
第65回「仲介」か「管理」か
- 全国賃貸住宅新聞
元付物件のPM割合出し事業の収益性を再確認
この連載を読んでいただいている方は、賃貸ビジネスをされている業者の方が多いかと思います。皆さんの会社では、主に賃貸の「仲介」をされていますか、また「管理」をされていますでしょうか? どちらがメインでしょうか? 「仲介」のみ、や「管理」のみという方は少数派で、やはり「両方」やっている方が多いことでしょう。私は、この「賃貸仲介」と「賃貸管理」は、「別物」であって、今後どちらを重視するかをはっきりさせるべきだと考えています。「仲介」といっていますが、正確には「先付け仲介」のことです。「先付け」とは「客付け」ともいいますが、「元付け」業者が別にいるという意味です。つまり、「他社が管理している」、「他社が元付け」の物件にお客さんを送り込んでいるということです。これは「オーナー」と「入居者(部屋探しの人)」の間にたって「仲介」をして、「仲介手数料売り上げ」をあげることを目的としています。最近では、別途オーナー側からの所謂、AD(advertising expenses:広告宣伝費)をあてにしている場合も多く、先月号ではADの普及により逆に「仲介手数料0」が増加しているとも書きました。「元付け」とは、オーナー側に付いている業者のことです。しかし、この業社もいつも他社(先付け業者)に入居者を決めてもらっているのではなく、多くの場合に、「自社で仲介」することもあるわけで、その場合は「元付け」と「先付け」を兼ねていることになります。

表1にあるように、ひとくちに「賃貸仲介」といっても、種別は大きく3種類に分かれます。「元付け物件」の仲介は、①自社の管理物件である場合と、②非管理物件だけど、オーナーとは直で繋がっている物件、に分かれます。そして、3番目は「先付け物件」の仲介です。表2では「元付け」の定義と種別を表してみました。1の「管理物件」は、「月次管理料」はいただいているでしょうし、募集は当然専任であり、特に賃料の「集金管理」はしているでしょう。「クレーム対応」等もしなくてはなりません。「非管理物件」にはいろいろなパターンがありますが、首都圏等(「更新料」のある京都や中国地方の一部を含む)では、月次管理料はもらえないが、更新はやらせてもらっていて、その際に手数料をいただく、というのがあります(最近、「準管理」などともいう)。また、募集だけは流石に「専任」だよとか、他の業者と一緒に平等に募集(「共同募集」)している、オーナーとは「直」だけど、というものも一応「元付け」の範疇でしょう。月次管理料はもらえないけど、退去リフォーム時の対応はやらせてもらっているとか、一部メンテナンスの委託契約がある、などもあります。また、地方では、物件まるごとの管理はだめだけど、「決めたら管理」という制度をとっている場合がありますね。仲介がうまくいったら「その入居者がいる部屋」については「月次管理料」を払うよ、というものです。これなどは、誰がその物件全体のことを考えるのか、疑問があるやり方ですが、意外に広くやられている制度ですね。また、「仲介があくまで大事!」という姿勢が感じられます。「決めてなんぼ」なのでしょう。

元付け物件のPM割合出し事業の収益性を再確認
「仲介」の視点で表1と表2を見ながら、仲介しているのが、「元付け物件」なのか「先付け物件」なのか、またその「元付け」が「管理物件」なのか「非管理物件」なのか、皆さんの会社ではいかがでしょう。割合を計算するといいかと思います。私は、「賃貸仲介」の中でも「先付け物件を主に仲介している会社」と、「元付け物件を主に仲介している会社」では意味がまったく違ってくると思います。前者はあくまで「仲介会社」であり、後者のなかでも特に「自社の管理物件」を「自社で仲介」している場合は、これは「賃貸管理(PM:プロパティマネジメント)(図2)」の業務の中のひとつをこなしていることになります。現場の仲介専任担当にとって、お客さんが気に入って仲介した物件が、「先物(先付け物件)」なのか、「自社物(自社管理物件)」なのか、それほど大きな違いはありませんが、会社としては、ビジネスモデルが180度違うという意味になります。現実には、「先付け」も含めて仲介手数料で現金収入を稼ぎつつ、「管理物件」も増やしていこう、としている業者さんが圧倒的に多いかと思いますが、はたしてそれでいいのでしょうか?「先付け仲介」で満足していたら、いつまでたっても「管理物件」は増えませんし、「月次管理料」をいただいているオーナーと、いただいていないオーナーへのサービスの差が明確になっていないことも多く(つまり「無償管理」の実態がある)、スタッフ間に「賃貸管理会社」としての意識がどれほどあるか疑問です。あくまで、店頭に立って目立っている「仲介」の営業担当が主役になっていませんか?


この連載で折に触れ述べていますが、ITの進化により「仲介」の意義が薄れていくことが予想されます。また、そもそも「仲介ビジネス」より「管理ビジネス」のほうが収益性が高く、安定しています。近年ADの支払いが増えて「仲介」は今は儲かっている会社も多いですが、この制度がいつまでも続くとは思えません。経営者が会社をどういう方向へ持っていくつもりなのかをスタッフに明確にすべきであると思います。
(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2014.05.26掲載)
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藤澤 雅義(フジサワ マサヨシ)/Mark藤澤オーナーズエージェント および アートアベニュー 代表取締役プロフィール:
オーナーズエージェント株式会社 代表取締役であると同時に、
賃貸管理会社 株式会社アートアベニューの代表取締役を務める。しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、
社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。役職呼称を禁止にしている。あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、
日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に時津風部屋)を応援している。「現場」で運用の実務にあたっているものが、一番不動産のことを理解し、
的確な投資分析及びオーナーの収益に貢献をすることができ、
また、仲介手数料収入に依存する仲介業者ではなく、安定収入のあるPM会社こそが、
クライアントの側にたって本当のアドバイスができる、が持論。2001年、不動産会社向けコンサルティング企業であるオーナーズエージェント株式会社を立ち上げ、代表取締役に就任。
また、アメリカのIREM®(全米不動産管理協会)発行の国際ライセンスである
CPM®(米国不動産経営管理士)の日本での普及活動にも尽力。IREM JAPANの創学メンバーである。著作に、
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