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第62回 管理会社は「人」が命 4【マネージャーの役割】

2014.02.24
  • 全国賃貸住宅新聞

    リーダーや橋渡しなど「マネージャーの役割」10項目

    この連載も62回を数えます(6年目突入)。正直こんなに続くとは思っていませんでした。いまのところ編集部からは「終了」という話は聞かないので(笑)、今年もガンバルしかないですね。
     今回は「賃貸管理会社は人が命」シリーズの第4回目です。いままで、人の活用のポイントとして「採用」、「マネジメント」、「評価」についてお話ししてきました。今回は、「マネジメント」について、さらに「マネージャーの役割」について考えていきたいと思います。前々回、「役職が付く」ということは、その個人の業務における習熟度や求められる成果の違いはむろんありますが、それ以外に「マネジメントの業務が付加された」ということだと述べました。「プレーヤー」として頑張るのは当然で、プラス「マネジメント」という「別の」業務をこなさなくてはならないのです。このことをどこまで我々は理解しているでしょうか? 「店長」、「課長」や「部長」、また「社長」はそれぞれ自分が持つ職域や組織のトップであり、「マネジメント」について責任や環境の大小の差はあれ、「マネージャー」としての役割は同じだと考えます。では、「マネージャー」は何をする人なのでしょう? その中身を掘り下げてみましょう。

     表1はヘンリー・ミンツバーグ(1939~)が表した10項目の「マネージャーの役割」です。ヘンリー・ミンツバーグは日本ではあまり有名ではありませんが、欧米ではピーター・ドラッカーと並んで称される大家です。緻密な調査を基に実践を重んじ、机上の空論に陥り易い古典的な学説を批判し、組織内においてマネージャーの働きの大切さを説いた人物です。ミンツバーグはマネージャーの役割について、「対人関係」、「情報関係」、「意思決定」の3種類に分類しました。

    リーダーや橋渡しなど「マネージャーの役割」10項目

    まず①の「象徴・看板」ですが、職域・組織のトップになればシンボル的な仕事もこなさなくてはなりません。儀礼的な会合・冠婚葬祭への参加やクライアントの接待などもそれにあたります。私は、一見儀礼的な集会であっても、そこで人脈や情報を培うことも充分にあるわけで、③の「ネットワーク」につながるものだと思っています。意外にこれは、バカにしてはいけないものだと思っています。

    ②は「リーダー」としての役割です。これは一般に理解しやすい概念でしょう。部下のモチベーションを高め、グループ内の良い雰囲気を熟成させる役目があります。また、会社のミッション・ビジョンを語って、皆を引っ張っていくリーダーシップが求められます。

    ③は「リエゾン(橋渡し・連携)」とも称されるもので、情報ネットワークの構築を指します。社内外で職域長は他の職域長たちと、中間管理職は中間管理職の間で、そして社長は社長どうしの付き合いに時間を割き、人脈を広げます。その「私的情報源」によって営業かつ組織運営に結びつけるのです。

    情報系の④は「モニター(監視役)」です。マネージャーは非公式・公式を問わず、また社内からも社外からもあらゆる情報(取るに足らないうわさを含めて)を入手します。

    ⑤は④のインプットに対してアウトプットである「周知伝達」です。得られた情報をその情報を得られない部下に伝達する必要があります。また会社の理念等を伝達する役目もあります。

    ⑥は「広報(スポークスマン)」としての役割です。⑤が組織内部へのアプトプットなら⑥は組織外部への情報伝達のことです。この場合は組織というのは自分の職域を指し、外部というのは社内の場合も社外の場合もあります。社内外に情報を提供することによって、自分のネットワークを維持することができ組織外部から情報を得ることができます。情報提供をすることによって、自分の組織を効果的に語り、評価を高めることにつながります。組織の宣伝になるのです。情報系では、「モニター(監視者)」として、情報を受信し、組織内部への「周知伝達」役と、組織外部への「広報(スポークスマン)」の役目を担っています。そして、マネージャーはこの情報を基に「意思決定」をします。

    ⑦は「企業家」です。これは常日頃の業務の中で、なにか問題点がないか注意を払うことです。問題点を発見し、その「改善計画」を立案するのです。また、更なるビジネスチャンスを構築したり、組織やビジネスの「変革(イノベーション)」を構想します。

    ⑧は「問題の処理」です。仕事に障害やトラブルはつきものです。これは予期せぬ形で我々を襲います。また、長い間見過ごされてきたことによって、大きな問題に発展することもあります。マネージャーはその都度「意思決定」をしなくてはなりません。

    ⑨は「資源配分」です。組織における「資源」とは、「お金」「時間」「原材料や設備」「労働力」「評判(ブランド)」などがあります。「資源配分」には、「時間配分」、「業務フロー」、「行動の承認」の3つ要素に分類できます。マネージャーはこれらの配分の決定者なのです。

    最後の⑩は、「交渉」です。マネージャーは組織を代表して外部(社内外を問わず)と交渉する場面があります。

    この10項目を見ると確かに、このような業務をマネージャーはこなさなくてはなりませんね。「プレーヤー」としての業務以外に、「マネージャー」としての役務が大変多いのに愕然とします。たくさんのことを同時にしなくてはいけないのです。忙しいのです。10項目のうち、いくつかは自分はこなしてはいないなと反省される方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。ただ漠然と、マネージャーというのは、「課をまとめる人」くらいの認識でいてはいけないのです。役職者は、「プレーヤー」として、ある特定の能力に抜きん出ているからといって、「マネジメント」ができなければ、組織人としては不合格なのです。

     ミンツバーグの「マネージャーの役割」をながめていると、あることに気付きます。この10項目の実現のために大事な共通のスキルがあることに。それは他者との「コミュニケーション能力」です。仮に「プレーヤー」としての能力が少々低くても、部下との意思疎通ができ、たとえばわかりやすくいうと話しかけやすく、いつも朗らかで、愛情があり、他者のことを気にかけて、話を聞いてくれて、そしてその結果として実行できる上司はマネージャーとして立派な人のではないでしょうか。

    (筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2014.02.24掲載)

    • 藤澤 雅義(フジサワ マサヨシ)/Mark藤澤
      オーナーズエージェント および アートアベニュー 代表取締役
      プロフィール:

      オーナーズエージェント株式会社 代表取締役であると同時に、
      賃貸管理会社 株式会社アートアベニューの代表取締役を務める。

      しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、
      社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。役職呼称を禁止にしている。

      あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、
      日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に時津風部屋)を応援している。

      「現場」で運用の実務にあたっているものが、一番不動産のことを理解し、
      的確な投資分析及びオーナーの収益に貢献をすることができ、
      また、仲介手数料収入に依存する仲介業者ではなく、安定収入のあるPM会社こそが、
      クライアントの側にたって本当のアドバイスができる、が持論。

      2001年、不動産会社向けコンサルティング企業であるオーナーズエージェント株式会社を立ち上げ、代表取締役に就任。
      また、アメリカのIREM®(全米不動産管理協会)発行の国際ライセンスである
      CPM®(米国不動産経営管理士)の日本での普及活動にも尽力。IREM JAPANの創学メンバーである。

      著作に、
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