ、つまり「先付け仲介」ビジネスから「管理ビジネス」への転換が急務だと思うのですが、いかがでしょう。

     業界では、「空室対策」や「リノベーション」等の話題を語ることが多いですが、今は一番肝心な「リーシングの仕組み」が劇的に変化しようとしている時だと思うのです。これに対処する時だと思います。大きな地殻変動が起きようとしています。昔、江戸川区の地主さんと話したとき、「鉄道が自分の村を通るという話(総武線)が出てきたとき、祖先は皆反対したんだよねえ。それで、北に大きく蛇行したんだよ」と感慨深く言っておられたのを思い出します。「時代の変化」についていきたいものです。

    (筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2013.10.28掲載)

    • 藤澤 雅義(Mark藤澤)
      オーナーズエージェント および アートアベニュー 代表取締役社長
      プロフィール:

      オーナーズエージェント株式会社 代表取締役社長であると同時に、
      賃貸管理会社 株式会社アートアベニューの代表取締役社長を務める。

      しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、
      社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。

      あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、
      日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に豊ノ島・時津風部屋)を応援している。

      「現場」で運用の実務にあたっているものが、一番不動産のことを理解し、
      的確な投資分析及びオーナーの収益に貢献をすることができ、
      また、仲介手数料収入に依存する仲介業者ではなく、安定収入のあるPM会社こそが、
      クライアントの側にたって本当のアドバイスができる、が持論。

      著作に、
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