全国賃貸住宅新聞

公開日:2015年11月9日

第82回 労働生産性を上げるために-7

第82回 労働生産性を上げるために-7
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合理的な考え方で業務効率向上

システムの活用や勤務条件の改善も有効

この連載で何度も言っているように、賃貸管理ビジネスは労働集約的な業種である。管理戸数が増えると必然的にスタッフも増えてゆく。しかし、戸数が増えれば効率もよくなっていけばいいのだが、そうはならないことがある。かえってマネジメントをしなければいけない分、人数が増えてしまったりして、「一人あたり管理戸数」が減ってしまうのだ。管理会社は、戸数が増えるにつれてその業務のあり方を見直して、効率をよくするための努力を怠らないようにしなくてはならない。ほっておくといつのまにか、やたらとスタッフが多い会社になってしまう。

今までの連載の中でも触れているが、表にあげたように、スタッフ一人あたりの労働生産性を上げるための方策には6種類あると考える。その中で、今回一番に掲げたいのは、「合理的に考える精神」である。極めてロジカル(論理的)に考えていこうではないか。これは2から6の方策を串刺しする思想である。我々は、基本的に保守的で変化を嫌う。今までと同じようにやるのが楽なのだ。また、不動産業界全体が新しいものに消極的なところがあるようにも思う。なんとなく以前からそうやってきたから、業界の常識だからといって、深く考えもせずいつもの業務をこなしてはいないだろうか?もっと疑って考えよう。「ZEROベース」で考えよう。

 

たとえば、3の「システム活用」のことでいえば、もっと徹底的に無駄を省く、合理化するという意識が必要だ。皆さんの会社では、基幹管理システムと募集ポータルサイトへの情報入力、そして自社内での募集状況を確認する帳票(募集一覧)の3つのシステムに3回同じことを入力していないだろうか?システムを改良すれば、これはワンライティングで可能である。しかし、なんとなく深く考えもせずに、黙々と入力をしているのだ。これははっきりいって人件費の無駄だ。同じことを絶対に繰り返さない、繰り返すときは、システムで行うという強い意識が必要だ。業者に仲介してもらう場合に、反響電話に対して募集案内図面をFAXで送ったり、申し込みの受付もFAXで送っていたりする。弊社だってそうだ。

 

しかし、インターネットの発達した現代において、いつまでこんなことをやっているのだろうか。入居者が申込書に記入するのなら、直接システムに入力してもらえれば、管理会社が入力する必要もないし、入力ミスも無くなるから一石二鳥である。重要事項や契約行為もネットでやればお互いに時間のロスも無くなる。日本には良い賃貸管理ソフトがないのが残念だ。
 

業界は「IT重説化」にも慎重だ。いろいろ懸念すべき課題はあるかもしれないが、「IT化に反対」では、時代の流れに逆らっていると言わざるを得ない。仮に、全国の12万の宅建業者には高齢者も多いからITに対応できないというのが理由であるならば、それは業界の哀しさだ。なんとか努力するしかない。2020年頃には自動車各社が自動運転で足並みを揃えることになりそうだが、タクシー会社はその技術開発と運用に断固反対、などというのだろうか。弊社は協力ベンダー(リフォーム工事業者等)と、WEB 上のシステムで工事発注や工事完了を管理している。ベンダーの中には、メールでのやり取りやスマホに対応ができないという方もいるようだが、当然、そのような方には仕事を依頼することはできない。

 

 4の「アウトソーシングの活用」だが、賃貸管理は多岐に渡る業務をこなさねばならず、全てを内製化することは不可能だ。そう割りきって外部にできることは外部に任す、コストの高い「社員」では行わない、と徹底すべきではないか。そして、アウトソーシングは、そのほうがコストが安いから、また専門的なことなので、そのノウハウが無いので外部に任すといった理由からのみでするものではない。仮に社員とコストが一緒であっても外部に任す必要がある。それは、社員はその業務をするよりもっと付加価値の高い仕事をすべきだからである。付加価値とは利益のことである。それが一人あたりの労働生産性を上げることに繋がる。

 

5の「人材開発(採用と教育)」だが、この連載でも触れてきたように、会社経営で一番大事なことは「人材」、つまり採用とその後の教育だ。採用に関しては、根本的には新卒・中途を問わず、その会社に魅力を感じなければ入社したいとは思ってはくれない。どんな会社でも、すぐに効果的にアピールできるポイントがある。それは勤務条件の改善だ。具体的には、年間休日を増やす、有給休暇を取りやすい雰囲気にする、残業を減らす、振替休日を取りやすくすることである。不動産業界は他の業界に比べて休みが少ないし、水曜日休みのところが多い、これでは来てくれないのは当然だ。

 

(完全週休2日×52週)+祭日が15日=119日〜120日となる。祭日のある週は週に3日が休みだ。これくらいのレベルを確保したいもの。多くの会社は100日に満たなかったり、105日程度のところがいまだに多い。振替休日も自由に取らしたらどうか、水曜日以外の平日に休んでもいいではないか。月曜に休めると大変有意義だ。土曜〜日曜に旅行をするとホテル代は高いし、道路も混んでいる。日曜〜月曜であれば、ホテルは安いし、行きも帰りも空いている。合理的ではないか。弊社では3年前に月曜朝礼を火曜朝礼に変えた。朝礼が別に火曜になっても問題はない。「働き方」を会社がどう考えるかは、これから重要な課題になっていくだろう。「ワークライフバランス」の意味すら知らない経営者は人材にそっぽを向かれることになる。

 

 

6の「業務マニュアルの充実」だが、たとえば私は管理受託営業やオーナーへの提案営業ですら8割はマニュアルでカバーできる、と考えている。個人の営業力やそのセンスを否定しているのではない、それをレベルアップするための教育や研修は多いにすべきだ(個人的にはロールプレイングが一番効果が高いと思っている)。しかし、不動産業界には過度にトップ営業マン(ウーマン)を賛美し、かつ頼る傾向はないだろうか。他より成績が抜きん出る人は確かに凄いし、会社にとって頼りになる存在だ。

 

しかし、その営業担当が会社を辞めた瞬間に全体の成績が落ちるというものではおかしいし、また、その人でないとこのお客さんはついてこないというような体制を作ってしまってはいけない。会社全体で組織的にクライアントに向き合わないといけない。往々にして、トップ営業マンという存在は、そのノウハウを会社の他のメンバーに共有できないことが多い、是非、体系化してマニュアル化してほしいものだが、そうはいかないのだ。それはその人独特の頑張り(夜討ち朝駆け等)が結局その人のノウハウであったりするからではないか。

▲ 人口知能を持つロボット

さて、我々は大きな時代の変化を迎えようとしている。AI(人工知能)が仕事のあり方を大きく変えそうだ。人類の進化は「指数関数的」に進むと言われている。1年後に2倍、2年後に3倍、と進めば10年後には10倍になるのが、直線的。指数関数的とは、2の2乗、3乗と進むと10年後には1000倍になるということだ。コンピュータやロボットが人間の替りを務める日も近い。保守的な考え方を排除したほうがよいと思う。アタマを柔らかくして仕事に臨みたい。

(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2015.11.9 掲載)


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