全国賃貸住宅新聞

公開日:2015年5月11日

第76回 労働生産性を上げるために-6

第76回 労働生産性を上げるために-6
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あなたに気づきはあるか

作業にかかる時間と優先順位の見極めが重要

指示待ちの姿勢ではダメ

今回は、生産性を上げるために、2つの概念・手法を解説したい。よくPDCAサイクルが大事だという。PDCAとは、PLAN(計画をたてる)、DO(実行する)、 CHECK(評価する)、 ACTION(改善する)の順番にサイクルを回して、継続的に改善していく手法だ。仕事の進め方の基本と言われているが、確かにこれも大事なのだが、それよりももっと大事なことがあると私は思う。PLAN(計画をたてる)の前に必要なもの、それは「気づき」だ。

 

上司から管理受託拡大のためにオーナー対象のセミナーをやるから企画してくれ、と言われてPDCAサイクルを心がけるのはとても良いことではある。上司から業務で使う新しい帳票を作れと指示される、また朝礼がちょっと長いと思うので、もっと短時間で効率よくやる方法を考えろ、とタスク(業務)を与えられる。それらは、すべて上司からの「指示」である。指示される前に、自分で「気づけ」ないものだろうか。管理受託のひとつの手法として「セミナーを開催しよう」と思いついて欲しい。また、既存の帳票では使いづらいから改訂してみよう、朝礼が形骸化していて中身がないものになっているからやり方を変えてみてはどうだろうか、というふうに。表1に記したように、気づいたら、情報を集めて分析し、改善策を考える。そして、実行するのだ。

「気づきがある」とはどのようなことだろうか。①物件を見に行って、問題箇所を入居者の視点で気づく。②業務の効率が悪いな、無駄があるな、と気づく。③他人の話を聞いて、これは使える、実務に活かそうと気づく。④本を読んで、当たり前のことが書いてあるとバカにしたりせず、当たり前のことかもしれないが、はたして自分はできているだろうかと自問し、気づきを得る。⑤何か会社の雰囲気が悪いな、皆疲れているのではないかな、と気づく。というようなことだろう。現実には、このように「気づいて」くれるスタッフばかりではない。ただ、指示を待ち、与えられたルーチンワークをこなすことで満足している人もいるのだ。

 

私は個人の能力には、元々はそれほど大きな差はないのではないかと思っている。要は、「気づいているか」の差ではないか。もちろん、「実行する」ことも大事だ。気づいていても、実行が伴わなければ 気づいていないのと結果は同じだ。そして、日々「気づいて」+「実行」をする人が、「気づかず」+「何もしない」人より断然、成長が早いのだ。何年も経てば、その差は大きくならざるを得ない。

では、なぜ気づかないのだろうか。表2にまとめてみたが、①意識の問題、②本質を掴む能力、③謙虚さ、④客観性、⑤知識量の差、⑥資質の問題、ではないかと思う。意識が低ければ、気づかないし、大事なことはなにかを知る能力、また、謙虚であることも重要だと思う。やけに根拠のない自信を持っている人がたまにいるが、それでは自分で情報をふさいでしまうことになる。ものごとを冷静に見つめ、勉強を怠らないことが大事だと思う。これらの能力は自分にはない、自信がないと思う読者もおられることだろう。しかし、意識を高く持ち、謙虚に知識を得ることを頑張っていれば、これら6つの能力は自然と身に付くのではないか。これらは相互に影響しあっていると思う。

明日の業務設計が大事

さて、次に、モーニングリスト(通称モーリス)について解説したい。私の会社でオリジナル帳票を作った。これは、「明日やることの業務設計をする」ものだ。まず、前の晩に明日やるべきことをリストアップする。思いついた順でいいので、タスクを書き出す。そして、左にある枠にそれぞれのタスクの優先順位を付けるのだ。1番目にする仕事、2番目にする仕事、というふうに。これがとても重要である。そして、右側の枠にはその仕事にかかる時間を想定する。1日のうちで予備の時間を2時間くらい取っておいて、つまり就業時間の8時間(480分)から2時間(120分)を引いた時間=360分を超えてしまったら駄目なので、それぞれのタスクでたとえば70分としたものを、そんなに時間をかけられないな、40分で仕上げなければと業務設計をするのだ。多くの人は、目の前にやってくる仕事にただ流されて、メリハリなく仕事をしている。この仕事は重要な仕事なのか、重要度は低いので簡単に仕上げなければならないものなのかを意識せずに仕事をしているのだ。それでは、残業が増えるし、生産性が低いものになってしまう。
 

この考え方は「アイビー・リーの2万5000ドルのアイデア」と呼ばれているもので、100年以上前に業績不振で悩んでいた鉄鋼会社にコンサルに入ったアイビー・リーが、やるべきことを書き出し、それに優先順位をつけよ、とそれだけアドバイスしたらしい。それだけであなたの会社の生産性を50%上げてみせよう、コンサルフィーは社長の好きな金額でいい、と。そして、社長であるチャールズ・シュワブは2万5,000ドルもの大金、現在に換算すると約5,000万円ほどを支払った。そして、その会社はとても大きな会社に成長した。ベスレヘム・スチール社のことである。

 

我々は、「7つの習慣」でいうところの、4つのカテゴリー、第1領域「緊急かつ重要な仕事」、第2領域「緊急ではないが重要な仕事」、第3領域「緊急だが重要でない仕事」、第4領域「緊急でも重要でもない仕事」において、第2領域より第3領域を優先してしまいがちだ。緊急性ばかりに反応してしまうのである。しかし、緊急ではないが、重要な仕事というものがある。そして、それは個人と会社の成長にとってとても重要な事柄なのだ。

実際に、このモーリスを運用していくと、今日やらなくてはいけないとしたタスクが結局は残ってしまうことが多い。毎日、同じものが残ってしまったりもする。しかし、ここであまり罪悪感を感じる必要はない。突発的な仕事が入ってしまって時間が足らなくなるのが普通だし、重要な仕事を処理することができたので、良しとしてよいのだ。優先順位が高い仕事をこなしたら、その項目は上からしっかりラインを引いて「終了!」と達成感を味わって欲しい。この「罪悪感」という感情とはうまく付き合っていく必要がある。自分は計画通りにやれない駄目な人間だとかは絶対に思ってはいけない。計画通りにはいかないものだし、皆大体そんなものだ。私なども、前日や前々日のタスクが残ってしまっているモーリスを、数枚ホチキスでとめて持っていたりするのだ。自分が処理してラインを引いてあるものを、簡単に捨てたくないような感情も入っている。

(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2015.5.11 掲載)


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